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<イリーナ>
驚いた。兄様が喉が渇いたと言うので、お水をもらいに台所に来た。頭髪を剃っている人は、ヴォルコフ公爵と同じくらいかと思っていたからだ。
「俺なんて、こう見えて十九だ」
さっき兄様を外に放り出そうとした髭面の男が言った。
「兄様は若く見えるのかしら……」
思わず、抱いている小狼の兄様を見下ろす。兄様は何か言いたそうだったが、犬はしゃべらないものと決まっているので、ムッとしたように黙っていた。その後も、何か考え事をしているようで、兄様は黙っていた。
「夜になったらアキムと連絡を取る為、ここを離れるけれど、何か聞いておきたいことはあるかな?」
「お母様の様子を聞けたら……」
兄様は頷いた。
「少し体力を温存するために、眠るから、何かあったらすぐに起こして」
兄様がベッドの隅にこじんまりと丸まったので、抱き上げて膝に乗せた。少しの間、兄様は居心地悪そうに、もぞもぞしていたが、そのうちにこてんと眠ってしまった。
グスターフがオルロフ国へ様子を見に出かける為、扉を開けた途端に、兄様は飛び出して行った。
「お姫さん、犬が逃げちまいましたよ? 追いかけますか?」
「そのうち戻って来たら、開けてあげてね。外に出たかっただけだと思から」
「あぁ、小便ですね?」




