階段下は隠れいちゃつきスポット
ただの物を貰い死ぬ愚者、と言う諺がある。
昔フーキの商人がある取引相手から捨てる物だからと壊れた魔道具を譲って貰い、ジャンク品専門店にでも売りに行こうとしたのだが帰り道、商船の中で突然起動暴走し海上で爆散、身体のパーツが海岸線に打ち上げられた。
そんな諺もなんのその、畏れ多くも全身無料装備で固めたヴィーア達は横並びになり格好よく歩いている、黒の色眼鏡までしている。劇にされたなら盛り上がるワンシーンで使われることであること間違いなしだ。
「そういえばサ」
「あん?」
「武器はその剣で良かったのカ?銀装備じゃないだロ?」
カルはヴィーアの腰に刺さっている直刀を見る。
「これは良いんだ。俺の女になる予定の女からの借り物だからな」
「ふーん…人間も婚姻とか親同士が相手決めたりとか色々あるよナ」
「別に結婚とかはしないぞ、ハーレムの一人だ」
「そうなの?人間の雄が雌をたくさん侍らせる事が出切るのは偉いヤツだけだと聞いたんだけど、ヴィーアってそんな偉いのカ?」
「良い女は俺の物だからな、カルも俺のだぞ」
「いや絶対違うかラ!」
城まで戻ってきた二人、今は城壁門付近から城を覗いている。ヴィーアは色眼鏡を頭の上まで上げ目を細めた。
「おい奴ら増えてるぞ、どっから湧きやがったんだ。表で魂のバーゲンセールでもあったのか?」
「バーゲンセールって…ただ城内に居たのが出てきただけなら良いんだけど…なれはてになるのは死んだ後だから、もしそうなら人も沢山死んだ事になるゾ」
「魂も胴体半分ってか」
「うはははは!ねぇ不謹慎なネタヤメテ!」
「うるさい奴だな、いいから入れるとこ探すぞ、俺についてこい!」
「ハーイ!」
少し離れ、城壁を一周し別の侵入口を探す。
先ほどまで居たのがアカンの街側にある南門なので西に向かうが、そもそも門が開いておらず更に北を目指す。
「くっそ、移動するだけで疲れるな…」
「人間の肺活量はゼージャクだネェ」
ルクセニア三大名城に数えられるコナモン城は分厚い城壁に囲まれて、西と東門は盛り土がしてありまっすぐ走れない様にすることで攻め手に疲労を強いて、攻城兵器を展開しにくくしている。その斜面をえっちらほっちら走っていき北の門に辿り着く。
北側門が一番大きく、大軍を効率よく出撃させる事が出来る作りになっているようで大きな門の他に人が通行する扉も左右に付いていた。大きな門は閉じているが扉は開いているようだ。
「お、ここから入れるんじゃないか?」
ヴィーアが扉から頭だけ出し左右を確認するが、薄暗い廊下を松明が照らしているだけだった。
松明を一本抜き取るとカルに振り返る。
「静かに行くぞ、とりあえず城壁の上から偵察だ」
「静かにだな、分かっタ!」
此方の世界にも時間の概念があるようで、気付けば日は沈み城壁の銃眼から射し込まれるわずかな月明かりと、まばらに火の付いた松明の灯りのみを頼りに階段を目指し見付けたのだが、階段を降りてくる足音が聞こえてきた。
「隠れろ!」
「んっ!」
ヴィーアはカルと階段下に潜り込み松明を消すと、カルの口を押さえる。
カルとしては別に悲鳴をあげる程素人では無いしいざという時に動けないので離して欲しかったのだが、手を払うことで物音を立てるのを警戒し押さえられたままでいた。
何者かの足音は等間隔に続く、列になって移動しているようでかなりの数だ。
(この調子で通りすぎてくれヨ~…)
階段下の隙間は狭く、密着している状態だが物音を立てなければ大丈夫だとカルが少し警戒を抜いた時だった。
妙な感触が股間に伸びてきた。
「っ!」
顔を上げるとヴィーアがニヤニヤしていた。
ヴィーアの手は口と背中に回ったままなのでこの当たっている感触は…。
ナニかと理解した瞬間にヴィーアは腰を小刻みに動き出した
「んっ!んっ!」
(ヤメロォ擦り付けるナァ!)
ヴィーアの腰は足音が消えるまで止まらなかった。
「ふぅ、危なかったぜ」
階段下から出てきたヴィーアは未だにへたり込んでるカルを見る。
「ハァ…ハァ…」
「いつまでそこにいるつもりだ、それとも続きをするか?」
「誰がするもんかこのヘンタイガァ…」
「じゃ行くぞ」
「あっ…」
ヴィーアは先に進んでいってしまい、カルは無意識に何故か物欲しそうに手を伸ばしてしまったが、すぐに引っ込めた。
城壁の上につくと城の周りや中庭を見下ろすことが出来た、最初に侵入を断念した南側にはなれはてが結構いるが他の入り口はまばらで、何とか侵入出来そうだった。
「ナァ…しっぽ触るのやめろヨォ…」
「静かに!見付かるだろ、ちゃんと侵入出来そうなとこを探すんだ!」
「うぅ…」
カルは口では拒絶していても何故か払い除けることが出来なかった。
(くくく、カルの奴払い除けてこないのを見るとこれは発情しているな、もう一押しだ!)
最初のキスに続き先ほどの刺激で少しずつスイッチが入っていくのを感じる。
自分の身体が発情仕掛けているのが分かったカルは、なんとか集中を取り戻すべくしっぽを自分の身体に巻き付け触られないようにしたのだが、今更どうにもならなそうかもと思ったのだった。




