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/// 29.魔の森、救出大作戦

まったりと何もない護衛任務で学園までの道を行く一行。馬車の中ではそろそろ知っている物語が尽きそうになっているサイコが四苦八苦しているが、おおむね順調である。


まあ、やってやりますよーっと。



今日は依頼も9日目、旅のはじめからということであればも7日目である。朝食を終えた一行は馬車でゆっくりと進む。今は『最後の一葉』の一般的なものを適当にアレンジして簡潔にまとめた話を即興で話していた。あの葉が落ちたら死ぬということに対して、呪術や古代魔法、幻術系ではないか?と失意エイルとカトレアお嬢様が問答をしたり、葉を描くところでは鑑定ですぐにばれる、いや強い偽証魔法を付与したらなんとか、いやいや、そもそも葉が落ちないように保存の魔方陣を裏面にとか、実は知っていたけど心優しい少女は・・・とか・・・。とうやら『悲しくも美しい物語』といった感動はまったく生まれなかったようだ。


そんな中、何やら近くの森の方から、ガタイの良い男たちがこちらに向かって走ってきていた。


馬車を止め、一応は赤い盾の面々が馬車を降り警戒する。サイコも(なら)って降りてその列に加わる・・・が、その冒険者と思われる二人はからに負傷をして血を流していたため、とりあえず危険はないだろうと警戒を解く。男たちは警戒が解かれたことに安堵して、その場に座り込むと息を整えてから回復魔法で自らの傷を癒していった。


「どうした?かなりのけがを負ったようだが」


「す・・・すいやせん!闇の森で魔物に囲まれてしまって・・・馬車が通るのを見かけたものですから・・・」


アレクの質問に答える太めのマッチョ。


「闇の森は立ち入り禁止だろうに・・・なんでまたバカなことを・・・」


「あ・・・その、そちらもでしょうが、俺たちも護衛任務で、その・・・護衛対象が記念にと森に・・・」


その返答を聞いて「はぁ」と深くため息をつくアレク。他の面々も同じような表情であった。


「闇の森は昔から魔素の湧き出る地点じゃからの。遺跡にならんのが不思議なぐらいじゃが、その分、強い魔物がいるため結界が張られているのじゃ。魔素が乱れていて転移もできんからのぉ」


ウィンさんは『よく分かっていない』といった表情のサイコ向けに説明する。


「・・・で、今どんな状況だ」


「俺は『七つの牙』のリーダー、ネルソン。こっちがノイアー。森の中には護衛対象が2人、仲間が魔術師とシーフ、結界を張って馬車内にこもってるが長くはもちそうもない・・・ゴリラリラが三匹と、たぶん・・・進化済みのゴリラリラリラが一匹・・・」


「どうする・・・それだと俺らではちょっと難しいな・・・サイコだったらなんとかなりそうだが・・・エイル様に頼るわけにもいかんしな・・・」


そのゴリラリラリラという名前も気にはなるが、アレクの「サイコだったら」という言葉に、この世界に来て初めての高揚感をおぼえ鼻息を荒くする。


「私で役に立てるなら!行きたいです!」


「まあ、エイル様の許可がなけりゃだがな」


「だめじゃぁー危険なのじゃー!サイコが死んだらどうするんじゃぁー」


行く気満々で意気込むサイコに、冷静なアレク、縋り付いて泣き崩れるウィン。そんな中、ちらりと場所の方を見る。


「行っても良いですよ。ここは私が見ていますので」


笑顔で答えるエイルであった。


「では・・・行きます!」


そういうと、ネルソンとノイアーは案内すると付き添いを志願した。この二人は一応、アレクたちよりはレベルが高いということで他の面々はお留守番となった。




森に近づくとなんだか邪気のようなものを放っている感じがして、少しだけ足がすくむ。意を決して中に入ると少し冷たいような違和感が体を通っていった。


「これで結界の中に入ったので、転移で外にはでれません。森の中のでの転移移動についても同様です・・・」


そう言われて逃げ場をなくしたような感じがしたが、日々の訓練でつけた自信に少しだけ後押しされて先を進む。少し進むと遠目に馬車を取り囲むデカイゴリラの群れが見えた。小さいといっても3メートル以上はある三匹が馬車を守る結界をガシガシと音を立てて殴っている。後ろには4メートルぐらいであろう、一層でかく赤黒い毛が生えているゴリラが・・・あれが進化したというゴリラリラリラなのであろう・・・しかし名前はなんとかならんかな・・・


鑑定を使い状況を確認する。訓練所ではレベル60のオークは瞬殺であった。だが3体いるゴリラリラは80ちょっと。ゴリラリラリラにいたってはレベル100、初の同格対決である。まあスキルを多数付与している分、こちらが有利なのだが多少の不安はないわけではない・・・


「もう結界がやばそうです・・・」


そう言われるか言われないかの間に、意を決したサイコは一気に距離を詰め、鍛えぬいた光牙(こうが)を一番手前のゴリラリラの首筋にたたきつけた。さすがに一撃のもとに首が切り落とされるなんてことはなかったが、それなりに首筋にダメージを負わせることができた。3匹を相手に難なく交わしながらの攻撃を繰り返すと、急に危険察知が警鐘をならすため、その危険と感じる背後に振り返りながら距離をとる。視界には先ほどまで動きのなかったゴリラリラリラの巨体がこちらに飛び込んでくるのが見えた。


ドシンという重厚な音と共に、森の地面が大きくえぐれる・・・かなりのパワーの上、中々なスピードだった。反応が遅れていたら致命傷になったかもしれない。それでも心を折ることなく反撃に転じる。最恐執事との訓練の賜物であろう。


その巨体の首を狙い何度も切りつける。途中振るわれるその両手に若干の恐怖を感じながらも、なんとか対応できているのだから転生したてのことを思えば上出来だと感じていた。その戦いが始まると周りの3匹は距離をとると黙って見守っていた。10分ほどの攻防でゴリラリラリラが「ぐぐ」と小さく唸りながら膝をつく。そしてそのまま前のめりに倒れていく様を見ると、様子をうかがっていた3匹のゴリラリラは我先にと逃げていった。


「おお」という周りの声に気をよくしながら、討伐したゴリラリラリラを無限収納に入れる。無事に入ったということはその命がもう尽きているということの証明であった。そして本当であれば、助けられた面々と喜びを分かち合いたいところではあるが、ここにはまだまだ強い魔物が群生しているということもあり、ネルソンたちと一緒に馬車を引き連れて森を抜けるよう急ぐ。なんとか無事この森を抜けられそうだ・・・


「安堵した時が一番危険なものですよ」


背後から声がして振り向くと、そこにはぎょろりとした大鷲のような鳥型の魔獣の首をがっちりつかんでほほ笑む執事エイルと、その肩に担がれたドヤ顔のカトレアお嬢様の姿が目に映る・・・


「ほんとダメダメね!」


カトレアお嬢様の得意げな言葉がつづいた・・・




+ネルソン

種族 犬獣人 / 年齢 33 / 性別 ♂

冒険者パーティ『七つの牙』のリーダーで戦士 がっちりマッチョ体系


+ノイアー

種族 犬獣人 / 年齢 32 / 性別 ♂

『七つの牙』戦士 ひきしまった細マッチョ


お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

期待してる! 早く続きを! 読んでやってもいいよ!


そんな方はブクマや下の☆を押していただけるうれしいです!

もちろんコメントやレビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。


ゆっくりまったり更新の『内気な聖女アンジェリカは目立ちたくない』の方もどうぞよろしくです。


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