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<イリーナ>

「人に戻ってラドミラに聞くしかなさそうだね」


キールが溜息をつきながら諭すように言った。それしかない事は分かっていたけれど、


「嫌よ」


口が勝手に動いていた。


「他に方法が無いのだから、仕方がない」


「彼女はやたらにキールに触れるから、嫌」


キールは何故か、笑いを堪えている。何がおかしいのだろう。ベタベタされるのが嬉しいのだろうか?


「触られても、減るものではないよ」


思わず、ムッとして言ってしまった。


「減っても減らなくても、兄様が他の人と親密にしすぎるのは嫌なの!」


キールは私を抱き寄せて、囁いた。


「イリーナを危ない目に合わせたくなかったから、一人で来たんだよ。私は余計なことを言ってしまったようだ。でも、おかげで、駄々をこねる可愛いイリーナを見る事ができて、嬉しいね。石は絶対に取り戻すから、余計な心配はしないで、夕方まで小姓部屋で大人しくしておいで。約束できるね?」


「私は、もう、子供じゃない」


「充分、子供だよ」


頭を撫でられた。大人の女性はきっと、頭なんて撫でられない。いつまでも、子供でお荷物でいるのは嫌だった。だから、一人でデルベルグ城まで来たというのに。

ラドミラみたいな大人の女性の方がいいの? と聞きたかったが、聞けなかった。もし、そうだと答えられたら、どうしたら良いのかわからない。キールが側にいてくれるのは、許婚だから? お母様の命令? 私が魔物だから? 


「可憐な姫に頼むのは申し訳ないが、私のお昼を持って来ていただけないでしょうか? できれば、軽食ではなく、しっかりした肉を頂けると大変ありがたいのですが」


キールが冗談口調で言った。いつの間にかお昼になっていた。持ってきたお昼を一緒に食べた。


 ラドミラは昨日来たばかりのはずなのに、何日も滞在しているのかと思うほど、色々な雑多な物があちこちに散らばっている。目当てのものが見つからないまま、時間だけが過ぎていく。



 夕方になり、ラドミラが部屋の中に入っていくのを、隠れてこっそり見ていることしか出来なかった。キールが人に戻るつもりなのは分かっていた。そうしなければ、石は見つからないことも分かっていた。それでも、ラドミラの前で人に戻ってほしくなかった。

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