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<イリーナ>

「何のこと?」


 とぼけて見せたが、フリードマンに、背に黒い羽があったのをはっきりと見られてしまった。フリードマンが乱暴に肩を掴んだ。指が肩に食い込む。


「もう一度見せるんだ」


「何を、言っているの?」


「さっき、黒い羽が背中にあっただろ? 黒い翼は堕天使か悪魔と決まっている。その割には、あんたは見た目が妖精のように清らかだがな。悪魔って奴はもしかしたら、見た目と正反対なのか? その姿で悪魔の様に誘惑するのか?」


「痛い! 離して!!」


足元でキールが吠えている。キールがフリードマンの足首を噛んだ。フリードマンは慌てて、足を振ってキールを振り払った。キールは宙に飛ばされた。猫のように回転して見事に着地した所を、フリードマンが走って行き蹴った。キールは木に当たり、蹲った。いつものキールの大きさであれば、こんな風に蹴られる事はなかったのに。


「キール!!」


私はキールの所へ駆け出そうとした腕を掴まれ、転んだ。腕を掴んでいたフリードマンがはずみで覆いかぶさる様に倒れてきた。抑える間も無く、魔物になっていた。フリードマンは突然、腕の下に現れた魔物を見て慌てて飛び下がり、尻餅をついた。


「あ、悪魔だ……」


フリードマンは逃げようとしたが腰が抜けてしまったのか、立ち上がれずにそのまま後ろにずりずり退がって逃げる。私は無意識に鉤爪を振るった。鉤爪が空を切った。すんでのところで逃したが、フリードマンの頬から血が滴った。血の匂いが、私の人としての理性を奪った。



「イリーナ!!」


遠くからルカに名前を呼ばれて、気がつくと、足元にフリードマンだった肉の塊が転がっていた。私は慌てて足元に落ちている服を掴み、草叢に飛び込んで身を隠し、キールが蹲っている木の所へと急いだ。キールに触れ、慌てて服を被る。キールを抱え、草叢の中をフリードマンがいた所から離れるように、教会の方へ向かった。草叢から出たところで、ルカに見つかった。

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