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4話:猫は時に人を選ぶのである


 はてさて、近所のおばはんは吾輩を叱りながらも“動物病院”なる場所で、適切な処置を施して貰ったお陰か、何とか猫は一命を取り留めたようだ。


 念の為、数日入院とやらをすることになった。


 これは、良かったというのだろうか。いや、吾輩のようなただのおっさんに、このような生命を育むなど到底無理な話ではなかろうか? ここは、おばはんのような知識ある者に任せる。というのが一番、この猫にとって幸せなのやも知れぬ。


 弱々しくも懸命に生きる猫を見て、吾輩はそう悟りを得た。


 そこでおばはんに、猫を託そうと話を通し、おばはんも快く猫の引き取り手になってくれると申してくれたのだ。


 これは良かった、良かった。


 が、どこか心が寒いのである。たった一晩、住処を与えただけだというのに、どうしてこうも心が寒くなるのか?


 猫というものは、非常に分からぬ生き物である。これは参った、参った。お手上げである。


 まあ、吾輩と暮らすより、良い生活を遅れるであろう。猫よ、半日限りの逢瀬ではあったが、達者で暮らすのだぞ。


 そう心中に落とし、動物病院を後にしようとしたところ、急に猫が陳腐な行動に出たのだ。獣医の腕から抜け出し、おばはんの足元を潜り抜け、覚束ぬ足取りで吾輩の元へミャオ〜、ミャオ〜! とやってくるではないか。


 どうしたというのだ? お前には、おばはんという新たな家族ができたではないか。そう思うが、吾輩には猫の言葉は何一つ分からぬ。


 ミャオ〜、ミャオ〜! と懸命に何かを伝えているのは理解できるが、何を言っているのかまでは理解出来ぬ。


 これは参った、参った。


 そんな猫を見てか、おばはんは何故かこの猫は吾輩が見るべきだ、吾輩に恩を感じているのだと申し始めた。


 猫が人間に恩を感じるなどあるものか。そう思うが、おばはんに説得され、吾輩はこの陳腐な猫を、家族に迎えることに決めたのである。

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