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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第十九章 誰もが笑って、幸せになれる世界を
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"私は信じています"

 最初に異変を感じたのは、奈落から離れて二日が経った頃となる。

 本来あるべきはずの四つ目の石碑が、忽然と姿を消していた。


 場所が違うのかとも考えたが、確かにその場所にあったことを伺える跡がくっきりと残されているのを発見する。

 ここは確かに石碑があった場所なのだと確信できたシルヴィア達は、まるで石碑を囲むように野営の準備をしていった。


 そんなことをしても何にもならないことは分かってはいるが、何かをせずにはいられなかったのかもしれない。

 無意味と理解していても、その傍にいたいと彼女達は思ったのかもしれない。


 口数が極端に減ってしまった彼女達だったが、そんなことでは彼女が悲しむだろうと、彼女の親友のひとりが立ち上がりながら言葉にした。


「……私は信じています。イリスちゃんはまだ、どこかにいるのだと。

 それがどこかは分かりません。コアなのかもしれませんし、別の場所なのかもしれません。だから私は、もう一度世界を巡ろうと思います」


 そのことに意味はないかもしれない。

 彼女がいる場所は予想もしないところにいるかもしれない。

 それでも、何か行動をしなければ、頭がどうにかなってしまいそうに思えた彼女は言葉を続けた。『このままだなんて、寂し過ぎますから』と。

 妹の強い意思を秘めた発言に悲しそうな表情で微笑みながら、姉は答えた。


「……そう、ですわね。……諦めるには早過ぎますわね」


 その言葉に強く頷いていく仲間達は決を取る。

 今後の方針と、彼女達のするべきことを。


 再び活力が湧いてきた彼女達は、行動していく。

 まずはセルナ。続けてエグランダ、リシルアと向かう。


 ミルリム夫妻との大切な約束もある。

 リシルアに着いたら彼女達と合流し、フィルベルグを目指す。

 たくさんの人に話さなければならないこともある。


 その後再び、ノルン、エルマと向かい、アルリオンに。

 ニノン、ツィードを通り、再び奈落の調査へ向かう。

 今度は奈落の周囲を捜索するように移動してもいい。


 だがまずは、フィルベルグへと戻ることを優先する。

 その先は、また仲間達と決めればいい。


 世界はこんなにも広いのだから、探す場所はたくさんある。

 世界のどこかで彼女が待っているかもしれない。

 諦めるのはまだまだ早過ぎる。


 必ず見つけ出すと決意をする彼女達は、翌日からいつもと同じように会話をしながらも、これまで以上の気迫でフィルベルグを目指す。


 彼女の手紙には、自身がどうなるかは書かれていなかった。

 であれば、彼女が今、どんな状況なのかも分からない。

 あまりにも膨大な力に、世界のどこかに飛ばされてしまったことだってあるかもしれない。それを判断できるだけの確たるものがない以上、諦めることなどできない。諦めるわけにはいかない。諦められるわけもない。



 強い想いの下、彼女達は再び歩き出す。

 絶対に諦めないという強い決意を胸に秘めて。

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