3話 イイコトナシ
「え!?なんか戻る方法ないの?一つぐらいあるでしょ!」
「いや、すまん。まじで知らん」
達也は困惑した顔でそう答える。
「こんな格好じゃ通報されて殺されるのがオチじゃん!元々死ぬ予定だったとはいえ、流石に化け物として死ぬのはいやだよ!」
「んー確かにその気持ちは分からんでもないが、まあ、尊厳破壊されるかされないかの違いだしいいだろ。大人しく殺されてくれ」
「いや良くないよ!もういい、こうなったら北極までにげてやる!」
こんな体じゃどうせ自殺すらまともにできない。ならいっそのこととことん逃げてやる!
「待て!今のは流石に冗談だ。戻すことは今のところ分からんけど、命が助かる方法はある!」
「え、それを早く言ってよ!」
「すまんすまん。で、結論から言うと、俺が今から黒獣署に連絡して、事情説明すりゃお前が狙われることはねえよ」
黒獣署。黒獣の駆除を行っている場所だ。その職員は黒獣駆除員と呼ばれ、日々黒獣と戦かっているらしい。
確かに黒獣署に事情を説明すれば、僕が駆除されることはないだろう。
「なーんだ、心配して損した」
僕は安心したので、体を地面に預けた。
「っても、その身体じゃまともに外歩けねえだろ。そこで一つ提案があるんだが、聞いてくれるか?」
彼はそう言うと、こちらに体を近づけてくる。
「なに?言ってみてよ」
「俺と一緒に黒獣駆除員にならないか?」
「え、黒獣駆除員?それって黒獣を殺す職業だよね?それ、確かめっちゃ危ない仕事じゃなかったっけ」
確か前にテレビで殉職しやすい職業ランキング1位として紹介されてたような…
「ああ…そうだ。でも給料はめちゃくちゃいいし、お前がそこで活躍して有名になれば、人間に戻れる方法も見つかるかもしれないぞ!」
「…あくまでそこは可能性があるだけなんだね。…まあ、元々死ぬ気だったし、人を助けて死ねるならいいかな」
どうせ他にやりたいこともないし…。
「お、今の発言はYESってことか?」
「そう捉えてもらって構わないよ。そうと決まればまだ死ぬわけにはいかないから、連絡頼むよ」
「おけ、連絡しとくわ」
達也はそう言うと、スマートフォンを取り出し、黒獣署に連絡をした。
一時間位たっただろうか。彼がスマートフォンをポケットにしまったのは。
その間に野次馬がちらほら戻っては逃げてを繰り返していて、とても腹が立った。
「よし、事情は説明しといたぜ。ついでに黒獣駆除員の試験も特例で三日後にやってくれるみたいだから、とりあえず三日間、耐えきろうな」
「え…後三日もこの野次馬地獄を味わなきゃいけないの…?」
「…残念ながらな。まあでも、自殺しようとした罰ってことでいいだろ」
「全く良くない!クソッ、なんでちゃんと死なせてくれないんだー!」
僕が叫んだその願いは言葉は、虚しく空に散っていった。
よろしければ応援お願いします!