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魔法


     ◆



 夜。部屋で本を読んでいたら、眠気に襲われて大あくびが出た。毎晩こうして読書をしてこの国の言葉を覚えている。前よりもかなり流暢りゅうちょうに喋れるようになったはずだ。


「……魔法か」


 強力すぎる風の魔法が、頭から離れない。

 しかし、魔法という異能が普遍的ふへんてきなものであることには驚かされる。……オレにも使えるのだろうか。


【風の精に願いたてまつる――――】


 キウスという貴族の唱えた一節を思い出しながら、詠唱の真似事まねごとをやってみる。


【――――この場に風を起こせ】


 ……。

 …………何も起こらない?

 魔法が起こったらどうしよう、と後先考えず興味本位での行いだったが、逆に何も起こらなくてよかった。

 まあ。当然だよな。

 そう簡単に使えたら大変な能力だ。

 パラ……

 本のページが、風に煽られてめくられる。窓を閉め忘れたかな、と思って見やるが閉まっていた。

 パラパラパラパラ……!

 風がさらに強くなる。本は机から投げ出され地面に落ちた。


「ッ……!?」


 まさか本当に魔法が発動したのか!? マズい……!

 本だけではなく、棚の上の花瓶まで落ちて、ガシャンと大きな音を立てて割れた。


「わあああ!? と、止まれ!」


 吹き荒れていた風は徐々に弱まって、そして収まった。

 部屋は大惨事だ。


「ハァ……ハァ……っ」


 魔法、安易に使えすぎだろ。間違って発動したらとんでもないことになる。

 というか、今の状況がまさにそれか。こんなつもりじゃなかった。


「リュート、すごい物音がしたんだけど何かあった?」


 部屋にソフィアが入ってくる。そしてこの惨状を見て、目をパチパチ。

 借した一室を、まるで強盗が入ったかのような見るも無残な状態にされたのだ。ブチ切れて当然。最悪追い出されても文句は言えない……


「ごめんなさい!」


「リュート、それよりも怪我はなかった?」


「あ、ああ……」


 部屋の文句よりも、オレの心配を彼女はした。ここは怒ってもいいところだぞ、と逆に怒られることを望みたくなる。


「そうか。ならよかった」


 オレが無事であったことを、安堵あんどして胸をなでおろす。どこまで優しいんだ。


「それにしても、キミは魔法が使えるんだね」


「……いま初めて知ったよ。使えるとは思ってなかった」


 本当に魔法が出るとは思ってなかった。この大惨事はわざとじゃない。

 もしかして、オレって魔法適正があるのか?


「キミが良ければなのだが、魔法学校に入ってみないか?」


 魔法……学校……?

 いやいや、学費とかもあるだろうし、何より魔法が学びたいわけでは……。

 そう思ったが、少しひっかかることがあった。


≪――この世界にはおそらく魔法でやってきた――≫


 つまり、魔法を知ることで帰る手立てを発見できるかもしれない。

 オレは行くことを決意した。少しワクワクドキドキ。


「ま。それはそれとして! ……片付けはお願いするよ?」


 ……ひと通り話し終えたソフィアは、ニッコリとオレを叱った。

 散らかった部屋を片付けて、一日が終わる。

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