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ニート・ベッド・マジシャン  作者: 氷獄鶏
プロローグ
2/7

プロローグ 下

世の中には多種多様にバイトが存在する。

その中でも被験者実験なるバイトは金回りが非常に良い。


―――その分、期間も短いが短期間で楽してガッツリ稼ぐならこれに限る


ハロワのおじさんがそう言っていた。


そして見つけた被験者募集中の張り紙。


鼻提灯出して眠るデフォルメされたタヌキがデカデカと描かれた広告。

隅を見れば連絡先と共に小さく書かれた宣伝文句


【眠りの研究。なんと寝るだけ!!お金がたくさんもらえるよ!!!】


ああ、何とも胡散臭い広告だ。

案内の地図も無く字も見づらい。

おまけにクレヨンで描かれているときた。

もはや微笑ましい児童作品にしか見えず

誰もこれが求人広告とは思わないだろう。


実験に消極的なのか

はたまた参加人数を絞る策の一環なのか

楽して稼げるならどっちだって良い


俺は迷わずポケットからスマホを取り出した――――


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


あれから30日が経過した。

これといった問題も無く審査に受かった俺は

今日も一人、某大学のとある一室へと足を運んだ


「今日のテーマは一体………」

「今回のテーマは中二病です」

「へ、へぇ……」


目の前の文学少女は淡々と告げた。


部屋の真ん中にベッドがあった。

何の変哲もないベッドだ。

問題は下だ。

下…床一面には怪しげな

仄かに光る金色の魔法陣が描かれていた。

―――さすが大学だ。光る原理が皆目見当つかない。

俺たち凡人には理解不能のハイテクノロジーだ。

それを惜しげも無く残念なことに使えるとは

許可出した奴というかこの大学マジパネェ……


金があれば俺も大学に通ったりしたのだろうか……

ふとそんなことを思った。

所詮、過ぎた話である。


ともあれ緻密に刻印された様々な文字

そのどれもが見たことのない言語だった。

英語でも日本語でもドイツ語でもなく

どちらかと言えばアラビア文字に近い気がする。

なんでドイツ語でないって判るかって?

うっ、頭が――――いや、何でもない。

気のせいだろう。


今更だがバイトについて簡単に説明するとこうなる。


 ・睡眠に関する研究のお手伝い

 ・毎日異なるテーマのベッドで寝た奴の脳波モニタリング

 ・専用のベッドで寝るだけ簡単な作業


本当に寝るだけである。

但し、寝る時間帯は固定で

昼から夜の12時間となっている。

おかげで警邏の人とも顔なじみになった。

強面フェイスの大男だが気さくで面白い人柄だった。


……っと、話が逸れたな。


今日がその最終日で

大学に因んで卒業式かと思ったが

予想が外れて少し残念だったりする。


そして室内はテーマに相応しい様相を呈している。


ベッドの傍に置かれた木製三脚に水晶玉

縄文土器を彷彿とさせる謎の壺々

書類が無数に積まれていたはずの本棚には

分厚く古臭いカラーリングの本が

無数にぶっ込まれている

その他諸共含めれば正にオカルティックな雰囲気である。

思わず右手を抑えたくなる、そんな部屋だ。

地味にニヤけそうになるのを堪えるほどに。

ふと思った。


「まさか月山さんが?」

「そうですが。何か?」


タイムラグなしに抑揚の無い返事が返ってきた。


月山さんは今目の前に居る文学少女

眼鏡かけた大学生。

見た目が年不相応に幼いから

勝手ながら心の中で文学少女と呼んでいる。

ちなみに広告主本人でもある。

ついでだが下の名前は知らない。

わざわざ聞く必要性は感じないし

相手の反感買って楽なバイト辞めさせられるのも嫌だしな。

決して人の名前覚えるの苦手とかじゃない。

ついで言えば俺はロリコンではない。

そこんとこマジよろしく!!


「それでは横になってください」

「あ、はい」


何度も繰り返したルーチンワーク

――――靴を脱いで毛布被ってベッドで横になる。

しかしながら人前でやるとなると

何だか気恥ずかしく未だに慣れないものだ。

やるもなにも他人の前にすることはまずないのだが…。


「それでは寝てください」


そう言われ目を瞑る。

寝るのは俺最大の特技である。

例え朝でも昼でも夜であろうとも

そこに寝具がある限り

俺は一瞬で眠りに落ちることができる。

しかも30日間で更に技に磨きが掛かった。

俺の技はキレッキレッだぜ!

ふふっ見たいか?

仕方がない奴だな。

ならばとくと堪能するがいい――――俺の寝技ぉ…………



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