運命
1話前を修正しました。前に読んだときと話が違わない?って思った人はお手数ですが戻っていただけると……<(_ _)>
目の前の魔女が、オレを召喚した。
いや、ただの手先ということもあり得る。とにかく関係者であることは明白だ。
なぜ? なんのために?
「どうしてオレを呼んだんだ」
「……この世界」
魔女の瞳に憎悪が宿る。深く、全てを呪う色。
「この世界の法則知っていて?」
「ルール……?」
数週間こちらの世界で過ごしてみて、魔法が使えることや文化以外に大きな差異は感じられなかった。法則と呼べるようなものはないはずだ。
マリナなら答えられるか?
「知らないわ!」
胸を張って自信満々に答えるが、それでいいのか。
「……運命。未来はすでに確定しているという法則が、この世界にはある」
「ハッ、アンタの妄想でしょ」
マリナと同意見だ。信じられるはずがない。
だけど、それが本当だとすると……
「その法則を破るためにオレを呼んだってことか」
「察しが良くて助かるわ」
全てを信じたわけじゃない。でも、オレを召喚する何かしらの術を持っていたのは事実だ。運命というルールは本当にあるのかもしれない。
一つだけ引っかかることがある。
未来が確定しているというのなら、不確定要素であるオレの存在は運命を壊せるはずだ。そして、こちらに召喚された時点で運命は壊されたはず。
今、このタイミングでオレに接触した意味はなんだ?
「オレはここにいる。確定した未来は変動したはず」
「ご明察の通り、未来は変わったわ。けれど変わっただけ」
未来は変わった。しかし、運命を壊すには至らなかった。
つまり魔女の目的は達成されていないのだ。
「リュートに何をさせるつもり?」
「彼の存在は、世界の特異点なのよ。あちらとこちらを繋ぐたった一人のね」
「特異点……?」
希望のまなざしで、オレを見た。
「私の望む願いは一つ。二つの世界を繋げることよ」
「オレに見返りはない」
「いいえ。世界が繋がれば、貴方は元の世界に帰ることが出来るのよ」
運命を壊すと魔女は言った。
だけどそれは、世界を壊すことと同義なんじゃないか――。
ただ、二つの世界がつながれば、オレは帰れるかもしれない。
思案しているとマリナの不安げな視線に気づいた。
決心をした。
「断るよ」
「あら、どうして?」
「この世界が好きだからだ」
「そう……戻る意思は無いというのね」
「違う。元の世界も好きだ」
そして自分の意思を明確に伝える。
「だから、あなたの方法には協力できない」
魔女はオレに興味を失ったのか、ひどく詰まらなそうな顔をしていた。
マリナが袖を引っ張る。
さきほどまでの雰囲気とはまるで違う。
戦うか? 勝てる見込みは薄いが……
かといって逃げられる相手でもない。
魔女が右手を伸ばした。その手はマリナに向けて伸ばされている。
「ッ、逃げろ!」
おそらくオレは利用価値があるから殺される可能性は低い。
マリナと魔女を遮るように前に出る。
そして魔女の呪文を受けた。