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49 : DAY43 思わぬ刺客

 

「そんな、馬鹿な……」


「うそ……?」


「んん~?」


 三者三様の驚きの声は、周りの観客が発するどよめきにかき消される。

 ”羽ばたく者たち”の試合を見ようと朝から王立競技場を訪れた私たち。

 そこで目撃したのは、信じられない光景だった。


 ”羽ばたく者たち”の対戦相手は、私たちがマークしている帝国出身の冒険者パーティ。

 ノノイの話では、”記録上存在しない”冒険者たちだ。


 ギルドの書庫を探してみたところ、彼らについての情報は得られなかったが、人間に憑依することが出来る純魔族の事が記された記録をいくつか見つけることが出来た。


 あの純魔族が仕掛けてくるなら、憑依などの精神支配術であろう。

 だが仮に純魔族が彼らに憑依していたとしても、ベースとなるのは被害者の肉体である。


 上位純魔族すら滅したことがあると噂のリオナールとリードに加え、世界最強の戦士への道を突き進んでいるステファンもいるのだ。

 純魔族とはいえ、自分で”しょせん上位存在の使い走り”と言っていたことを考えるとそこまで高位の存在ではないはずだ。


 ”羽ばたく者たち”相手では勝ち目はない……むしろ倒された後の動きに気を付けるべき。

 私はそう考えていたのだが……。



 ***  ***


「くっ……なんで当たらない!?」



 ブオンッ!


 ドラゴンすら両断するであろう、神速の太刀筋を繰り出すステファン。


 ガギンッ!



 だがその切っ先は相手の戦士を捉えることは無く、闘技場の床にキズを付けただけだった。

 相手の動きは特別早いわけでもなく、回避モーションも大きい。

 それなのに、まるで太刀筋を予測したかのように身をかわすのだ。


「リードさんっ!」


 だが、必要以上に身体を大きくよじったことで、大きな隙が生じた。

 それを見逃す”羽ばたく者たち”ではない。


「任せろ! カーズバインド!!」


 ビュンッ!

 バシイッ!


 闘技場の床から黒く光るツタのようなものが生え、相手の戦士に絡みつく。

 最上位の拘束魔法であり、相手の動きを押さえ込むだけではなく能力値すら低下させるリードの切り札だ。


 彼が対人戦でこの魔法を使うのは異例の事態だが、リードも対戦相手から漂う異様な雰囲気を察しているのであろう。

 その表情にはいつもの余裕が見て取れない。


「トドメはまかしとき! エキゾチック・ビッグバン!」


 ギュイイイイインッ……!


 七色の魔法力が、相手の戦士に収束していく。


「よし、決まったっ!」


 爆炎、閃光、氷雪……すべての攻撃魔法属性を兼ね備えた究極の攻撃魔法である。

 原理的に耐性を持ちえないリオナールの大技に、勝利を確信するステファン。


 相手パーティのかなめは、この戦士のはずだ。

 後衛のふたりは先ほどから中級クラスの補助魔法しか使ってこない。

 自分の剣なら一呼吸で打ち倒せる。


 そう判断したステファンは、広範囲を薙ぎ払う剣奥義を発動させるため、下腹部に気力を溜めるのだが……。



 にやり……



 後衛の一人、フードをかぶった女魔法使いが、僅かに笑みを浮かべた瞬間……!



 ブワアアアアアッ!



「んなっ!?」


 禍々しさすら感じる赤黒の波動が、女魔法使いを中心に巻き起こる。



 ぱんっ!



「……馬鹿なっ!?」


 どこか気の抜けた音が響いた後、自分が展開していたはずの魔法が掻き消えていることに気付いたリードが驚愕の叫び声を上げる。


「なんてことや……魔力を吸収? いや打ち消したんか!?」


「魔力だけじゃなく、こっちも!?」


 練っていたはずの気力がきれいさっぱり消えてしまった。

 エルダードラゴンの討伐の時です感じたことのない圧倒的な疲労がステファンを襲い……。


「くっ……しまった!?」



 バギッ……バギッ……バギッ!



 一瞬の茫然自失……そのわずかな隙を相手は見逃さなかった。


 戦士の当身と魔法使いの攻撃魔法を受け、羽ばたく者たちの3人はあっけなく意識を刈り取られたのだった。



 ***  ***


 さわざわざわ……


「ギルマネさん、さっきの……」


 あまりに予想外の結末に、競技場を埋め尽くした大観衆がどよめく中……ノノイが私にそっと耳打ちする。


「ああ。 あれは……」


 間違いない。

 村はずれの迷宮で感じた純魔族の魔力だ。

 しかし……。


 あれだけの力を放出したにもかかわらず、すでに私の魔眼ですら連中から”魔”の力を感じることが出来ない。

 純魔族が憑依しているなら、僅かに漏れだすその力を感じ取れるはずなのだ。


 それに。


「ん~? あのニンゲンさんの力……クレイのチートに似てるねっ!

 にしし~、ちょっと興味出てきた!」


 きらりと牙をのぞかせ、嬉しそうに笑うアル。

 サキュバスである彼女が”魔”の力を感じ取れないことも不思議だが、彼女の言う通りたった今あの女魔法使いが使った技……。


 私の右眼に宿る魔眼の力にそっくりだったのだ。


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