生への執着
お久しぶりです。更新遅れて申し訳ない……
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迷いは晴れた。
オレは、ソフィアの意義であり続けたい。絶対に死ぬわけにはいかない。
だから生きる覚悟をもって、戦うんだ。
ひざまくらの感触は恋しいけど、いい加減体を起こさなくちゃダメだ。
失敗した禁呪の影響でまだ肉体は万全な状況ではなさそうだ。
「もう大丈夫そう?」
「大丈夫だ。ソフィア、それより……」
双眼は遠くを眺めている。
一本の木を狙って、破壊の禁呪を放った。しかしそれは失敗したはずだ。
「これは……オレがやった、のか?」
視線の先。
本来ならば、木がそびえ立っていた。そこには“何も”ない。
木を支えていた大地も、大地を覆っていた草も。
まるでスプーンで抉ったかのように、空間ごと消失していた。
――――これはどういうことなのだろう。
禁呪が成功していた?
制御しきれず、暴発しかけて……
「そうか」
暴発、していなかったのか。
暴発寸前だったのは事実だろう。その影響で死にかけたのだから。
死にかけたことが良い方向に作用した。
破壊という漠然としたイメージを具現化させるには臨死が必要だったのかもしれない。
あくまで可能性の一つだが、死に際で描いた虚無のイメージこそ、破壊そのものだった。
そして、破壊の禁呪は成功した。
この力なら新世界教団の魔女、セイラムを妥当しうる力になるはずだ。
ただし回数はおそらく一発。おまけに成功確率が五分の賭けになる。
「ソフィア」
「どうしたリュート?」
もう一度だ。
もう一度、協力関係を申し込もう。
「オレは。マリナを助けに行かないと」
「私は。キミを守ると言った」
「ああ、言った」
だけど、これだけは譲れない――――。
ソフィアは、ふぅ、と息をついた。
「……本気で守るなら、危険から遠ざけるのは筋だろうに。ま、今度は危うさもなさそうか」
視線を交わす。その時間は五秒にも満たない。
だけどソフィアに見つめられると心の奥まで見透かされているような気分になる。
「わかった。その申し出、うけよう」
そして彼女は承諾した。
「ありがとう……!」
「リュート。死んでも助ける、とはもう考えないでほしい。それはキミを想う人を悲しませる、一番最悪な手段だ」
「ああ。理解したよ」
死を直面してわかった。ソフィアの悲しむ顔はもう見たくない。
いや、させてはいけない。
「……本当かなあ。手段として最悪、おまけに勝ちを逃す最悪の考え方でもあるんだぞ」
返答が軽いものと捉えられたのか、疑わしい眼差しが向けられる。
うっ。
これは……説教が始まる……。
そうさせた原因はすべてオレにあるんだけど。
「死活という言葉があるように、死ぬと活きるは対極に位置する言葉だ。生に貪欲であれ、それが活(勝つ)ということだ」
命がけの戦いなどしたことないし、これまで死を意識したこともなかった。
日本でそんな出来事はほぼ起こりえないから、しょうがないのだが。
ここは日本じゃない。そうも言ってられない。
これから命のやり取りをするのだ。不思議とソフィアの言葉は心に填まり、思考回路のスイッチが切り替わった気がした。
今夜はここで終いだ。禁呪の使用で失った体力を戻すとしよう。




