第三話
四話中三話目になります。
「ここが下界か」
「ここは、南大陸のプロスペリテ王国でございます」
プロスペリテ王国は南大陸一の大国で、最も長く繁栄を続けて来た国でもある。
周辺の町からだけでなく、他国からも訪れる者が後を絶たない。 その為、衛兵の数も多い。
「止まれ。 怪しいな、なんの目的で来た」
いきなり剣を向けてくる衛兵。
「商業ギルドへ登録に来ました」
「何をしている!」
体格の良い衛兵がやって来て、剣を収めさせる。
「この国の衛兵は怪しいと判断したら、切りかかる勢いで剣を向けてくるんですね」
「物騒で、野蛮な衛兵です」
「いきなり剣を抜くとは思わなかった。 私の新人教育不足だ、すまない」
誠意ある謝罪を聞くと、責める気にはならない。
ハルト達は通行税を払い、門を通り王都へ足を踏み入れた。
沢山の人が石畳を歩いている。
冒険者らしい武器を持つ者や、ローブを来た女性が屋台で買い物をしていたり、と様々だ。
ハルトを先頭にして、オルレガンとメルナが後に続く。
三人とも黒のローブを着て、衣服を隠している。
その姿に誰もが二度見する。 衛兵が怪しいと判断したのも頷ける。
盾が彫られた看板のある、建物に入る。
建物内には受付待ちの商人達が、キレイな列になっていた。
ハルト達は誰も並んでいない、新規登録の受付へ歩いた。
「すみません、登録したいんですが」
「かしこまりました。 ではこちらに必要事項をお書き下さい」
名前、登録時年齢、鑑定スキルの有無、自衛が出来るか、という項目があった。
記入を終え、魔力を流すことで登録が終了した。
受け取った商人カードが正常かどうかの確認も終えた。
そのまま隣の列に並ぶ。
隣は、土地を取り扱っている。 ハルト達の番になり前へ進んだ。
「土地を購入したいんですが」
「かしこまりました。 土地の希望条件はございますか?」
「出来れば、あまり人が来なさそうな場所はありますか」
「店を構えるのなら、大通りがオススメですが、その条件だと裏通りになります」
「それでお願いします。 ありますか?」
受付嬢はしばし考える。
この者達は何をする為に、土地を購入するのかを。
しばらく考えた後、条件に当てはまる土地を二件伝える。
「こちらの二件が希望条件になるかと思います。 一つは、裏町通り。 もう一つは、大通りから少し離れており、貴族エリアと平民エリアの境目辺りにあります。」
「オルレガン、見える?」
「少しお待ち下さい……ああ、見えます。 裏町通りは、いわゆるスラム街付近です」
「じゃあ、二件目でお願いします」
「か、かしこまりました。 少々お待ち下さい」
受付嬢はあえて、一件目の裏町通りの説明をしなかった。 最終的に判断するのは契約する本人であって、商業ギルドは支援に徹する。 その為、どう判断するのかを見るつもりだった。
驚いたのは、オルレガンと呼ばれた男性の言動だ。
多分あれはスキルだろう。 だが、離れた地点を見るスキルなど聞いたことがない。
「店の名前か……よし。 『カフェシュクル』だ」
「シュクル……ネーミングセンスないですね、マスター」
「「……」」
土地の購入代金を一括で払い、手続きを終えた。
遂に降りた下界!
世界の中に世界があるとはどういう状態なんでしょう……。
出ました、フランス語。
『シュクル フランス語』で検索されてしまうと、ネーミングセンスの無さが、バレます。