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<イリーナ>

「退かないと、彼女を刺す。この剣にも毒が塗ってある。もう暫く助けを呼ばないように。追いかけてくるのが分かったら、即座に彼女を刺す」


お母様は、よろめく様に退いた。お姉様は後退りして道を開けた。


「イリーナ!!」


背後でお母様が叫ぶ声が聞こえた。お姉様が叫んでいるのが聞こえた。


「お母様!!」


「イリーナ、走るんだ」


ルカに耳打ちされ、引きずられる様に地下から出た。お母様が心配だったが、もう既に日が落ちかかっている。体の中を猛り狂い始めた血は、もう止まらない。あの姿を人に見られたくなかった。私はルカについて必死で走りながら、全身全霊をかけて、自分を抑え込んだ。ルカは馬を盗んで森の中へと走った。


 もう限界だった。

私はルカを突き飛ばして、崖下へ飛び降りた。真っ暗な中、闇色の翼が開き、谷底を滑空し着地した。背後にルカの声を聞いた気がした。魔物姿の私を襲う生き物はいない。朝まで、魔物のまま身を隠すしかなかった。朝になったら、城まで戻ろう、そう考えたが、一睡もできなかった。


 しかし、朝になり明るくなると、探しに来たルカに見つかってしまった。いつも兄様を見ていたから、飛び降りた際に、服は全て握っていた為、ルカに見つかる前に服を着る事ができた。

ルカは私が、慣れない馬に乗った為、よろけて馬から落ちたと思ったようで、ずっと探していたようだった。私を見つけ、ホッとした様に駆け寄り、目に涙を浮かべて、「怪我はない?」と聞いた。ルカが泣きそうになっていた事に、驚いた。そんなに心配してくれるなんて、少しだけ嬉しかった。


 馬に乗ってフードを深く被り、隣国へ向かう街道に出た。街道とは言っても、ただ人が踏みしめた後のある山道だが、山中と比べると人の行き来があった。


「念願通り、城から出たよ、イリーナ。まだ必要であれば、もう一つの石が隠してあるところへ行こう。おばあさんの形見なんだよね? それとも、もう必要ない?」


ルカは前に乗っている私に聞いた。ルカの声は私を城の外へ連れ出すことに成功した事で、自信に満ち溢れたていている様に聞こえた。


でも、私は一刻も早く城に戻りたかった。


「ルカ、なんで、お母様を……。私は心配だから城に帰りたい」


「女王はイリーナを閉じ込めていたんだろ? それに、女王は、僕の父さんを殺したんだ。使うだけ使って、ボロ雑巾の様にね。僕は父さんの復讐と国の王様からの依頼を受けた。でも、イリーナに危害を加えるつもりはないから、安心して。十歳であの城を出た時に、父さんから、イリーナを連れてこいと言う命令にも、背いた。最初から、君だけは守るつもりだった」


「お母様は、ボリスを殺していないと言ったわ」


「分かるもんか……」


そう答えたルカの声は先ほどと比べて力がなかった。使うだけ、使って? ボリスはただの家庭教師だったはず。


「どう言うこと?」


「まずは、隣国ゲストルクに入らないと。前回、父さんは国境を越えられずに、目の前で殺されれてしまった……」


「ボリスの事はなんと言ったら良いのか、わからない……でも、私は隣国なんて、行きたくない」


馬で追い抜いていく数人の会話が一瞬耳に入る。


「オルロフ国の姫が地下にいた囚人と一緒に逃亡だと。捕まえたら、きっと賞金が出るぞ」


「姫は、見つかったら処刑だな、可哀想に」


「なんで処刑なんだ?」


「女王が決めた婚約者を裏切ったんだとさ。命に背いた事になるだろ? しかも、囚人を逃した上にその囚人と手を取り合って脱走したんだってさ」

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