あのジジイいつか殺す
時には大胆に行動しているほうが疑われず済むものであり、やましい事が無くてもびくびくしていると怪しまれてしまうものである。
門番を気絶させた事など10秒で忘れたヴィーアは、あまりにも堂々としているので不審者だとは一切疑われず巡回中の衛兵にも、
(あ、こいつ偉い奴だな…)
と思われ挨拶される程である。
そんなヴィーアは中庭までやってきた。
(まずはどうやって姫に近付くかだ、俺を見て少し話さえすれば1時間で惚れてヤらせてくれるようになるだろ?今はパレードの最中だがもうじき戻ってきて飯でも食うだろうからその隙にお近づきになるとしよう、我ながら完璧な作戦だ!)
もう既に勝った気でいるヴィーアは悩んだ。それまでどうしようか、メイドでも摘まみ食いしようかとも思うが姫は2人もいるのだ。(まだ18歳に満たないクーデリアとミーティアは除いた)貴重な一発を無駄撃ちしても良いものかどうか悩んでいると…
「だぁれーどうしたのー?」
「どうしたらラーナナちゃんとヤれるのかと思ってな。…む?」
いつの間にやら中庭の真ん中にあるテラスに来てしまった様だ。
思考の海から浮上し顔をあげると椅子に座り本を読んでいる双子の幼女と遭遇した。ちなみに今話しかけてきた幼女が読んでいる本のタイトルは シンプル20金貨シリーズ、ザ・帝王学 もう一人の幼女は 地獄の人魔大戦黙示録(全年齢対象) である。
「ラーちゃんはねぇ、甘いものとか好きだよね」
「アップルパイとか好きなの」
「なんだがきんちょども、可愛くねぇ本読んでやがるな」
遠慮無く向かいの椅子に座ったヴィーアはお菓子に目を付けた。
「うまそうなもの食べてるな、貰うぞ」
「お紅茶も飲むの?」
「うむ、くるしゅうない」
一種類ずつ菓子を食べ、紅茶を一気飲みし一息ついたヴィーアは幼女に尋ねる。
「で、お前らラーナナちゃんが他に何が好きか知ってるか?」
「あとラーちゃんはねぇ、白馬に乗った王子様が好きだよー。救われたいんだってねぇ」
「燃える城から救われたいの」
「意味分からん…何から救われたがっているってんだ。それとも近頃の王女ってのはそう言うのが好きなのか」
「その後は裸で抱き合うの」
「私達が読むと怒られちゃう本に書いてあったね」
「「ねー」」
「ほー少女漫画ってやつか。だが良いこと聞いたぞ、ヤりたい願望はあるってことだ!」
双子は首をかしげてヴィーアを見ている。
「お兄ちゃんも呼ばれた冒険者の人なの?」
「超一流の冒険者ヴィーア様だ」
しかし、冒険者だと聞くと二人は少し悲しそうな顔になり、不穏な空気が漂う。
「死んじゃうの?」
「きっと死んじゃうねぇ」
「どう言うことだ?他の奴らはどこにいる?」
双子はスッと一つの塔を指差した。
「ふーん、近寄らんとこ」
「えっ」
「行かないの?」
「どうでも良いからな、俺の様なクレバーな冒険者は無駄な事はしないのだ!」
「おぉ~」
「なんかカッコいいの!」
「はっはっは、惚れてもダメだぞ。18歳になるまでは抱いてやらんからな!」
まるで子供が三人いるような会話をしていると、執事服を着た穏やかそうな初老の男が歩いてくる。
「おひいさまーどちらですかなー」
「じいやなの」
「こっちよー」
「そろそろ授業のお時間ですぞ、おやこちらの方はどちら様ですかな?」
穏やかだが、不審者を考慮して目が細くなり、わずかに腰を落とした。
「ヴィーア様だ」
「超一流冒険者なのよねぇ」
「クレバーなの」
「ヴィーア様…ヴィーアーヴィーア…何処かで聞いたような…」
じいやは何かを思い出そうとしている!
「まぁいいか」
なんと、じいやは諦めた!
「じいやはすぐ忘れるよねぇ」
「チホーなの」
「ただのボケジジイかよ。それよりジジイ、ラーナナちゃんはいつ戻ってくるんだ?」
「ラーナナ様は本日は戻ってきて来ませぬ。この後は戦没者追悼式に行かれます」
「なんだと!!!」
椅子から勢いよく立ち上がったせいで紅茶の瓶が倒れ菓子が床にこぼれ落ちる。
「「あー!」」
幼女達が泣きそうな顔になった。
「追悼式のあとはパレードをし、その後はパレードをします」
「大丈夫かこのジジイ、さっさとクビにしたほうがいいぞ」
「どちら様ですかな?」
「…話にならん」
「おぉ、思い出しましたぞ!冒険者の方はあちらの塔に集まっております。ささ、お連れ致しましょう!」
じいやはヴィーアの腕を掴んだかと思うと、物凄い力で引っ張られていった。
「おい、男が俺にさわぁあああああああ」
「じいやは昔狂戦士だったから力が凄いのー」
「またねぇー」
幼女達の声は聞こえなく、ハンカチをヒラヒラしているのが最後に見えた光景だった。
土煙を巻き上げながらじいやが塔にたどり着くと手を放した、慣性に従いヴィーアは床を転がる。
「どっがっべっ」
綺麗に三度バウンドし、水溜まりで泥沼化している地面に入るとようやく止まった。
「ではこれにて失礼しますぞ」
「よ、よーし殺す」
ふらふらになって立ち上がったヴィーアは剣に手を掛けた。
「うわきったないのぉ、どちら様ですかな?」
「おめぇがやったんだよ!」
「おひいさまーどちらですかなー?」
じいやは何処かに行ってしまい、ヴィーアは嵐の様なじいやに脱力するしかなかった。
そろそろ次の女をパーティーに挿入したいよね




