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ニート・ベッド・マジシャン  作者: 氷獄鶏
眠りの森のニート
3/7

寝具戦闘術 Lv1

タイトル変更

 前:寝具戦闘術

 後:寝具戦闘術 Lv1

大森林フルティア。

かの森の代名詞としてデミタスの実が有名だ。

その絞り汁にはコクと深みのある濃厚な独特の苦みが含まれている。

だがその苦味が反って癖になると巷で評判の実である。

汁に名前が付けられるほどの人気を誇っている。

その名を”コヒー”という。


名実有名

デミタス木の群生地は広範囲に及ぶ。

比較的浅い層でも採取可能なことから

金欠に陥りやすい駆け出し冒険者

その殆どが()の実の世話になることだろう。


Dランク冒険者、ロドスもその一人である。

しかし彼の姿は大森林の深部にあった―――


「畜生畜生畜生ォォォオオオオオオオ!!!!!!」


気心知れた瀕死の仲間のその背に背負い

彼は一人一心不乱に駆け抜ける。

己も全身から血を流しながらも

彼は一人走り続ける。


二度と仲間を失ってたまるものか、と―――――



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



『異世界に転移しました』

『■■■へ在住許可を申請……受諾されました』

『在住条件……世界の理(ステータス)が付与されました』

『救済処置……<言語習得LvMax>が付与されました』

『転移特典……"最も適正値の高いスキルと職業(クラス)"が付与されました』

対異常事態処理(アンチ・イレギュレーション)を終了します』



なかなかにユニークな目覚まし音で目が覚めた。

半ば強制的に起こされたがために

頗る機嫌が悪いのだ。


なにせ睡眠は

俺にとって至福の一時なのだ。

眠っている間、ストレスに晒されることは決してない。

そこにあるのは安らかな気持ちそれだけ。

負の心が全て浄化されるのだ。

だから安眠は俺にとって唯一の癒やしであり

それを邪魔する者は誰であろうと許さない――――


しかしその怒りをぶつけるべき相手は既に立ち去った後だったらしい。


「はぁ………」


溜息吐きつつ何ともなしに天を仰ぐとそこには見知らぬ天井が――――無かった。


目に映るは延々と広がる青空だ。

澄み渡った空から降り注ぐ

ぽかぽか暖かな陽の光が

俺を再び眠りへと誘う。


―――が、眠りに就くことは叶わなかった。というのも……


ピコンッ!


軽快な電子音と共に現れた謎の窓

黄色く透き通ったホログラムウィンドウが唐突に

俺の目の前に現れたのだ。

眠りを邪魔されイライラしつつ

そいつを見やると何やら文字が書かれていた。





【チュートリアルクエストが発生しました】

 受諾しますか? YES / NO





もちろん "NO" に決まってる。

俺の眠りの邪魔しやがってこの野郎―――ッ!!

拳を固め "NO" 目掛けてフィストした。


その瞬間、ウィンドウ(黃)は独りでに動き出し

―――俺の拳は "YES" へとぶち当たった。


「ハァァァァアアア!?」


俺の言葉はそこで止まらない。


「くっそくっそくっそくっそくっそ……マジくっそ。マジ有り得んわ。ウィンドウが勝手に動き出すとか前代未聞だわ。ってかこれバグじゃね?マジふざけんな。これは酷い。マジで無いわ。本当無いわこれ~………」


すると忽然と姿を消したウィンドウ(黃)

―――思わず出た暴言の数々に心が折れたのか

ふとそう思うと何だか悪いことした気分になった。


―――すまん。いろいろ言い過ぎた。

殴るのは流石にやりすぎだよ。悪かったよ。

今度は殴ったりしないから許してくれないか?

寝起きで気分が悪かったんだよ。

だからさ、お願いだ「ピコンッ!」



俺の祈りが通じたのか

再び黃ウィンドウが出現する。

どうやら許してもらえたらしい。



え~と、なになに………




【チュートリアルクエスト 1/4】

 ◇ 内容

  ステータスウィンドウを開こう!

 ◇ ヒント

  「ステータスオープン」と念じるとよい




クエスト?

ああ、なんだ夢か。

街中の某大学のとある一室で寝ていた俺

それが起きたら森の中なんて普通に考えれば有り得ないことだ。

だから夢に違いない。

でも眠たいながらに五感が凄く鮮明だ。

そこでふと

最近発売されたらしい新型VRギアを思い出す。

買いたかったがゼロの桁数数えて断念したのが記憶に新しい。

たぶんそれが原因だろう。

確か…視覚・聴覚に加えて嗅覚が追加されたんだっけか?

あれれぇ……?

もしかすると夢じゃないかも?


―――ぶっちゃけそれでも構わない。人生やり直すのも悪くない。


そう思いつつ念じてみる。


(ステータスオープン)


するともう一つウィンドウが出現した。

青白く透き通って色違いだ。




名前:ショウヘイ・トドサカ

職業(クラス):寝具使い Lv1

HP :10/10

MP :10/10

STR:4

INT:4

DEF:3

RMG:2

AGI:7

LUK:1

スキル:<言語習得LvMax> <寝具戦闘術 Lv1> <寝具魔法 Lv1>




お、おぅ……

俺はどうやら寝具使いになったらしい。

突っ込みどころが満載だ…。

神具じゃなくて寝具ら「ピコンッ!」


思考をインターセプトするが如く

唐突に鳴り出したウィンドウ(黃)

こいつは自己主張が激しいタイプのようだ。


仕方なく見てやると少し内容が変化していた。




【チュートリアルクエスト 2/4】

 ◇ 内容

  スキル効果を確認しよう!

 ◇ヒント

  指で文字を触るとよい




数字のカウントが1増えている。

たぶん4/4にしてクリアすればこいつは消えてくれるに違いない。

さっさとクエスト消化して

そのあとじっくり考察するほうが集中できそうだ。

それと達成報酬 地味に気になる。

ポチッとな。




【寝具戦闘術 Lv1】

・寝具を装備時、戦闘能力にプラス補正[STR+10]

・重量[100kg]まで無視して寝具を装備可能

・以下の武技を習得する

 -寝具一閃(ベッドスラッシュ)




気になることが増えてく一方だが

とにかくクエの消化が先決だ。

再びウィンドウ(黃)を覗く。



どれどれ……




【チュートリアルクエスト 3/4】

 ◇ 内容

  技または魔法を発動しよう!

 ◇ヒント

  発動対象の名称を念じるとよい




寝具一閃(ベッドスラッシュ)―――名前からしてベッドを使う技のはずだ。

たぶんベッドを担ぐ必要がありそうだ。

脆弱な俺がベッドなんて持てるかどうかは分からないが

まずはベッドから降りる必要があるだろう。


「よっと!」


足を降ろした先には寝前 履いてた靴があった。

日当で買った真新しい少し高めのスニーカーだ。

楽して稼いだとは言え

自分の稼いだ金で買ったと思うと

不思議と感慨深い気持ちが芽生えるものだ。


目の前のベッドをしばし眺めた後

気合を入れた俺はベッドを持ち上げる。

最初から全力だ。


「――――フンリャっっっどわ!?」


思いっきり持ち上げベッドは恐ろしく軽かった。

有り余った力に振り回された俺はベッドを()()()()()

盛大に尻もちを着いた。


「いっててて……ってマジか」


吃驚した。

何という軽さだ。

俺に大した筋力は無いはずだ。

だとすれば<寝具戦闘術 Lv1>の効果に違いない。

片手で掲げてスピンさせる曲芸じみたことまで可能だ。

しくじってベッドを頭にぶつけたが

痛みも全然感じなかった。

どうやら全身に対してスキル補正が掛かるらしい。


とりあえず寝具は持てるということで

次は寝具一閃(ベッドスラッシュ)だ。



(いくぞ――――寝具一閃(ベッドスラッシュ)!!!)



ブォオオン!!!!


タタラを踏むほど強烈な横風

空間を薙ぐ鈍い轟音

横一文字に構えた右手は

気付けば右側へと移動していた。

その瞬間、一寸たりとも目で捉えることは叶わなかった。


「やべぇ。マジやべぇ」


思わず笑いが込み上げる。

とんでもない威力だ。

寝具戦闘術だけでこれほどのパワーだ。

ならば寝具魔法は一体どれほどの……


そう思うと更に笑いが込み上げたのだった――――――




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