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2話:歯もはえぬ猫に切り身は無意味である。
はてさて、猫を拾ってまいったは良いが、猫とはまことおかしな生き物が故、勝手が全く分からぬ。
何を食べるのか、何を飲むのか、何も分からぬ。まあ、人間が食べる物ならなんでも食えるだろうと、魚の切り身と牛乳を与えてみた。
だがしかし、魚の切り身に興味を示し、はむのだが、歯がないのか一向に切り身が減らぬ。
参った、参った。どうすれば良いのか?
時刻は既に二十一時を過ぎている。これでは、誰かに聞くこともままならぬ。猫もそれを悟ったのか、切り身を捨て今度は牛乳を飲み始めた。
その飲みっぷりは、かなり豪快なもので、どれほど腹を空かせていたのか伺える。
美味かろ、美味かろう。ハッ、いけぬ、いけぬ。そんな飲みっぷりを見せられれば、吾輩まで口元が緩んでしまうでは無いか。
男たるもの、安易に口元を緩ませてはいけぬのだ。だが、この猫を見るとどうも節操が保てぬものだ。
なんという魔性さであろうか。こやつはやはり猫ではなく、もしかすると妖やも知れぬ。
取り敢えず、夜も遅い。猫のことは明日にまわし、今日は就寝するとしよう。