7話:吾輩はおっさんである、猫の名前はまだ無い。
あれから、猫の名前を考えてみたのだが、吾輩には“ねーみんぐせんす”というものが皆無らしい。
おばはんに名前の案を伝えたところ、何が面白いのか笑われてしまったのである。
付けようとしていた名前だが、猫の容姿が“サビ猫”という毛色らしく、黒に赤茶のような色が混じった陳腐な色味をしている。
太陽光に当たると、その毛色がべっこう飴のような色味に見えることから、べっ公かさび公と付けようと思ったのだが、何がおかしかったのだろうか。甚だ疑問である。
まあ、そんなこともあって、未だに猫の名前は決まっておらぬ。
参った、参った。
猫の名前だけでこれほどまでに悩まされ、夜しか眠れぬ日が来るとは、昔の吾輩からは想像できぬものである。
きっと、今の吾輩を見れば、お前は猫などという下賎な生き物にしか相手にされぬのかと腹を抱えて笑うであろう。
それはそれで良いのかもしれぬが、若かりし頃の吾輩は、こんな心温まる日が訪れるなど、夢にも思わなかったであろう。そう思うと、人生とはいかに不確定な要素が多いのか、身に染みて思い知らされるのである。
参った、参った。
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