VS 魔木
「GIYUUSHURUUUUッ!!!」
声にもならない声を出し
意味があるかも分からない奇声を上げる魔物。
俺の目の前にはデカイ魔物…走る木が聳え立っていた。
……走る木走る木って言いづらいし何だかダサいな。
そうだ、魔木って呼ぶか。
我ながらにいいネーミングだ。
でも変なところに腕生えてるし結局ダサいな。
……はてさて困った。
デカすぎる癖して弱点らしき箇所が何一つ見当たらん。
こういう大型魔物って
剥き出しの核とか
頭が比較的守りが薄かったりするじゃん?
でもこいつ木だぜ?
木って何が弱点よ?
火?
いやいやいやいや……
俺ただの物理特化なんですけど?
悪く言えば魔法使えないレベル1のクソ雑魚。
無理ゲー。
マジでどうするよコレ?
自問自答しながらもヤツの攻撃を避ける俺。
走るのは早い癖して攻撃が大振りなもんだから余裕で避けれる―――
「どわあっ!?死ぬぅぅぅぅぅぅ―――――――――」
ごめんなさい。嘘つきました許してマジで!?
全然余裕なんて無かったわ。
全部ギリギリぶっちゃけまぐれ。
謎の動体視力向上で辛うじて避けれている状態。
火事場の馬鹿力というか眼力的ってやつなのか!?
正直言っていつ食らっても可笑しくない。
とにかく防戦一方。
ヤツの腕は厄介だ。
人のそれをとにかくデカくした棒の薙ぎ払いの範囲がかなり広いのだ。
それって腕のことな!
あの腕さえ封じられれば勝機はあるかも知れないが
それをどうにかできない限り近寄る事すらままならない。
腕一本ならベッドで無理やり押さえ込めること身を以て体感した。
問題はそれが二本もあるってことなんだよなぁ。
足が短いからなのかは知らんけど
体全身を横にしての広域スイングとかはしてくる気配がない。
たぶんそれやられたら負け確だからさっきからヒヤヒヤしているのだ。
あの重量全てを受け止めきれるわけがない!
「くそったれ!!」
俺がしゃがむのに合わせて下げられた大振りの薙ぎ払い
ベッドを盾にすることで一時的に凌いだがコレは不味い。
「やっぱりな!!!」
直ぐさま反対側やってくるもう一本の腕
もう無理!ベッドに篭りたい―――ん、待てよ?
素早くベッドを縦から横へと倒した俺は
更に素早くベッドの下へと避難した。
ベッドに響く連打を必至で堪えつつも
潜り込んだ状態のまま
奴に向かって突進を敢行する。
「おおりゃぁあ!!」
「GUFOAAAAA!!!!!!」
タタラを踏む魔木。
足が短いせいなのか
碌にバランスも取れず見事に後ろへ倒れ込んだ。
「―――よっしゃ!」
ベッドから這い出た俺は必死にヤツの頭部を探し出すと―――
「これかぁぁぁあああ!!!」
ヤツの頭?に目掛けて
ひたすらベッドを振り下ろした。
何度も何度も。
そして奴が起き上がろうとする度
足に向かってベッドを打ち添える。
キリがないと思った俺は
ヤツの足目掛けて寝具一閃を食らわせてやった。
すると足は呆気なく砕け散った。
今宛らに寝具一閃の威力に慄いた。
その分、体力の減りがやばいけどな……。
ともかく俺の予想は大いに当たったというわけだ。
やつの腕は無駄に太くそして長いのが脅威だ。
そのため射程範囲外に逃れることばかりを考えていた。
しかし裏を返せばこうだ。
―――射程内では攻撃パターンは横薙ぎと振り下ろしの2パターンに限られる
つまり奴の腕が伸び縮みしない限り
ベッドの下に潜り込めば大抵どうにかなるのだ。
槍の達人なら間合いに入られないよう下がったりするだろうが
生憎と相手は木だ。
そこまで頭が良いとは思えない。
たぶん。
もしそうじゃなかったらマジで詰んでたかもしれない。
そう思うと心臓に悪いなおぃぃ……。
正直一番の心配はベッドだった。
魔木の重い一撃に耐えられるかだったか全然平気だったらしい
罅一つ付いていないところを見るとこれ壊れないんじゃね?って思う。
ともあれ……
余裕ができてから殴打回数を数えて早数百回。
見るも無残に半壊した魔木。
ついにピクリともしなくなった。
どうやら俺は、魔木を仕留めることに成功したようだ――――――
主人公は顔が弱点じゃないとかいいつつ必死になって顔を狙ってましたが、実はそれが正解です。
安直な気もしますが顔というか頭部が弱点です。