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俺様より偉そうな皇女

 驚きに固まっていたのはクーデリアだけでは無かった。

余りにも無礼、今までの人生で突然その様に言われたのは山賊に遭遇した時くらいであり、それを他国の城で言われるとはつゆ程にも思っていなかった為メイド兼護衛の思考停止するには十分だった。


「二人して固まってどうした。さては俺に惚れたな?だがダメだぞ、メイドの方はいいが君は確かまだ16だろ?守備範囲外だからあと二年待つんだな!」


 その言葉でメイドは我に返る、あろうことか主人を差し置いて自分を選んだ無礼な男。首を斬り落としてやろうと思った。


「この無礼者が!」

「おわー!何しやがる!?」


 腰の短刀を引き抜き殺すつもりで振り抜いたはずだったが気付けば手首を捻られ壁に叩き付けられている。


(バカな、今のを避けるどころか反撃してくるだと!?)

「クーデリア様、お逃げ下さい!」

「お、いい匂い」

「尻を触るな!」


 メイドは無力化され、斯くなる上はこの場で時間を稼ぎ主人を苦そうと思ったのだがその主人は、楽しそうに笑っていた。


「そこの下郎、余を殺しにきたのか?」

「あぁ?」

「余の質問に答えろ、返答次第では余の魔力で城を吹き飛ばす事になる。よく考えて話すがよい」


 クーデリアの身体が紫色に帯電し、ヴィーアの髪が逆立ち始める。


「いいや。俺は女は滅多に殺さん、それが美人なら尚更な。だからお前ももう少し食べ頃になるまで殺されるなよ、俺が予約しておいてやるからな!」


 クーデリアの魔力が一層高まり、天井の照明魔道具が点滅し…魔力を霧散させた。


「くっくっく…ふはははは!なんたる、なんたる愚か!」

「どうした電気でショートしちまったのか?」

「クーデリア様があんなにお笑いになっているなんて、初めて見た…」


 ヴィーアは思わずメイドを押さえ付けていた力を緩めてしまったが、メイドも驚きのあまり反撃をするでも体勢を立て直す事もせず立っていた。

「ふぅ、久方振りに笑ったぞ蛮人。名を名乗る事を許そう」

「ヴィーア様だ」

「ではヴィーア、そろそろ余の所有物から手を離せ」

「ふむ…いいケツだったぞ」


 メイドは解放されるとクーデリアを守るように前に立ち短刀を構える。


「お気を付け下さいませクーデリア様」

「控えろ、余の前に立つな」

「っ!申し訳…御座いません」


 底冷えする様な声が背後から聞こえメイドはクーデリアの後ろに移動する。


「それで一体ここで何をしていた?ここは余の貸し切りだぞ」

「そうだ、ラーナナちゃんを探していたんだ。クーちゃんどこにいるか知っているか?」

「クーちゃん?くっくっく…貴様は本当に…よかろう、このハインツ・クーデリア自ら案内してやろうではないか!」

「そか、では案内するのだ!」

「クーデリア様になんて口の聞き方を!」

「よいと言っている」


 ヴィーアは案内を頼んでおきながら先頭を歩き出す。


「まったく…怒る気にもならんな」


 クーデリアは自分の口角が上りっぱなしなのに気付いて、ヴィーアの後に続いた。


「よーっす道に迷った」

「ヴィーア殿、一体どこへ…クーデリア皇女様!?」

「いかにも、余がハインツ・クーデリアだ」

「うははははもう姫様をたぶらかしたのカ!」


 先程近衛兵が守っていた通路までクーデリアの案内で戻ると文官とカルミティが待っていて、風呂に送り返した冒険者が他国の姫を引き連れて戻ってきたので近衛兵は訳が分からず、とりあえず姿勢を正す。


「まだ触ってもいないぞ、メイドちゃんの尻なら軽く撫でたが」

「何が軽くだ、貴様が揉みしだいたせいでスカートに皺が出来た」

「俺は気にしないぞ」

「私がするんだよ!」

「うるさいな…それでもう通ってもいいんだろ?」


 近衛兵は黙っている。

適当に風呂にでもあしらって、戻ってきたら許可は出なかったとかでっち上げて帰って貰うつもりだったからはなから許可など聞いていなかったのだが、まさかクーデリアを連れて戻ってくると思わなかった。


「…クーデリア皇女様が来たことを御伝えしてきます、今しばらくお待ち下さい」


 近衛兵はヴィーアにではなくクーデリアの方を向いて話す。


「許す、ここで待とう」


 クーデリアの許可が出ると近衛兵の一人は走っていった…と思ったら10秒程で戻ってきた。


「お会いになるそうです!」


 息切れ状態なのは見苦しいので必死に平静を装っているがかなり苦しそうだ。


「ほう、速いな。さすがフーキの精兵、よく訓練されている」

「…恐悦至極でございます」


 クーデリアはもう興味がないと言わんばかりに歩き始めたので皆続いた。


「邪魔をするぞ」


 クーデリアはノックと同時に扉をあけた。


「もうクーったら早いなぁ、ノックと同時じゃ

意味無いじゃん!別にいいけどねー私もよくやるし!それでこの前もリーとルーにも怒られちゃって、あはは」


 一人でいっぱい喋ってるのはここの国の第一王女、ラーナナである。


「姫様、冒険者達をお連れしましたぞ!」

「あーうん、君達が冒険者かぁ!君カッコいいね!すごいねぇ怖くない?やっぱ命よりも体が勝手にロマンを求めちゃうカンジ?わぁこっちは獣人さんだね!耳とか触ってもいい?ダメって言われたら王族権限使って触っちゃうけどね!」

「お、おう…」

「あ、あんまり強く引っ張らないで下さイ…」


 ヴィーアとカルがたじたじになっていると文官から助け船が出る。


「姫様、その辺で。姫様のスピードに誰も追い付いておりませぬぞ」

「余は慣れているがな」


クーデリアは腕を組み謎に勝ち誇っていた。

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