覚えたスキルも使いよう
ゲストルーム、そのテーブルには料理とワインが乗っている。が一つも手が付けられておらず冷めきっており部屋の主はどこにいるかと言うと、初めはおそらくピッとパリッと整えられたベッドの中だった。今となっては二人の行為のせいで見る影もない。
「よーしこれで最後だ!」
半裸のメイドの後ろから覆い被さったヴィーアは一際激しく動くと満足したのでベッドから降りる。
「はぁ、はぁ…こんなの初めて…」
メイドの顔は紅潮し息も絶え絶えであるが表情は崩さない。
ヴィーアはパラメーターを確認すると、やはり基礎パラメーターが上昇している。スキルは…
「整理?いらんなぁ」
対象を人、物問わず整える。
試しにメイドに使ってみる。
ぱぱぱっ!
「うおっ」
「きゃっ」
自分の手が意思とは関係なく動き目にも止まらぬ早さでメイドの身嗜みが整った。
あまりにも驚いたのかベッドの上でも聞けなかったかわいい声が聞こえた。
「ありがとうございます?」
(まじでいらんスキルだったな…別の使い道もクソも無い…ん?)
そもそも身嗜みを整えるとは、汚れや服がはだけておらず不快な臭いもせず誰に見られても恥ずかしくないと言う植え付けられた一般常識に沿うようにスキルが発動しこうなったのかもしれない。
(だったらこれが正解だと思いながら発動したらどうなるんだ?)
もう一度発動させた。
ぱぱぱっ!
メイドは頭からパンツをかぶりガーターベルトが首に巻き付き白いニーソックスが口に詰め込まれた。
「んんーっ!」
「おほほほ面白いなこれ!」
結局何に使うかは思い付かなかった。
ヴィーアは部屋を出ると壁を背にして体育座りして俯くオリーを見付けた。
「こんなところで何をしてる」
「ヴィーアが終わるの待ってたんでしょ」
「一人で待ってたら危ないじゃないか」
「そんなこと言ったらあのメイドが化物だったらヴィーアだって危ないでしょ?」
「俺は最強だから大丈夫だぞ。おおそうだ、そんなに心配なら今度から一緒に混ざればよかったじゃねえか、俺は二人相手でも全然平…」
「だめ」
場を和まそうと言った言葉は遮られた。
「もっと自分を磨いて私だけに夢中にさせるのが、目標だから」
決意のこもった瞳がヴィーアを捉える。
「……そっか、良い女になれよ」
「あったりまえよ!」
自分に向けられたその強気な笑顔はヴィーアを少しドキッとさせた。
「で、何か良い作戦ある?」
「大丈夫だ。俺に任せろ」
廊下を歩きながらオリーはヴィーアに尋ねる。
特に良い案も無かったがそう答えた。すると向こうからヴォルトが一人で歩いてきて、ヴィーアを無視してオリーに話しかけてくる。
「やぁオリー、怪しい奴は見付かったかな?」
「一人で彷徨いてるお前が一番だ」
「ん?君は確かヴィールくんとか言ったかな?いたのか」
「ヴィーアだ。次ふざけたこと言ったら殺す」
ヴォルトは見下した態度を崩さないのでヴィーアは殺気を向けると少し怯む。
「ま、まぁ今は同じ仕事をする仲間だ。仲良くやろうじゃないか…じゃあ僕はもう行くよ。オリービアくんさっきの話考えておいてくれよ、僕は偉いらしいからな」
「さっさと失せやがれ!」
「それ良い指輪だね!君には似合わないがね!」
捨て台詞を吐いて逃げるヴォルトに壁に備え付けられている高そうな壺を躊躇なく掴んでぶん投げるヴィーア、素早い逃げ足で当たりはしなかった。
「ほんとヤなヤツ」
「…」
「どうしたの黙りこくって」
「いや、別に」
「気にせず行きましょうよ」
広場に戻るとヴォルトの相方がこちらに気付き近付いてくる。
「少しいいだろうか」
「むっちむちでエロいな、素晴らしい」
「…なに?」
ヴォルトの相方は胸の前で腕を組み壁を作る。
「こっちの話だ、それより何か用か?」
「先ほどはあの馬鹿者が不快な思いをさせたようで謝りたくてな、すまなかった」
深々と頭を下げる女性にオリーは慌てて止めようとするが、女性はしっかり3秒頭を下げてからヴィーア達を見た。宝石の様に綺麗な紅い瞳がまっすぐこちらをみる。
「あの、私達は大丈夫ですから頭を上げてください!」
「改めて自己紹介してもよいだろうか、私はカレイン・サンバースト。よろしく頼む」
「オリービア・ミサンガです」
「ヴィーアだ」
「ところでヴォルトを見てないだろうか」
「五分程前に向こうに走っていきましたよ」
オリーが先程ヴォルトが逃げた方向を指差す。
「あいつはまったく…ありがとう、探してみるよ。ヴィーア殿もまた後で」
「いやダメだ、あんな奴探さなくてもいいぞ。もうすぐ何か始まるみたいだしここいれば向こうから来るだろ」
壇上を見ると司会が現れて拡声魔道具の調整をしている。
「そのようだな…」
「えー皆様長らくお待たせ致しました。これより発掘された古代の魔道具をポタト・デーガク男爵様より発表して頂きます!」
ついに魔道具がお披露目される。




