おい遺跡でたまたま拾った魔道具…ヤったらパラメーターあがってねぇか?
「うーむ」
ヴィーアはベッドに横になり拾った指輪を眺める。あのあと抱きついて離れないオリーを引き剥がし切断鬼の生死を確かめに行ったヴィーアはキラリと光るシルバーリングを見つけた。はじめは何の変哲も無い指輪に見えたのだが。
「何ですかそれ指輪?…なにか魔力を感じますね…私のレベルじゃなんとなく、それくらいしか分かりませんが」
肩から覗き込んできたオリーがそんなことを言う。
「ふーん、じゃあ帰ったら鑑定してみるか」
それで一緒に帰ってきたヴィーアとオリーはギルドにも寄らず鑑定師の元に持ち込みに行ったのだが、
「もう店じまいやでーって、なんじゃヴィーア坊と…また違う娘を連れておるんかいな」
鑑定屋のドアをベルを鳴らしながら開くとカウンターに座り他の品を鑑定している老婆が出迎える。
「チェンジだばばあ、ベルちゃんを出せ」
「ベルちゃん?誰よ」
「あの子はとっくに寝とるで、急ぎの鑑定じゃなきゃ帰んな」
老婆は視線を机に戻し作業に戻ろうとした所にシルバーリングが投げ込まれた。
「そんなもん置いて先に俺のを鑑定しろ」
「相変わらず無茶苦茶やなぁ、まぁええけど」
いつもの事なのか特に怒ることもせずシルバーリングを鑑定する。
「ん、うん?これは…」
ヴィーア達も静かに見守る事30秒。
「なんとか言えばばあ!金貨10枚くらいにはなるか?」
「これはの、魔道具やな」
「ほう、で効果は?」
「殴るでないぞ」
「はやく言え殴るぞ」
「これは説明文にのぉ…」
10秒程たっぷり溜めた老婆は大きな声でこう言った。
「とにかくえっちしろ! と書いてあ」
言い終わる前に老若男女平等パンチが頭に落ちた。
「何すんねんこのガキ木箱に肥詰めてアカン湾に沈めるぞワレぇ!」
「おー上等だばばあ死に神の手間を一つ減らす手伝いしてやんよ!!だいたいなんだえっちしまくれって、言われんでもやってるわ!!!」
「ワシは文字呼んだだけや知るかボケぇ!」
「ちょっと、落ち着いて下さいよ二人とも!」
大混乱である。
「お婆様いったい何の騒ぎですか?あらヴィーア様」
「むっ」
何故かオリーが小さく唸り奥の階段から眠そうな長い銀髪少女が降りてきた。
「ベルや、こんなアホンダラチンカスと話したらあかん孕まされてまうで!」
「おぉベルちゃんじゃないか、相変わらず美人だな。はやく大きくなれよ」
「私はもう16歳ですよ、立派な大人なのです。それにヴィーア様になら私は…」
「はっはっは、だめだ18歳以下はまだガキんちょだぞ」
「ねぇ、ヴィーアさん、鑑定が終わったならギルドに報告に行きましょうよ。本当に疲れちゃったわ」
あまり会話に入っていけてないオリーがヴィーアにしなだれかかりベルを横目で見る。
「むっ」
ベルも何故か小さく唸る。
「おぉ、そうだな鑑定も終わったしベルちゃんとも話したし」
二人は視線を外さず店を出ようとする。
「おい銭払え」
「チッ、覚えてやがったか。ほらよ」
ポケットを探すが何も無いことに気付く。
「うーん、今持ち合わせがない。つけとけばばあ。」
「衛兵呼ばれたいんか?」
「お婆様、私の御給金から出します」
「いいや、私は今日命を救われたのだから私が出すわよ」
「「むっ」」
二人の間に見えない火花が散る。
「おぉそーか、じゃあ後は頼んだぞ。」
「あぁ、ヴィーアさん待ってよ!」
「こら待て女狐!金を払え!」
「あんたのおきゅーきんから出してくれるんでしょー?よろしくねー」
「ぐぬぬぬぬ」
鑑定屋を後にした。
「ヴィーアさん、ではギルドに行きますか?」
「うーん、もう眠いし明日でいいだろ。それに…まだ貰うもんもあるしな…俺の宿に行こう」
「ヴィ、ヴィーアさんの宿…わかったわ!」
そして冒頭に至る。
オリーが湯浴みをする音を聞きながら指輪を眺めていたら、オリーがバスタオルを巻いて出てくる。
「お、お待たせ…しました」
「おぉ、待ちくたびれたぞ」
ヴィーアは改めてオリーを見る。
短く揃えた紺色の髪、両耳に光る花びらを象ったイヤリング、つり目で強気で挑戦的な目に耳長族にも劣らない整った顔立ち、小柄だが不思議と妖艶な雰囲気を纏っている。
バスタオルが床に落ち一糸纏わぬオリーが月夜に照らし映し出される。
「ついでだからこの指輪着けてしてみるか」
~次の日~
朝からヴィーアは妙になんだか身体が軽い事に気付いた。隣にはオリーがまだ眠っているがそんな事より自身の体調がすこぶる良いことに疑問を持つ、まるでレベルが上がった時の様な、支援魔法を受けた時の様な…パラメーターを確認してみる。
「なんじゃこりゃ」
基礎パラメーターが僅かではあるが上がっている、おまけに身体強化のバフまで付いて、低級治癒まで覚えている。
「この指輪の効果なのか…?俺は魔法の類いは使えなかったのに」
「うぅん、おはようヴィーアさん。朝から考え事?」
オリーは胸に頭を乗せてきた。確かめる為にも、ヴィーアのヤる事は定まった。が、その前に
「よーしまずは朝の仲良し体操からだ!」
「いやーん」
二人がギルドに出てきたのは昼過ぎであった。
遂に野望が始まります。