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<ルカ>

 僕は食事の盆を持って、地下牢の扉をノックし、中に声をかける。返事が返ってこなくても、毎回同じように声をかけた。


「お食事をお持ちしました。温かいうちにお召し上がり下さい」


 丁寧な声かけをするのには訳があった。毎回運ばれてくる食事は豪勢で、陶器の器に美しく盛られ、銀のフォークやナイフがトレイに乗っていた。中に居るのは、身分の高い人に違いない。地下室の住人は魔物だと密かに噂されている事も知っていたが、魔物にこんな豪勢な食事は出さない。

掃除をした時に思ったが、この地下室は、まるで、宮殿の部屋のうちの一部屋のように美しく整えられている。こことは別に、本物の地下牢がある。そこは僕の担当ではない。ここは地下室という名の、宮殿の一室だ。中にいるのはきっと事情のある貴人に違いない。探していた人がここにいると、直感が告げていた。



 食事を地下まで運んでくる運搬係は、半年以上勤めている僕に向かって聞いた。

「何か変なものを見たりしないか?」


「いいえ。余計な事に興味はないですよ。きちんと五年勤めれば、土地も年金も貰えるのですから、見ない方がいいに決まっています」


「ルークはしっかり者だな。お前なら、土地と年金を貰えそうだ。それに、万が一、何かに遭遇しても、その綺麗な顔を見たら、助けてくれるかもしれないな。頑張れよ」


食事を運んできてくれるエフセイには、興味がなさそうに答えておいたが、食事を運んだ後、こっそり中を覗こうと思った。中に入らなければ、危ないことは無いだろうと思ったのだ。

そろそろ、中の貴人も気が緩んで来ているはずだ。しかし、部屋は広く、テーブルなどの家具は扉から離れていて、食事を差し入れる為の小さい扉からは死角にある為、見えない事に気がついた。その上、中から黒いガラス扉を閉めて覗けないようにすることが出来る為、扉の外から貴人の姿を見る事はできない。


 確かめてみたかったけれど、掃除の度に、隣の部屋の扉を確認したが、きっちりと鍵がかかっていた。


 ある日、掃除を手早く終わらせ、夕方まで部屋に留まった。すぐに逃げ出せるように、扉の外に半分体を出して、すぐに外から鍵をかけることが出来るように、手には鍵を握りしめておいた。

隣の扉が、軋んだ音を立ててゆっくりと開いた。

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