表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/26

8話:猫は急に追いかけっことやらを始めたがるのである

 そんなある日、元気に回復した猫だったのだが、また姿を消してしまった。


 猫という生き物は、もしかすると妖術なるものを使うやも知れぬ。それにしても何故か就寝前より、部屋が荒れている気がするのだが、これは一体どういうことなのであろうか?


 吾輩は首を傾げながらも、猫を探すため家中を見て回った。


 すると、台所の方でカサカサ、カサカサと不気味な音がするでは無いか。吾輩は内心、ビクビクと肩を震わせながらも、男たるもの怯えることは決して許されぬと自身に言い聞かせ、恐る恐る襖を開けた。


 そこには猫が引き戸を器用に開け、魚の干物が入った袋を食い破り、中身を物色しているでは無いか。


 あやつめ、妙なことを覚えおって。そんな怒りが込上がるものの、怪我でもされれば溜まったものでは無い。


 吾輩はすぐさま猫を捕まえようと、襖を開け猫の元へと近づいた。しかし、猫は危機管理能力とやらに長けているらしい。


 吾輩の足元をスイスイと抜けていき、追いかけっことやらをさせられる羽目になった。


 齢四十のおっさんが、猫ごときに追いかけっこなど、ちゃんちゃらおかしいまであるのだが、吾輩は至って本気で捕まえようとしている。


 それが面白いのだろう。猫はたまに吾輩を嘲笑するように立ち止まり、もう少しで捕まえれるであろう瞬間を見計らって逃げるのだから、かなり舐められたものである。


 そんな追いかけっこは小一時間も続いたが、吾輩の体力が限界に達し、ぜぇー、はーと息を吐き出し大の字で床に伏していると、勝ち誇った表情で、吾輩の腹の上に乗っかり、ミャオ〜、ミャオ〜! と鳴くでは無いか。


 その姿はまさに珍妙である。しかし、その勝ち誇った表情は何処か面白く、吾輩の心を温かくしてくれる。吾輩の口元は自然と綻び、笑みが浮かび上がるのが分かった。


 参った、参った。元気なのは良い事かも知れぬな。吾輩は、猫との追いかけっこに潔く負けを認め、優しくその頬を撫でてやると、とても嬉しそうに喉を鳴らしながら目を細めてくるのである。


 本当に猫というものは不思議な生き物である。

次の更新は10月30日の20:20なのである!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ