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<ルカ>

 父ボリスはイリーナのいる城を夜中に離れるわけを教えてはくれなかったが、なんとなく気がついてはいた。父さんはイリーナの国にとってあまり良くない事をしようとしていると。


「ルカ、どうしてイリーナ姫を呼んでこなかったのだ」


「姫が夜は外に出たくないって、怖がって泣いたから……」


「泣かれてしまったのでは、仕方がないな。騒がれなかっただけ良かったか」


 僕は初めて父さんに嘘をついた。イリーナは泣いたりしなかった。父さんがイリーナを誘拐しようとしている事に気がついたから、嘘をついた。

生まれて初めて会った、可愛らしいお姫様。僕の国のお姫様たちは、高慢で意地悪で、可愛らしさのかけらも無かった。

 それに比べて、イリーナは少しうねりのある銀の髪を持つ妖精だった。僕は、彼女をひとめ見た時から、恋に落ちてしまった。できればこの城にもっと留まって、彼女の近くに居たかった。彼女を危険な目に合わせる手伝いなどしたくなかった。だから、大事なものを預かったことも、父に黙っていた。いつか、きっとこの指輪を返しに来ようと、誓った。


 父さんがそれ以上聞いてくる事はなかった。生きて逃げることの方が大事だったのだろう。相手は兵隊を差し向けてくるはずだ。オルロフ軍は狙った獲物は逃さないと言われている。父さんはゲストルク国の王から何かを探るように、依頼されてこの国に来た。だが結局、何も掴めなかったのかもしれない。だから、代わりにイリーナを攫おうと考えたのだろう。掴む前に、疑われた事に気づき、逃げ出したのだろう。


 父さんはゲストルク国に戻る前に、僕の眼の前で殺された。殺したのは追って来たオルロフ国の兵士だ。父さんは「お前が、母さんを代わりに守れ」と言った。兵士は子供である僕を見逃した。いつか、僕を見逃したことを後悔させてやる。でも、それよりも、父さんの代わりに母さんを守らなければ。

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