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第3話ー兎さん

こんにちは。今回少し長めです。

暖かい目で見ていただけると嬉しいです。


「っは、っはっ……」


 

 息を漏らしながら、兎と共に走っていく。


 

 “疲れてないか?”

 そんなふうに兎はこちらを見てくる。


 

「着いたぞ」


 

 しばらく走って、兎の家に着いた。

 白い塗装に、土色のドア、赤い屋根。

 天井は少し低めに見えるが、

 小柄な女性なら、かろうじて屈まずに入れそうだ。


 

 兎に導かれるようにして、私はドアを開けた。

 りんごの少し焦げたような匂いが、

 つんと鼻を刺す。


 


「……りんご、焼いてたの?」


「? ああ……まぁな。見ろよ、焦げてるぞ」


 


 兎の言うとおり、りんごは真っ黒だった。

 薄くスライスされたそれは、炭のように黒くなっている。


 


「お前がツルに引っかかってなかったら、コイツは焦げてなかったんだけどなぁ?」


 


「うっ……」


 


 私は、苦いものを口に入れたような顔で眉間にしわを寄せた。


 


「……まあいい。お前のこと助けられたんだし。

 座れ。」

 


 兎は、木で作られた椅子へと目配せする。

 私は言われるままに腰を下ろした。


 狐色のテーブルに、純白のランチョンマット。

 スプーンとフォーク、角砂糖。

 アゲラタムの花瓶。


 


 いろいろなものが、次々と目に飛び込んできた。


 


「なんか飲むか?」


 


 兎は、余っていたらしい薄切りのりんごをくわえながら、私にそう問いかけた。


 


「……紅茶」


 

兎は慣れた手つきで紅茶を淹れ、

 私の前にそっと置いた。


 ふと。湯気の立つカップの中に、

 自分の顔が映り込んでいた。

 朝、鏡で見たときよりも、

 随分違う表情をしているよう気がして。

 なぜだろう。少し驚いた。


 

 ――見ていても仕方ないか。

 そう思い直して、兎の方へ視線を向ける。


「……どうかしたか? 飲めそうか?」


 兎はどこか心配そうに、

 じっとこちらを見つめていた。



「なんでもない。ありがとう。」


 


 しばらく、静かな時間が流れた。

 兎は黙ったまま、薄くスライスされたりんごを

 どこか大事そうに、ゆっくりと口に運んでいる。


「……りんご、好きなの?」


 兎はりんごを咥えたまま、

 うんうん、と得意げに頷いた。


「……兎なら、にんじんが好きなのかと思ってた。」


 

「……偏見だな。

 それに、りんごも――

 食べすぎると毒なんだぜ。」


 

「へぇ……」


 


 兎は切なそうに口を閉じた。

気にする必要もないが、

好きなものを自分で退ける。

 

私は心の何処かで苦しさを感じた。



 

最後まで拝読頂きありがとうございます。


少しでも面白いと思っていただけたら。

感想、ブックマーク、☆などして頂けるととても励みになります。

「落下少女と喫茶会議」

これからも何卒、よろしくお願い致します。


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