第1話:ブラッディ・ラノ降臨 ―
ノイレクシア魔国・北部戦線
リク荒野――
ノイレクシア魔国北部に広がる、魔族の戦場。
ノイレクシア魔国軍5千は、チカノート魔国軍に東、北、西の三方から包囲されていた、その数3万。
「シールドはどうだ!?」
隊長の叫びに、魔導士が顔をしかめる。
「もう持ちません!崩壊寸前です!特に北側防壁が、まもなく瓦解します!」
隊長は歯を食いしばる。
「ここまでか……なぜ魔族同士で争いなど……」
その時――
「北側、攻撃が止まりました!魔導攻撃が……無効化されています!」
「無効化!?応援か……まさか……ブラッディ・ラノ様か!」
__ リク戦線・北部上空
マジックBOX内、ソファーやテーブルなどが新たに設置された、もはや三人の基地である。
三人は戦況を見下ろしていた。
タクがスコープを覗きながら言う。
「ここか。敵の北部隊、魔導攻撃バンバン飛ばしてくるのは」
ラノが微笑む。
「今、無効魔法使ったから。ほら、敵さん焦ってる」
リュークが剣を肩に担ぎながら呟く。
「あの偉そうなのが敵の隊長、魔導士か」
ラノが前に出る。
「私、行っていいかな?」
タクが頷く。
「ああ、お前なら楽勝だろ」
「アイちゃん、ラノ行きます!」
『了解です』
上空にラノが出現。
ラノが高速で降下する。空気が裂け、魔力が軋む。
タクが笑う。
「超巨大爆破魔法かな?」
リュークが目を細める。
「いや、両手に《銃剣じゅうけん》持ってるぜ。楽しむ気だな。最近じゃ《ブラッディ・ラノ》って呼ばれてるらしいしな」
――ドォォォン!
!
ラノがチカノート魔国軍のど真ん中に着地。衝撃波が走り、地面が陥没する。
驚く魔物達。
「人間の……?女の子……?」
ラノが両手に銃剣を構えてクロスさせる。
次の瞬間、魔物を切り刻み始める。血しぶきが飛び、悲鳴が重なる。
北部隊隊長、大魔導士ゼノンが叫ぶ。
「なんだ!?何が起きた!?何か降ってきたぞ……血か!」
部下が震えながら報告する。
「隊の中心に何かが……落ちました!血しぶきが……上がってます!」
ラノは両手に《じゅうけん》を握り、魔物を次々と切り刻んでいた。
その顔は――完全に“イって”いた。
タクがモニター越しに呟く。
「すごいな。みるみる赤くなってるぜ」
アイが冷静に告げる。
『敵、次々と収納・眷属化されています』
ゼノンが顔を歪める。
「あいつか!脳筋女!運が悪かったな!大魔導士ゼノン様の前では誰もが無力よ!――でぇい!《拘束魔法ラパムパ》!!」
だが、ラノは止まらない。
ゼノン部隊の中心が、ラノを中心にぽっかりと穴を開けていた。
「……なぜ効かぬ!?超高位魔法だぞ!?えい!えい!……くそう、何も効かない!」
兵士たちは恐怖に震え、誰もラノに近づこうとしない。
あらかた片づけた時、ラノはゼノンを発見する。
ゆっくりと歩み寄るラノ。
返り血で髪をオールバックに撫で上げ、瞳は冷たく輝いていた。
_ノイレクシア軍の魔導モニターに映るラノの姿。
「かっこいい!ブラッディ・ラノ様!!!」
「ラノ様!!」
「やっぱりすげぇ!」
ラノコールが戦場を包み、士気が爆発する。
ゼノンが叫ぶ。
「貴様ぁぁぁ!!食らうが良い!!《炎燃孔》!!」
すさまじい炎がラノに襲いかかる。
だが、ラノは片手でいなす。
《じゅうけん》をしまい、ゼノンの前で軽くステップを踏む。
次の瞬間――
ワンツー、からのボディ。
「ぐふう!」悶絶するゼノン。
「クソぉ、防御魔法!」
アッパー、血が噴き出す。
「がふうう!!!なぜ防御できない!」
ハイキック、カーフキック――
高速で繰り出される打撃が、ゼノンの身体を血まみれに染めていく。
ゼノンが叫ぶ。
「防御魔法が効かない!?なぜ!?なぜだあぁ!!」
「教えてあげる」
ラノが指をパチンと鳴らす。
「ステルス解除」
隠されていた魔導オーラが溢れ出る。
空間が震え、魔力が軋む。
ゼノンが絶叫する。
「……ぐあああああ!こ、こいつ脳筋じゃない!《マギデウス》だとぉぉぉ!!?!!」
ラノが微笑む。
「そう。私が唯一無二の魔導士最高峰。じゃあ、楽しんだから――《ラグナ・インフェルノ》」
ゼノンが震える。
「ラグナ……まさか……!」
――ズゴォォォォォォン!!
超巨大爆発が起きた。
半径5kmが消失し、地形が変わる。
チカノート北軍は壊滅。
戦場は、ラノの名を刻む血の祭壇となった。