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<イリーナ>

 身体の中のマグマの様な泥々したものが、背中から吹き出すのを感じた。最初の時は転げ回るほど痛くて、背中から切り裂かれて死ぬのではないかと思ったけれど、今は吹き出す勢いに身を任せる事が気持ち良かった。


そして、いつもはこの後、朝まで人としての意識がない。けれど、今はルカの持つ石が同じ部屋にある事と、兄様がいる事で魔物になっても、人としての意識があった。


 兄様が姿見を向けてきた。背中から闇夜のような羽が生える。身体中が同じ色の羽毛で覆われ、鋭い嘴と鉤爪が映っていた。私は初めて自分の夜の姿を見た。


 映っている魔物は醜かった。これが、私……。人が近くにいれば、食い殺してしまう魔物。自分の手を見ると、真っ黒な羽毛に覆われた鋭い鉤爪が目に入った。腕が震える。これは、私では無い、そう思いたかった。しかし、見た目のショックよりも、心の奥底で、何かざわめいているこの気持ちの方が怖かった。抑え込まなければいけないと、本能が告げている。これ以上見ていたくなかった。それなのに兄様な平然としている。顔を背けようとする私に、兄様が淡々と言った。


「イリーナ、しっかり見るんだ。石がないと、人として生きていけない事を受け止めるんだ」


兄様の態度から、何度かこの姿を見て知っているのだという事に気がつき、さらに動揺してしまい、言葉が出てこなかった。けれど、この姿を見てなお、兄様は態度を変えない。暫くして十分だと思ったのか、兄様は姿見を移動させた。


「イリーナ、いつまでも夜になるとその姿では、ここから出られない事はわかるね?」


「兄様、もう十分! 早く戻して! お願い……」


悲鳴をあげてしゃがみ込んだ。不思議な事に、魔物になっても、声だけはそのままなのだった。

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