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<キール>

「ねぇ、いっそ王を殺して、国を奪わない?」


ラドミラのまとわりつく様な声よりも、その内容に驚いて思わず手を離してしまった。


「トロフィム王は実の父親ではないのか?」


「良いのよ、別に。貴方のためなら。私と一緒にこの国を治めない? バルテルク侯爵にも飽き飽きして来た事だし……」


「報酬は?」


「国と、王位と私」


 内乱が起こりつつあるオルロフ王国に手を出させない為に、トロフィムを殺してこの国を混乱に陥れるのは良い考えかもしれない。だが、その前に石を取り戻さなくては。そっとラドミラの片腕を持ち上げ、自分の肩に当てる。心持ち優しく問う。


「エメラルドはどこにある?」


「明日の朝、教えてあげる」


ラドミラの肘を抱き抱え、肘を外側にし引き寄せた。


「な、何をするの? 離しなさい」


肘の骨が軋む。やっと、自分がどういう状況なのか分かったラドミラが声を上げた。


「エメラルドの在処を教えれば、すぐにでも離そう」


「大声を出すわよ」


すかさず、ナプキンをラドミラの口に突っ込んだ。このまま力を入れれば、肘は簡単に折れる。痛みと屈辱でラドミラの頬は紅潮し、目を白黒させている。思わず、笑いたくなったが、笑っている場合ではないことを思い出した。


ラドミラの反対側の腕が上がった。振り回すのかと思い、手首を掴んだ。見るとあのエメラルドが指輪になって嵌っていた。



 真夜中、人気のない城の中を仔狼の姿で王の寝室を目指して走った。トロフィムは女癖が悪い故、王妃と寝室を別にしている。寝室を別にしている理由は、気に入った女性を寝室に入れるためだ。隣に王妃の寝室があっても、王妃が隣にさえいなければ良いらしい。


 昼間チラッと見たが、優しそうで美しい王妃を蔑ろにするなんて、考えられないなと思ったが他の夫婦の話だ、関係ない。あの王妃を巻き込まなくて済むのなら、寝室が別で良かったとさえ思う。


 誰もいないのを確かめ、人に戻り王の寝室の扉を開け、すぐに元の大きさの狼に戻って室内に侵入する。あまりにも易々と入り込めた為、部屋を間違えたのかと思ったくらいだ。しかし、噂に聞く通り普通の倍はありそうな巨大な寝台があったので、王の寝室だと確信した。


 そもそも、フェオドラ様の暗殺を指示したのはトロフィム王だ。ならば、こちらもお返しをするまで。起こさぬ様に気をつけて、寝台に飛び乗った。着地した部分の寝台が沈み込み、

振動でトロフィムが驚いて、声を上げようとした為、一噛みでの喉ぶえを食いちぎった。何が起こったのかわからないと言う顔のまま、血飛沫を天蓋まで吹きあげながら、隣国の王は絶命した。


 そのまま、小姓部屋で待つイリーナの元へ走る。

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