表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/43

地底大空洞

卒業論文が終わりました。お待たせしました……

ていうかさすがにもう誰も読んでないんじゃあ(ry

 先導するセイラムに従いながらも、その歩みは牛のようにのろく。

 思う通りになるものかと、抵抗を続ける。わずかな抵抗でも無意味ではないはずだ。


「やれやれ……素直には従ってくれないのね。でもいいわ。どれだけ時間が経とうとも助けは来ないのだから」


 意地悪そうな微笑みを浮かべる彼女。

 これは賭けだ。

 それも最高に分の悪い、他人任せの賭け。

 作戦ですらない。

 だけど、それでいい。信じなければ勝ちなどあり得ないのだから。


     ◆


 どんなに遅く歩もうとも、その時はやってきてしまう。

 通路を抜けると、土の壁で出来た広い空間に出た。

 セイラムのアジトは、アリの巣のように出来ている地底大空洞だったのだ。

 その空間の中央にはマリナがいた。手足に鉄枷てつかせめられて、うなだれている。


「マリナ!」


 わき目も振らず、彼女の元へ駆け寄ろうと――


【止まれ】


 グン、と体が動かなくなる。

 セイラムの魔法によって拘束され、指先までもが固まってしまった。

 動けないオレの横を通り過ぎ、マリナに近づいていく。


(まて! 何をする気だ!)


 声は出ない。

 ポケットにはお守りがある。巻田から貰った何の変哲もないお守りだったが、それは今、魔道具としての機能を持っている。

 魔力を込めれば発動する。そしてこの拘束を解くことが出来る。

 しかし発動は一度きりだ。


「少し講義をしましょうか。あなたたちは私の魔法、肉体操作をどう思っているのかしら」


 自慢げにセイラムが語る。

 そんなの知るか。第一、口も何も動かせない。


「口くらいは、利かせてあげるわ」


 気がつくと口は動くようになっていた。声も出せる。


「この世界の知識だけでは成しえなかったこと。リュート、あなたならわかるかしら」


 コイツは何を言っている……。

 魔法の仕組み? あちらの世界の知識? どうしてそんなことを聞く。


「…………」


「正解は、電気信号。つまり、肉体をめるだけではなく……」


 セイラムがマリナに手をかざす。

 言いたいことがわかった。


「その手をどけろ……!」


 魔道具を発動させるしかない!

 そして奥の手のお守りを発動させようと――


「リュートッッ!!」


 マリナがえた。

 その一声でハッと我に返る。


「いいからアンタはそこでジッとしてなさい」


 マリナはセイラムを睨みつけた。


「アンタ、運命って信じる?」


 それは魔女にとっての怨敵である言葉だ。


「……ええ、信じるわ。その理を壊すために動いているのですから」


 それを聞いたマリナは高笑いをした。


「ハッ、くだらないわ! 必死に生きて必死に死ぬ、それが運命だったのならどんな結果も受け入れる! 人間はそれだけでいいのよ」


「なら……運命に殺されたあの人は、あの人は、運命を『仕方ない』と受け入れてたって言うのかしら!」


「さあね。それは知らないけど、受け入れていないのは少なくともその人ではなく、アンタよ」


 強い言葉でセイラムを否定する。


「未来だけでなく、現在・過去。これまでの歴史までも否定することになるアンタとは相容あいいれない。それは人の成すべきことではないわ」


 両腕を下げて脱力し、セイラムは静かに俯いている。


「そう……」


 説得に成功したのか……?


「奇遇ね。私もあなたとは相容れない」


 呟いて、再び手をかざす。

 瞬間、マリナの右腕が、あり得ない角度に折れ曲がる。

 大きな悲鳴が空洞の壁に反響する。


「ただでは殺さないから安心しなさい、死を上回る苦しみを味わわせてあげるわ」


PS:読んでもらえてたのなら、こんなに嬉しいことはないです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ