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もう少し好感度あげとくか

 「ふぅー、悪魔とやったのは初めてだが人間と変わらんな!中々悪くなかったぞ」


ヴィーアが鏡で確認しながら服装を整えている。


「……う"ぅっ、かひゅ」

「あぁすまんすまん」


終わった後も呪いを解くのを忘れていたので解いてやるとアビラバは大きく息を吸った。


「こっの…」


 アビラバは恨み言の一つでも言ってやらなきゃ気が済まなかったが、今はそんな事でこの酸素を吐き出したくは無く、甘美な香りを吸い込むかの様に息を吸った。


「忙しいからもう行くから片付けておけよ、また呼んだらすぐ来るよーに!」


 ヴィーアはそれだけ言うと高笑いをしながら部屋を出ていってしまった。


「誰が片付けなんか…」


 ようやく酸素が脳に回ってきて正常な思考が出来るようになってきたので身体を起こすと、何か気配を察知し窓から外を見た。


「もう少し優しくしてくれたら教えてあげてもよかったのにね…」


 行き着く先は城壁だったが、視線はその先の海に向いているようだった。


 スッキリしたヴィーアはラーナナが戻ってきていないかと思い、食事会の会場に戻ってきた。

もう終わりの間際のだったのか挨拶を終えた女王達が退出していく所だった。


「なんだもう終わりか」


適当なテーブルからワイングラスと冷めた肉の皿を持ってきたヴィーアは空いているラーナナの椅子に座る。


「やっと帰ってきたか、こっちは尻尾の毛が無くなるかと思ったヨ」

「滑らかな手触りで気持ちいいの」

「毛皮にして首に巻くのね!」

「絶対ダメ!」

「ラーナナちゃんもいないし、もうここに用は無さそうだなぁ。後で部屋に行ってみるか…」

「ヴィーアよ」


 冷めた肉の固さに顔をしかめ、ワインで流し込んでいるとクーデリアがメイドともう一人引き連れてやってきたが、クーデリアの後ろ隠れていて顔は見えない。


「クーちゃんか、どした」

「余とミーティアは別の公務があるでな、帰りにかかる時間を考えるともう国に帰ろうと思う、それで貴様の強さを評して最後に勧誘に来た。どうだ?余に仕えさせてもよいぞ」

「嫌だ仕えん、そんな事より18になったら俺の女になれと言ってるだろうが!」

「貴様!何度不敬を働けば気が済むのだ!」

メイドが主人への無礼に怒り腰の短刀に手を掛ける。

「やめよ、お前では勝てんと分かっているだろう。それに何を言ってくるか予想していた事が的中しても怒りなど沸かん…それよりミーティア、いつまで余を盾にしている。そちらの方が頭に来るぞ」


 クーデリアの後ろにしがみついていた身体が震えると、後ろからクーデリアの腕を少し持ち上げ、腕と脇腹に挟まる様に出てきたのはコースゥゲンの姫、ミーティアだ。


「うぅ、クー姉様この男の人恐いです…先程もラー姉様のしょ、処女を…とか言ってましたし…」

「うーん可愛いがまだ子供。パス」

「だから言っただろう?15の小娘は相手にされんから大丈夫だと」


 脇から出てきたミーティアにデコピンをするが頑なに出ていかず居座る。


「あ痛っ!本当でしょうか…?後ろ向いた瞬間スカートに顔入れてきて舐め回してきたりしませんか?」

「こいつ俺をなんだと思ってんだ」

「性欲オークキングだロ?」

「誰が豚野郎だ!」

「それではリーナナ姫、ルーナナ姫。フーキ国のもてなしに感謝する。ヴィーア、カルミティ、帝国に来ることがあれば訪ねてくると良い…行くぞ、船を待たせている」

「わたくしの所には来ないで下さいね」


 さっさと行ってしまうクーデリアと、歩いていると言うのに器用に脇に挟まっているミーティア、メイドはヴィーアを睨み付けながら舌打ちした。


「おう食べ頃になったら行ってやるぞー」

「さようならなのねー」

「お達者でなのー」


 ヴィーアは三人を見送ると、ラーナナの部屋に行くべく立ち上がる。


「さて、もう一押ししてくる」

「ラーちゃんの所に行くのね」

「結婚したらヴィーちゃんが本当のお兄ちゃんになるの」

「おい離れろ懐くな!結婚もしない!」


 ヴィーアの両足にしがみつく双子の首根っこを雑に掴むと足元に放る。


「ヴィーア、私もそろそろ引き上げるヨ」

「む、もう行くのか?もっと一緒にいてもいいんだぞ」

「ヤだよ、姫さんとこに行くんだロ?」

「まぁな、良い女を全員抱くのが人生の目標だ」

「フーン…私も良い女だったのカ…」

「当たり前だ、俺が抱きたいと思って抱いたんだから良い女」

「そっか…じゃなヴィーア、楽しかったヨ!」

「おう、またな」


 尻尾を揺らしながら歩くカルの後ろ姿は楽しそうだった。


「俺も行くとするか」


 ラーナナはベッドで布団を頭まで被り、さっきまでの事を考える。


(よく考えると結婚するなんて絶対本気じゃないわよね…そもそも身分が違いすぎるし?ヴィーアが遊び人なの分かってるから浮気されたら相手を抹殺しちゃうだろうし?でも殺しちゃったらヴィーアに嫌われちゃうだろうし…いやいや私ってば何結婚した時の妄想してんの!)

「あーもうっ!」


ガタン!

扉の前で警護していたタークスは壁に何かが当たる音を聞き、僅かなため息を鼻から漏らす。

自分の不甲斐なさが主にいらぬ心労を与え、余計な問題を増やしてしまった。


(もっと精進しなければな…むっ)

「おい邪魔だ、ラーナナちゃんに会わせろ」

「…ラーナナ姫はお休み中だ、お引き取り願おう」


タークスにとって今最も警戒すべき相手が来てしまった。


「会うか会わないかは本人に聞く、嫌なら帰る。だからどけ」

「ヴィーア殿、これ以上は不審者として他の兵も呼び、対応しなくてはならなくなる…下がって頂きたい」

「一人じゃ勝てないから仲間を呼ぶってのか?情けない奴だ!」

「何とでも、姫をお守りするのが第一だ」


 タークスも一歩も譲る気はなく、二人から試合の時以上の殺気が漏れ始めた時だった。


「タークス、誰か来たの?」


ラーナナが部屋の中から声をかけてきた。


「はっ…ヴィーア殿が来ましたがお休み中なので今お引き取り願う所です」

「だからお前が決めるな!」

「いいわ、通して」

「…分かりました」

「ほら聞こえたか?しっし」


 ヴィーアが野良犬を払うかの如く手を振ると、渋々タークスは横にずれた。


「悲鳴が少しでも聞こえたら必ず貴方を殺す」

「エロい声が聞こえたら一人でしてていいぞ!」


 勝ち誇った表情でヴィーアはラーナナの部屋に入った。

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