<キール>
甘えてくるイリーナは可愛くて、つい甘やかしてしまいそうになる。ルカが入って来なければ、情熱に負けてしまっていたかもしれない。危なかった……。
ベッドから上目遣いで見上げてくるイリーナは、いつの間にか可愛らしさを通り越し、ほんのりと色香が漂っていて、戸惑うばかりだ。本人に自覚はないのだろうけれど。
イリーナがただの貴族の娘であれば、甘やかしてしまっても良かったが、彼女は女王になるべく生まれて来た。そして、彼女にはまだ話していない事がある。それを話す為にも、もっと、しっかりしてもらわなければならない。
そうで無い事を祈るが、フェオドラ様が亡くなったのが事実であれば、イリーナは国に戻ったら、国をでた理由を説明し、正当な王位継承者だと言う事を示して、国を統べなければならない。今のように甘えていては、ソフィアを女王にしようとする勢力に、相応しく無いと引き摺り下ろされてしまうだろう。オルロフ王家内がイリーナ派とソフィア派に別れて争えば、周りの国に攻める口実を与えてしまう。
代替わりの時期に、真っ先にゲストルク家は小手調べとばかりに攻めてくるに違いない。そうなれば、私は兵を率いて迎え撃たねばならず、その間、イリーナの側にいる事はできない。
私が触れていると、イリーナは姿を変えることが出来なかった。けれど、それでは万が一、私の意識がない状態でイリーナと一緒に縛り付けられでもした場合、助かる方法がなくなる。
「イリーナ、どういう風に体が変わっていくか、意識してご覧」
「キールはどうやって訓練したの?」
「イリーナのお祖父様であるイヴァン様から直接教わった」
「お祖母様は私が十歳の時に亡くなってしまったから、何も教わることが出来なかったのね……お祖父様も後を追う様に亡くなってしまったし……」
「……やはり、ここで待っている? 明日、私が一走りしてラドミラの所から石を取り返してこようか?」




