異世界召喚はそうじゃない!
拙い文章ながらも頑張っていこうとおもうのでお付き合い頂ければ嬉しいです!もし何かあれば指摘をお願いします。
1
「じゃあ詩也、父さんと母さん仕事に行ってくるから」
「んー、いってらー」
彼、香月詩也はソファーで寝っ転がりながら気だるげに応えた。詩也の両親は共働きで、市内の工場につとめている。そのため、夜勤があり両親が夜家にいない事も週に何回かあった。
最後に父さんが「明日は学校だし、夜には誕生日パーティーもやるから今日は早く寝るんだぞ。」と言い残し仕事へむかった。
そう、明日は香月詩也の17歳の誕生日なのである。香月家の家訓の1つに「誕生日は全力で祝うべし」というのがあるので毎年家族の誕生日にはパーティーを開いている。
(さて、父さんにも言われたし、課題続きであんまり寝れてなかったからもう寝るか。)
詩也は戸締りを済ませると2階の自室へ向かった。ベッドで横になると、物心ついた時から無駄だと分かっていながらも眠る前に唱えていた言葉を口にする。
「神様、もしいるなら1度でいいから『異世界に召喚して』くれよ…………………………んなこと言っても無駄だよなぁ」
そんな事を呟き詩也は眠りについた。そして夜も静まり日付けが変わる頃、ひとつの“声”が生まれた。
“声”は
『ならば叶えてみせようその願い。僕から君へのささやかな誕生日プレゼントさ香月詩也君』
と彼を慈しむように優しく囁いた。
しかし、この時詩也の部屋で“声”が生まれた事、そして、この日を境に彼がこの言葉を唱え無くなることを知る者はいなかった。
2
朝目を覚ますと彼、詩也はいつもの朝と違う事に気づいた。
(静かだ、車の音が聴こえてこない。今日は平日だしもう7:30だぞ、変だな。)
詩也の家は1軒挟んだ所に国道があり昼夜を問わず車が走っているので車の走る音がしないという事はほぼなかった。
疑問に思いつつ部屋の窓を覗いてみるとそこに広がっていたのは────────────────全く知らない空、街、山そして人。
要約しようそこは異世界であった。
「おいおいおい、どうなってんだこれ!?」
詩也は瞠目するも落ち着いて現状を整理しはじめる。否、正確には落ち着くために現状を整理しはじめる。
「昨日までは、確かに家は市内にあった。寝る時だって車の音がしてたし間違いない。てことは、これは寝ている間に起きた出来事。そして外は明らかに夢にまで見た異世界だ。ということは…」
じっくり1分程かけて頭を落ち着かせた詩也は結論に達する。
「つまりこれは……………………夢か?」
人間ありえない出来事がおこると現実逃避をしてしまうものなのだ。しかし、古来より夢を確かめる方法は1つである。
ゴクリ
詩也は躊躇せず全力で頬をつねった。
「イテッ!!!」
夢ではないかもしれないという期待から全力でつねってしまい、痛くて声が出てしまったがそれ以上に嬉しさがまさり、思いっきりベッドに飛び込む。
「夢じゃない、本当に異世界に来たんだ!やったぜ!」
子供の頃から夢見ていた事が現実になり、思わずニヤけてしまう。
「こんな事してられない、もっと外をしっかり見てこなきゃ!」
しかし、彼はキッカリ120秒後に過去最高のテンションから氷点下まで落ちる事をまだ知らない……
120秒前
詩也は速攻で外出用の服に着替える
60秒前
タンッタンッタンッタンッ
階段を駆け下り、玄関へ向かう
50秒前
期待と興奮を胸にドアを開け放つとそこには………
40秒前
禍々しい魔物が大勢家のまわりを取り囲んでいることを認識。
驚きのあまりドアを開け放った状態で硬直
30秒前
魔物の間を1人の美少女が進み出てきた
少女はまるで天使が降り立ったのではと考える程に美しかった
外見年齢は15~16歳程だろうか。腰程まで伸ばした紅色の髪、それと対をなすような雪のように白い肌。そして、こちらを見据える髪と同じく紅色の瞳からは絶対的強者の雰囲気を漂わせていた。身長は165cm程でその体には黒と白を基調とした肩と脚が大胆に露出している服を身につけていた。その他に特筆すべき点があるとすれば、彼女の頭からは“角”が伸びていた。
そして彼女は詩也の前まで来ると、高圧的な態度で喋りはじめた。
20秒前
「私は3代目魔王ベリアル、この魔界を統べる偉大なる王にして、貴様を召喚した張本人である。」
その言葉1つ1つに相手を威圧するような迫力があり、詩也は思わず息を呑んだ
10秒前
「召喚されし者よ貴様に命ずる────────────」
すると少し間をあけて────
6秒前
「────どうかこの国を救ってくださいお願いします。」
さっきまでの威圧感は消えさり丁寧にお願いされ、周囲の魔物と目の前の美少女に頭を下げられた
3秒前
2秒前
1秒前
硬直していたおかげで冷静考えをまとめることができた
異世界に転移して美少女にこの国を救ってくれって?
こたえなんて最初から決まってる!
0秒
「すいません、荷が重過ぎますのでお断りさせていただきます。他をあたってください」
(嗚呼神様、異世界召喚って魔王サイドじゃなくて普通勇者サイドでしょ。こうじゃないんだよ神様ぁ)
そう言ってドアと鍵を閉め────────
異世界で引きこもることを決意した。
次回は来週中を予定しています。