別れ
「ただいま」
家に帰ると、ソフィアが出迎えてくれる。
魔法の勉強は楽しいが、なかなかに体力を使う。帰るころにはヘトヘトだ。
――――体力、という表現は不適切かもしれない。
ゲームでいうところのMPを消費している。
これが無くなると、体力と同様に活動ができなくなる。恐ろしいのは、ガス欠に気が付きにくいということだ。
食事の準備を終えて、二人で食卓を囲む。
『いただきます』
ご飯を食べながら、今日あった出来事をお互いに交換する。楽しかったことや大変だったことを語り合う。
「リュート、少しいいか」
「どうしたんだ。改まって」
ソフィアの表情が真剣なものに変わる。何の話だろう。
「……非常に言いづらいことなのだが、君をいつまでもここに置くことはできない」
その宣告はいつか来るんじゃないかと、前から予感していた。
「そうだよな。迷惑かけすぎたし」
「あ……! 違う違う! 嫌ってことじゃないよ!」
パタパタと慌ててソフィアが訂正をする。
「リュートは名目上、保護という形で我が家に上げていたんだ。最近は反乱分子など物騒だったし、よその国から来た素性の知れない者をどうするべきか問題でね。それで、私の家で保護するのが良いと申し出たんだ」
ここまでずっと助けられてきた。異世界で一人きりだったオレを救ってくれたのはソフィアだ。本当のことを言えば、離れたくはない。
「ある程度この国のことはわかったし、何とかなるかもな」
それでも離れると伝えることにした。胸に小さなささくれが引っかかるような気持ちはあるが、こうするべきだと思ったから。
「もちろん、今すぐにとは言わない。それに困ったことがあったらいつでも私を頼ってくれてもいい」
決闘のことを、思い出した。
マリナとかいう変なお嬢様に決闘を申し込まれて、一週間後にオレは戦うのだ。
魔法を使った決闘らしく、相手を倒さなくてもいいらしい。競技のようにルールが統制されているようだ。とはいえ、危険はつきものだろう。
そして、成功法で戦えば百パーセント敗北することは確実だ。
「ソフィア。頼みたいことがあるんだけど」
「ん? なんだ?」
考えていたことを口にする。
「オレに剣術を教えてくれ!」