潜入-Act1-
昨日は更新できず申し訳ありませんでした。
親戚が来ててな……(言い訳
一蓮托生を誓ったその二日後に禁呪の書庫へ侵入することになった。
「さてと! 準備はできたわ」
「なあ。本当に行くのか?」
正直、協力してもらうことにはなったが、自分の中ではまだ踏ん切りがつかずにいた。命がけで忍び込まずとも、他に方法があるのではないかと。
「相手は禁呪を使います。リュート、アンタはどうやって対抗するつもり?」
「そりゃあ避けて何とかするしか」
「アタシとの決闘、覚えてる? 最後の最後で詰めを誤ったわね」
ぐうの音も出ない正論だった。
手の内がわからない相手に対しては慎重にならざるを得ない。だが、こちらの切れる札は少なく、相手は数多くの選択肢を持っている。魔法のキャリアが違い過ぎる上に、禁呪まで使ってくる。
……腹を括るしかない、か。
もし元の世界に帰れるとしても、遅すぎたら何も意味を持たない。
失った時間はどう処理されるのか。オレが戻るまで向こうの時間は止まっていて、戻った瞬間から再び動くのだろうか。
そんなのは希望的観測に過ぎない。
「覚悟は決まったようね」
「ああ。行こう」
時針は零を指している。向かう先はレイステン魔法学校だ。
◆
夜の学校は空気が冷たかった。それは単に温度だけの話ではなく、来るものを拒む冷たさを直感で感じ取っているせいでもある。
「マリナ、アレはなんだ」
不定形の黒い何かが、そこらじゅうを徘徊している。その行動には一貫性を感じられない。
「影の住人よ」
初めて聞く単語だった。
「さしずめ学校の守護者ね。見つかったらまずアタシたちじゃ振り切れない」
「そんなにヤバい奴らなのか」
「魔法に絶対的な防御力を持っていて、かつ、物理的衝撃も受け付けない」
学校内を跋扈する影の住人の目をどうやって掻い潜るつもりなのだろう。オレにはそんな器用なスキルはない。
「そこで、じゃーん!」
マリナは布切れ一枚を取り出した。
……そして、それが何なのかだいたい予想はついた。
「透明マントか」
「なぁ……ッ! なんでわかったのよ!」
まさか一発で正解されるとは思ってなかったらしく、本気で悔しがっていた。
わかった理由はあまりにお約束すぎるからだ。
けど、確かにこれなら侵入もできるかもしれない。
「一枚しかないから、この中に入って」
「かなり狭いけど大丈夫か?」
するとマリナはニッコリ満面の笑みで、
「変なとこ触ったら蹴っ飛ばして追い出すから安心していいわよ」
完全に殺す気満々な発言をした。
普段はトイレで踏ん張ってる最中かテスト直前しか祈らない神様に、久しぶりに頼りたくなった。
どこも触れずに狭いマントの中に隠れるのは無理じゃないか……?