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<ルカ>

 背が高く髭を生やしたフリードマン、頭髪を剃っているアーダム、そして中肉中背で人混みに紛れたらわからないであろうグスターフの三人は、ゲストルク国から僕の仕事がどうなっているのかを確認しにきていた。


 ツアーモック城に潜り込ませるところまでは、この三人が手を貸してくれた。しかし、半年以上経ち、僕からの連絡が途絶えてしまった為、様子を見に中継地まで来たところで、ばったり出くわしたのだった。


 イリーナを連れ出せたことは王には内緒にしておきたかった。しかし、グスターフから「お前誰だ?」と、問われたイリーナが身分を明かしてしまった為、これからどうするか、話し合わなければならなくなった。僕としては、女王の暗殺はほぼ成功したようなものなので、イリーナを連れて田舎でひっそりと暮らそうと思っていたのに。


 そして、あの犬。いつの間にか消えたと思ったら、また現れた。小さいくせにイリーナに近づこうとする度に、唸って、牙を剥く。小さくても、噛まれたら痛いだろうし、彼女の前で、彼女の犬に手を噛まれるのは嫌だった。

イリーナはあの犬を可愛がって手放さないから、なかなかイリーナに近づけない。せっかく、イリーナを連れ出せたのに。何にも縛られず、二人で暮らせると思っていたのに、犬と三人のせいで、計画が狂ってしまった


 グスターフがオルロフ国へ、女王が死んだかどうか確かめに行くことになった。フリードマンとアーダムはグスターフが戻るまで、僕たちを見張るつもりなのだ。三人とも僕が嘘をついていないか、調査してからでないと国には戻れないと言った。


 僕がイリーナを城から連れ出した事で、オルロフ国相手に大きな切り札になるとグスターフは踏んでいる様だった。もしならなかったとしても、女好きで有名なトロフィム王は妖精のようなイリーナを気にいるだろう。たとえ、女王暗殺が失敗していたとしても、王女を献上すれば許されるだろう、と言うのだ。



「駄目だ、あのお姫さん、犬を手放さねぇ」


フリードマンがぶつぶつ言いながら、台所に戻ってきた。


「なんだ、お姫様のペットを取り上げようとしていたのか?」


アーダムが非難する様にフリードマンを見た。アーダムは見かけによらず、優しいのかもしれない。


「違う。狼の子だと思ったんだ。でも鳴き声も、仕草も犬みてぇだから、きっとお姫さんの言うとおり犬なんだろう。それに……犬に頬擦りしている姿が、なんだか可愛くて、取り上げるのが可哀想になっちまった……泣きそうになっているのを見たら、物凄く悪いことをしている様な気分になっちまった……」


「確かに、あのお姫様、妖精のように可愛らしいからな」


アーダムが頬杖をついてうっとりと言った。僕はギョッとした。イリーナが王の所ではなく、こいつらに連れて行かれてしまうかもしれない可能性も出てきた。


「どれ、俺も飯でも持って、お姫様のご機嫌でも伺いに行くか」


アーダムがのっそり立ち上がった。


「僕が行く。イリーナはお姫様なんだ。そんな強面のおじさんが部屋に行ったら、怯えて泣き出してしまうに決まってるじゃないか」


「ルカ、お前ちょっとくらい顔がいいからって、失礼だな。俺はおじさんじゃない。まだ二十歳だ」


「え!?」

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