大阪県に大雪特別警報、発令
<臨時ニュースを申し上げます。大阪県に、本日午後3時、大雪特別警報が発令されました。予想される積雪は、大阪県市街地で1メートル、内陸部で2メートル、山沿いで3メートルから5メートルです。各方面、厳重に警戒し、不要の外出を控えてください>
「やったあああああ~~~!雪だ!雪だ!大阪に、ついに雪が積もるぞおおお~~~!」
テレビが番組を中断して臨時ニュースを読み上げた次の瞬間、おれは、狂喜した。
「1メートル以上か!すげえ~~~!ついに!ついに!夢がかなった~~~!これで大阪は、晴れて雪国の仲間入りだ~~~!アアア~~~楽しみだ~~~。雪見酒、雪見大福、雪見ぶろ、雪見エッチ。ついに、長年の夢がかなうんだ~~~」
おれは、テレビの前で激しく興奮し、どったんばったんと足を踏み鳴らして小躍りした。
その日の夕方から、雪が深々と降り始めた。
「お?雪が降ってる、降ってる。もっと降れもっと降れ。10メートル積もったらいいのに」
いつもなら深夜遅くまで起きているおれだが、今夜は違う。
「明日の朝が楽しみだ。早起きして、雪を見なくちゃ。早く寝ろ」
とおれは、ふとんに飛び入った。
朝6時、目が覚めた。
「雪が見たい!雪が見たい!雪が見たい~~~~~~!!!」
おれは、目覚まし時計が鳴る前に飛び起きると、トイレに入った。小便をジャーッとまき散らし、おれはワクワクしながらトイレの窓をカラッと開いた。
…………
抜けるような青空。いい天気だ。
トイレのすぐ前には、隣の家のミカンの木がある。さぞや雪が積もって、樹氷になってるぞ。
って、あれ?木に雪がない。
首を伸ばして地面を見る。
あれ?白くない!
首をかしげて、隣の家の屋根を見る。
あれあれ?雪がない!!!
わああああああああああーーーーーーーーー?????????
なんでや?
なんで、雪が積もってないんや!
くそ!!!!!気象台め、ウソつきやがったな?
いや、なにか勘違いしたのかも。大阪に雪が降るはずがないのに、雪が積もるだなんて。しかも1メートル以上だと。気象予報士たち、頭がとち狂っていたに違いない。
おれは怒り狂って、気象台に電話をかけた。
「おい!雪、積もってないやないか?大雪特別警報?よくもウソつきやがったな?せっかく楽しみにしてたのに!責任者、出てこい!」
すると担当者が、返答してきた。
<すみません。大阪湾に寒気が吹き込んだら、大阪湾のぬくい海で寒気が急激に温められて雪雲が沸き立つと思ったんです、はい。しかし、予想に反して、大阪の海は冷たかったようです、はい>
おれはふてくされて、ふとんに飛び入った。そのままグースカ寝て、気がついたら、夜だった。
腹減った。
雪見大福を食った。うまかった。でも、涙が出た。
「神さま、頼むから大阪に雪をくれ~~~!30センチでいいから、いや、15センチでいいから、いや、5センチでいいから、いや、1センチでいいから、いや、うっすらでいいから、いや、降らせるだけでもいいから~~~」