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ブラックな朝 part.1
「いつまで寝てるんだ、早く起きろ!」
朝は決まってこの言葉で起きる。
最悪の目覚めだ…。
顔を洗いたいが、近くに水道はない。
それどころか、自分の部屋という概念すらない。
鉄柵の中で子供たちがひしめき合って寝ていた。
今は底冷えしないから春くらいだろうか。
しばらく陽の光を見ていない。
ボクら子供たちはブラックコーヒー座長の
サーカステントの外へは出られない事になっている。
どういう理屈かは分からない。
ただ、契約書にそう書かれているそうだ。
「次の公演は三日後だからな、失敗したら承知
しないからな」
承知しないのはいつものことだと思った。
このブラックコーヒー座長が機嫌のいい日は
あまりない。
というか、見たことない。
怒っている姿がふつう、と思えるほどに
この人は常に機嫌が悪い。
「おい、お前もさっさと練習始めろよ?
いつまでも控えだと思ってると痛い目みるからな」
それはボクに対する言葉だった。
ボク以外の子供たちは、みんなはブラックコーヒーに
怒られる前にさっさと練習を始めに行ったらしい。
ボクもこれ以上なにか言われたくないので
逃げるようにみんなの元へ混ざりに行った。