俺に化けるなんて許さねぇ
炎が部屋を包み込み、熱で窓が割れる。カーテンやカーペットが焼け落ち更に火の勢いが増す中、ヴォルトに化けたリミキンがヴィーアに聞いてくる。
「一つ聞いて言いかい?なぜ僕だと分かった?」
「…二回目に廊下であった時だ、違和感を感じたのはオリーを勧誘する話をした時に「僕は偉いらしい」と言った事だ。まるで他人事のようでまさにお前らバケモンがドジって言いそうな事だ」
「でもそれだけかい?ただ言い間違えたって、事もあるだろう」
「まだあるぞ間抜け、逃げる前に指輪を褒めたろ。好きなんだろ、魔力があるもんが」
「…」
「だから良かったな」
「…何がだい?」
「顔中に指輪の赤アザがついてバカみてぇな顔になってんぞ!俺の指輪は銀だ!」
「あ?…ふざけやがってぇぇぇ!」
「あの時ベタベタ触ってたのそう言うことね、男にも目覚めちゃったのかと本気で思ったんだから」
オリーがカレインに治癒をかけながら半ば独り言を言う。
「なぁお二人さんよ、さっさと始めようぜ」
もう待ちきれないと言った感じでザックがボウガンと大型ナイフを構える。
「ヴィーアとか言ったか俺があいつをやる。のこりの料理人とメイドを頼む」
「ほざけ、俺の女に手を出した落とし前をつけさせやる」
「そうかい勝手にしろ、じゃあ俺があの二匹を片付けても終わってなかったら俺が残りも始末してやる」
料理人とメイドのリミキンの腕が異形の者に変化し、胴が伸びる。武器を失ったので元の姿に戻るようだが、所々に人だった形の名残が残っており嫌悪感を抱かせる姿になる。
「うるさいおっさんだ、いいから行くぞ!」
「俺はまだ28だ!」
ザックが先制ボウガンを放つとリミキン3人は散開しヴィーア達に向かってくる。
素早く矢を込め直したザックは足に発射し命中させると膝を付かせた。もう一体のカバーが入り心臓を突き刺す時間が無くなったので顔面を思い切り殴ってダウンさせると振り下ろされた鎌腕をナイフでいなす。
敵の攻撃が大降りになった隙をついて蹴りを入れ距離を取ると銀の粉を含む水風船を投げつけた。
虫の様な悲鳴をあげ地面に倒れたリミキンを踏みつけボウガンで心臓を押さえつけ発射しようとしたが矢が入ってない事を思いだしその姿勢のまま矢をつがえる。
「やめっ」
容赦なく射つ。
「おっと、喋れたのかお前。一言も喋んなかったからよ」
リミキンが一体絶命した、その直後もう一体が突っ込んでくる。
「ぐっ」
ボウガンがどこかへ飛んでいってしまった…。
ヴィーアとヴォルトリミキンの戦いも熾烈を極めていた。
「凄いね、魔族の力と戦えるなんて人間とは思えないよ!」
「やかまっ!しいっ!」
ヴィーアの武器は礼装一式についていたレイピアだ、打ち合うのには非常に向いておらず回避に専念するが、反撃の伴わない回避は体力の無駄であり徐々にかすり傷が増えてゆく。時折反撃に何度か突き返せるが使いなれていないレイピアでは力の入れ方も分からず決定打には程遠い。
「ほらほら、どうしたんだい?死んでしまうよ?ほらほらほら!」
「がっ、くそが!」
ヴォルトリミキンがなぶる様にヴィーアを追い詰めてゆく。
「君を殺して変身するのが楽しみだなぁ、いろんな女がいるんだろ?安心させて近づいてみぃんな殺してやるよ!」
「今言っちゃいけねぇ事言ったなぁ!!!」
ヴィーアに怒りの力が宿り攻撃に力が籠る。しかしそれでも戦局を打開するには至らない。
(ちくしょう、なにか無いか…?)
ザックは突き飛ばされ、馬乗りにされていた。
身体をひねり鎌を躱し、ナイフで防ぎ、噛みつこうと近づいてくる顔に頭突きを入れてなんとか防いでいる。
「よっ、ほっ、おいそれは反則だろ!?」
治療中で手を離せないアレクは聞こえてくる兄の変な声を後ろで聞く。
「おい兄貴、大丈夫なのか!?」
「あぁ!みての通り助けはいらない!」
「ここからじゃ何も見えないんだよ!」
「いいから心配すんな!」
強がりを言ったものの危機的状況なのは分かっていた。そしてナイフまでも弾き飛ばされてしまう。
「死ねっ!」
「なんだお前も話せるじゃねぇか」
両腕を大きく振り上げ一気に振り下ろしてくるが、その瞬間リミキンの胸からレイピアが生えてきた。
顔に血飛沫がかかり思わず目を瞑る。
「うぶっ」
リミキンは力を失い倒れてくる。レイピアを生やしたまま。
「あぶねぇ!」
間一髪抜け出したザックはリミキンを一度蹴飛ばす。
「ざまぁみろってんだ!」
遠くからヴィーアの声が聞こえる。
「いいから武器を寄越しやがれー!」
怒りに衝撃斬が決まりヴォルトリミキンが吹き飛び壁に激突する。その隙にレイピアを投擲しザックに馬乗りになっていたリミキンを殺したのだが大した時間も稼げずヴォルトリミキンが壁から這い出てきてしまった。
「さっさと武器を寄越しやがれー!」
武器を失ったヴィーアは走って逃げ回る羽目になった。
戦闘パートうまく書けるやつってすげぇなぁと思いながら書いております




