宿(ヤトリ)
―――何をやっても上手くいかない
―――何をしても評価されない
―――もしかして自分のやってきた事は全て無駄だったのか?
―――今までの努力は
―――今までの苦労は
気疲れと会社のストレスで
―――もう、どうにかなりそうだ
彼女からも見放された
家族には恥ずかしくて言えない―――
もう、どうしようもない人生だ―――
「あの、一言すみません
あなた――――――後悔に取り憑かれていますよ」
「え―――」
心に取り憑き、取り憑いた人間を支配する―――
それは心の中に取り憑くモノノフ
後悔、罪悪感、不安、焦燥感、嫉妬
それは宿った心に寄生する、目には見えない妖―――宿
ひょんなことから良き心の雨宮恵に宿った疑念の宿―――恵に棍と名付けられ、そして恵に人間の悪き心の宿に、鉄槌をくだすように伝え―――
「あのですね、後悔しても後先立たぬということわざがあるでしょう、それと同じであなたがどう思ったところで何か変わることはないんですつまり、考えても無駄な事は放棄してしまった方が楽にはなれると思うんですよね、その方が心への負担も減って宿も憑くこともないと考えていますがあなたはその事についてどう思います?
―――ところで、あなた今現在、何に後悔してるんです?
何でもいいんですけど――とりあえず、その宿は、わたしが砕きます」
まくし立てるような、こんなヒロインがいてもいい、と思う…?