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13 : DAY13 ブラックギルドマネージャー、出張する

 

「いいじゃないかクレイ君!

 これほどの安い契約金でこき使える下請けを探してくるなんて」


「いったいどんな魔法を使ったのかね?」


「いえ……モニカ嬢は善良な方ですので。

 孤児院で鍛えている子の実地訓練にもなるからと」


「変わった奴だな。 まあ良いこれで……」


 珍しくパトリックさんが上機嫌だ。


 昨日、下町の孤児院で出会った”プライベート”冒険者のモニカ。

 孤児院の資金繰りに困っているようだったので、新たな下請け冒険者を探していた私は”竜の牙”との契約を打診。


 ”鑑定”前だったので、中の下くらいの契約金しか提示できなかったが、彼女は……。


「えええええええ!? こ、こんなに頂けるんですかっ!?」


「今までの2倍以上……いけませんいけません!

 7割ほど頂ければ十分に運営していけますのでっ!」


 大げさに驚いた彼女に契約金を”値切られて”しまった。

 正直びっくりである。


 さらにさらに、今朝”心眼”を用いて鑑定したところ、”知力A”、”体力C”、”剣技C+”、”回復術A+”!!


 ……正直うちのギルドでもトップ10に入る才能値である。

 市井にはまだ見ぬ才能が眠っているものだなぁ……改めて私は感心していた。


 そう言えは、アルも”面白い力を感じた”と言っていたな。


 当面は”試用期間”という事でこの契約金で”納得させられた”が、なるべく早く正規の金額にアップさせる予定である。

 パトリックさんに余計な横やりを入れられないようにしないと……。


 ”チュートリアル”代わりの比較的難易度の低いモンスター退治をお願いしておいたので、いくらパトリックさんでもいきなりヤバイ案件はやらせないはずだ。


 ギルドマスター室を辞すると、同い年だからなのか、事務員のセレナさんとオジサマ談議を繰り広げるモニカを横目に自分の執務室に戻るのだった。


 ……ふむ、妙齢の王都女子の間ではオジサマブームなのだろうか。

 まあ私にはアルが居てくれるから関係ないが。


 ……負け惜しみに聞こえたのなら気のせいだ。



 ***  ***


「研修を受けてこい……ですか?」


 その日の午後、一通りの業務を終えた私が休憩していると、いつものごとく困り顔のセレナさんが扉をノックする。

 彼女が持ってきたのは”協会本部”がある帝国で開かれる魔法関係の研修を受講するようにとの指令書だった。


「こんな時にいきなりなんで……」


 わずか数日間とはいえ、チーフマネージャーが不在となるとギルドの業務にも支障をきたす。

 一体どんなつもりで……。


「どうやら、新型魔法の見本市らしく……当ギルドへ移籍予定の”閃光のノノイ”も新型魔法の開発に関わっており、開発が遅れているせいでウチへの合流が遅れているそうです」

「……つまり、様子を見て協会に文句をつけてこい! ということでは?」


「おおお……」


 ”協会”にいい顔はするがクレームはいれたくない……上位にはゴマをすりまくるパトリックさんらしい采配だ。


「せっかくなんで、ゆっくりされてきたらどうですか?

 帝都では雪まつりがあるらしいですよ」


 ……セレナさんのいう事も、もっともだ。

 帝都は大陸でも有数の観光地であり、魔法研究の最先端。


 アルに帝都を見せてやるのもいいかもしれない。


 ”家族の同行を認める”、か……やけに気前のいい条件がパトリックさんの企みで付与されていたことに、その時の私は気付く事はなかった。


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