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<キール>

 槍も剣もイリーナには届かなかった。馬上から消えていたのだ。馬から落ちたのかと下を見たが、いない。イリーナは無事なのだろうか?


「姫に何をする!」


近衛隊が叫んで、一気に野盗に襲いかかった。頭領のいなくなった野盗は烏合の衆だった。野盗は近衛隊に任せ、焦って、辺りを見回すがどこにも見当たらない。



 ごくごく小さな声が自分の名前を呼んでいるのが聞こえた。頭上の木を見上げると、魔物になったイリーナが窮屈そうに高い木の枝の間に身を隠している。


「キール、お願い! 木に登って、元の姿に戻して!」


猛っている近衛隊をおいて、こっそりと木登りを始めた。なんとか、イリーナのいる近くまで登ることが出来た。体の重い私が足を乗せる度に、枝がみしみしと音を立てるため、冷や汗をかいた。魔物になったイリーナは、私よりも大きい筈なのだが、不思議な事に彼女を乗せた枝はみしりとも音を立てない。


「イリーナ、これ以上登れないから足先を」


上からそろりと下りてきた真っ黒な鉤爪に指を伸ばした。鉤爪が淡い桃色の貝殻の様な爪に変わるのを見届けてから、急いで木から降りた。


「キール、有難う。羽だけ出すつもりが、血の匂いで……」


「血の匂い嗅いでも姿を変化させない訓練が必要だな。それから、その状況で一人で元に戻れるようにも」


 イリーナは器用に木の上で服を身につけたようで、無事に木から降りて来た。あたりには血の匂いが立ち込めている為、木から降りたイリーナを前に乗せた。触れていないと、またすぐに魔物になってしまいそうだった。それでも、アキムたちに揶揄われるのが嫌だったため、少し体を離した。


 彼女が魔物になって剣先を逃れていなかったらと考えると総毛立つ。数名でも、隊員を残しておくべきだった。


「無事で良かった」


 改めて口にすると、キョトンとした顔で見上げて来た。思わず抱きしめてしまいそうになった途端、野盗を片付けた近衛隊が馬から飛び降り、片膝をついた。


「姫を危険な目に合わせてしまい、申し訳ございません!」


「私は大丈夫です。怪我をした人はいますか。怪我をしていない者は、商人たちを見てあげて下さい。怪我をしている人がいるかもしれません」


近衛隊が落ちた荷や、崩れた荷をまとめたり、怪我人の手当てをし、街まで一緒に付き添った。

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