皆殺しだ!
少し前、己が役割を全うすべく全員が移動を開始し、コルト兄弟も自分たちにしか出来ない事…死神を呼び出す魔方陣を描きを始める。
アレクが図形を見ながら指示を出し、ザックがそれを描いていく。
魔方陣を描くのに邪魔な椅子は全て壁際に追いやられ、広い礼拝所いっぱいに使った巨大な円の中は意味不明な図形がところ狭しと描かれている。
「そこには円で中にはアンク記号。その隣は…」
「重ね枯草だっけか?」
「違う、それはその隣。そこには合わせ巻き貝」
「へいへい」
一般人には聞いても分からない会話を交わしながらザックはやる気のなさそうな返事をするが、その動きはスムーズでテキパキと無駄の無い動きで完成を目指す。
直接戦えないもどかしさをぶつけるように、結果的に仲間達を助けられると信じながら。
「急ぐぞ兄貴、死神デーザさえ喚べれば魂を不正に定着させてるカミラは間違いなく執行対象だ。戦わずに終わるかもしれない」
「わーってるよ、さっさと完成させて助けに行ってやろうぜ。聞こえるだろアイツらがいった方角から戦いの音がする。大悪魔が出たか本丸のカミラと会えたか…ヴィーアの野郎今頃ヒーヒー言ってたりしてな!」
「…どうかな、泣き言言うよりブチギレてるイメージだけど」
「へっ、ちげぇねぇや…よし、次はなんだ?」
「えぇっと……」
兄弟は一層作業に力が入る。
リンヒ達の戦いを足裏で感じ、少し離れた所から響く不明瞭な怒号と剣激を少しでも早く終わらせる為に。
ーーーーーー
ヴィーアは苛立ち気に剣を振るう。
召喚された深紅の兵士達はマナクが言う通り精鋭と呼ぶに相応しく、誰と戦っても一撃で両断とはいかないのだ。
剣で防がれ盾に弾かれ、時には横槍が入り避けるしか無く、まだ数体倒しただけに過ぎない。
何よりヴィーアを苛立たせる原因は、敵は100体程居るのに一斉攻撃を掛けてくるでも無く10体ずつじわじわと追い詰めるように攻撃を仕掛けてくる事だ。
ヴィーアが8体を一人で相手取り、抜けた二体をシャノンが抑え、ガリーナ達が倒し少しずつヴィーアへの圧力を減らしていく…フルバーストを使わないにしても限界まで身体を動かし大立ち回りを繰り広げ、徐々に敵を倒していく。
「一体は私が!」
「おう!」
残り3体まで減った時加勢に来たシャノンが割って入り2対1になる。
盾の防御を掻い潜り相手の反応速度を上回る程の速さで剣を振り抜き首を飛ばし、その勢いのまま回し蹴りを放つと、兵士の鉄仮面もとい頭は何周も回転し絶命した。
大きく息を整えるように吐いた後シャノンをみると飛来したウォーターボールとフレイムスライスが兵士に炸裂した隙を付いて鎧と兜の隙間を狙って剣を突き入れ、相手が崩れ落ちた所だった。
お互い頷き合った後、鎧ごと灰塵と化した兵士を踏みつけると火花が弾け、マナクへ向かって怒りを露にする。
「おいナメてんのか!?どうして全員でかかって来やがらねぇ?雑魚けしかけて来ねぇでテメェが来やがれ!」
「見事だヴィーア。これは入隊試験も兼ねているのでな、配下に加えた後能力に応じて隊に振らねばならない。よき指導者の基本だろう?」
「言ってろボケが!全滅させてやるから覚悟しろ!」
「その意気だ、もっと楽しませてくれ…ちなみに、今のはただの兵卒級だ」
「…何でも来やがれ」
例え10対1でも負ける気はしなかったが、十分な技量を持つ今の兵士達が一番下だと言う事は、次はもっと手強いと言うことだ。
ガリーナ達を庇いながらどこまでやれるかと、肩で息をしている仲間達を見ながら僅かに焦りの表情を浮かべるが、雑魚を無視しマナクを狙おうにもいかんせん守りが固いので10体ずつ倒してマナクの守りを崩す所から始める事に決めた。
「疲れているな?一分待ってやろう、息を整えておけ、手出しはしない」
「あぁ!?なんのつもりだこの野郎!」
「言っただろう、入隊試験だと…疲労を理由に負けては正確な評価が下せん」
マナクが手を上げると後ろに控えていた兵士達は戦闘態勢を解除したのでガリーナ達は本当に襲われないか警戒しながらもヴィーアの元へ急ぐ。
「クソがナメやがって…」
「ヴィーアさん怪我は!?」
「あるもんか、俺は最強だ」
「良いから休みなさい…不本意だけど、アンタだけが頼りなんだからね!にしても何なのアイツら、いくら攻撃を当ててもちっとも倒れ無いし!」
「あの鎧は厄介です。とんでもない業物なのかか、首を跳ねないと死なないか…またはその両方か…」
「コイツは胴体でも倒せてたじゃない」
「武器が違います、ヴィーアのは聖剣ですから。私の極光剣も光属性を剣に宿せるのですが、それでも全く威力が違います」
「何にせよヴィーアさんはそんな敵を一度にあんなに相手して勝っちゃうんだもん。凄いなぁ、ね、アリーナ」
「まぁ、凄いのは認めるけど…なんか認めたく無いわ。回復ポーション飲む?怪我してなくても疲労回復出来るわよ」
「んなもんよりアリーナちゃんがキスしてくれれば元気いっぱいになるぞ」
「バッ…する訳無いから!真面目にやりなさいよ!」
「1から100まで真面目に言ってるんだがなぁ…」
「ボク!ボクがするよ!…ボクじゃダメかな?」
「もちろん大歓迎だ!」
怒りそっぽを向いたアリーナに頬を掻いていたヴィーアの前にガリーナが飛び出る。
妹や仲間が見ている前でそういう行為に立候補する事は顔から火が出る程恥ずかしかったが上目遣いで内股を擦り合わせるガリーナにヴィーアは喜んで飛び付いた。
「いくぞ」
「は、はい!んっ!んん…」
ガリーナはヴィーアがやり易いように背伸びをし、アリーナは姉の女として蕩けた顔を見ないようにするがチラチラと気にしており、シャノンは直ぐ様後ろを向き敵と向き合う事で視線を逸らした。
その間にもヴィーアの両手は遠慮無くスリットから侵入し、尻肉を揉みながら自身の硬くなった一部へ刺激を与えるように腰を抱き寄せ密着させると良いように腰をグラインドさせ、ガリーナは文句も言わず受け入れているが、流石に指が秘部へ入り込もうとし始めたので思わず押し退けてしまう。
「おっと」
「だ、ダメだよこれ以上は!」
「ノッてきた所だったが仕方ない、さっさと倒して続きをヤるぞ、いいな?」
「う、うん…分かった…」
「とうに時間が過ぎているが…なるほど、噂通りだ。もういいかな?」
「おう、絶好調だ。畳み掛けてこなかった事を郷で後悔してろ」
何度か手を開き、閉じるを繰り返し、首を回し強張った筋肉をほぐし、ガリーナの献身のお陰で疲労は消えた事を再確認し、更にエロイ事をしたので一時的に能力向上した事を確認すると敵の次の前列に剣を向ける
「よろしい。兵士長級、前へ!…歴代、私に挑んだ人間はここ止まりだ。超えて見せよ!」
次列に整列していた10名が戦闘態勢に入り一糸乱れぬ足取りで近づいてくるとガリーナ達が息を飲むのが聞こえたの、鼓舞するのを兼ねてヴィーアが啖呵を切る。
「はっ!何度言わせんだ、テメェも纏めて全滅させてやるって言ってんだよ。お前らは自分の身だけ守ってろ!」
「ううん、そうじゃない、そうじゃないよヴィーアさん…言ったでしょ?ボク達にもヴィーアさんを守らせてって…リンヒさんと違って強くないから、頼りないかも知れないけどね」
「そうよ、アンタに死なれちゃ困るの。…変な意味に捉えないでね!アンタが倒れたら次は私達なんだから!」
「ヴィーア、疲れたなら私と配置を変わっても良いですよ」
「…流石俺様の女達だ!」
「アンタの女じゃないっての」
「違います」
「チッ、この件が片付いたら絶対ヤるかんな…いくぞお前ら!」
相変わらず身持ちの固い二人に舌打ちを溢した後、先頭を駆け出したヴィーアは高く跳躍する。
それは並列から密集陣形に変わっていた敵集団の前列を飛び越え、真ん中辺りまで伸びると敵も盾と槍を構えヴィーアの着地を待ち構える。
このまま行けばヴィーアの攻撃は盾に阻まれ、串刺しにされる未来が容易に想像出来たが、そうはならなかった。
金の髪を靡かせ、一筋の閃光となったシャノンが姿勢を低くしながら駆け抜け敵前列に飛び込むがすぐに反応を見せた前列3名は盾を前に構えシャノンの突撃に備えたが接触直前で飛び退くと、変わりにガリーナ達の魔法が殺到する。
すると、ダメージ自体は少ないものの衝撃が陣形に僅かな綻びを生み…そこへヴィーアの渾身の衝撃斬が炸裂する。
「くっ、たばれ…衝撃斬!」
「!?」
破滅的な衝撃が敵を襲い、砂煙が晴れた後には7名が燃え尽き、残りも上手く立ち上がれずそこをシャノンがトドメを刺して回ると一瞬で兵士長級は肩が付いたのだった。
「これで終わりか!?休憩なんかいらねぇぞ、次に死にてぇ奴は誰だ!」
「おめでとう前人未到の境地だ。それより先程より力を増したな。余力を残していたか?それとも身体強化の魔法か…ではウォーリアー級前へ!この者達は強靭だぞ。力も体力も申し分無い貴様は是非この隊に入れたいと考えているぞ」
「何がウォーリアーだ、これでも食らえ!」
休憩不要と言われ直ぐに次のウォーリアー級を前進させる、先程と比べ随分体格の良い巨斧を携えた大柄な兵士達だ。
彼らが一歩踏み出した瞬間、ヴィーアは剣を投擲しながら名を叫び、その身に力を宿す。
「来いプリヴィティ!」
「…来たよ。敵がいっぱい、だね」
「今から減らすんだよっと!」
空気の膜を破る程の豪速で投げられた剣を念動力で操作するヴィーアの視線に合わせプリヴィティは指揮を取るように手を振り回す。
重厚な金属鎧を貫いては次の獲物へと向かい、その毒牙に掛ける。
一部の勘の良い兵士が斧を振り上げ叩き落とそうとするが、念動力による打ち合いとはまた違うあり得ない挙動に翻弄され何も出来ずに同じ末路を辿ったのだった。
だったらと数人の生き残りが丸腰になったヴィーアを害すべく致命傷になり得る頭を巨斧で庇いながら突進をかけてくるが、それを読んでいたとばかりにシャノンが飛び出し、その無防備な脚の腱を切断すると機動力が失われたので、斧を持ち上げている腕を斬り落としてから悠々と首を貫くと、瞬く間にウォーリアー級も全滅した。
「へっ、大したことねぇな!この調子じゃすぐ全滅だな!」
「心配無用だ、今は自分の事だけを考えた方がいい。マジックナイト級前へ!続いてフェンサー級も続け!」
「なっ、今度は20人!?」
「大丈夫。落ち着いてアリーナ、ヴィーアさんは絶対負けない。だからボクたちも頑張ろ?」
「やるだけやるけど!近付かれたら一溜りもないわよ…」
「シスターアリーナ。私が生きている間は絶対に通しません。無論、ヴィーアは貴女達が傷つく事をよしとしないので本気を出すでしょう。だから安心して援護を」
「分かった!やればいいんでしょやれば!絶対やっつけてやるんだから!」
アリーナは魔力ポーションを飲み、空になった容器を投げ捨てると敵を力強く睨み付けたのだった。




