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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第十九章 誰もが笑って、幸せになれる世界を
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"良く晴れた朝"に

 冬の到来を告げる寒々しくも清々しい朝の風を、誰もが心地良く感じていた。

 良く晴れた空は、まるで生きる者に活力を与えるようで、どこまでも透き通るかのような空の下を歩く人々は、笑顔で言葉を交わす。


 ニンジン、長ネギ、白菜、レタス、ほうれん草。市場に並ぶ朝採りの瑞々しい秋野菜が人を集め、活気に溢れた街をとても威勢のいい声が高らかに包み込む。

 その日もいつもと変わらない、とても穏やかな日だった。


 リシルアも、アルリオンも、エークリオも、そしてフィルベルグも。

 ノルン、エルマ、ニノン、ツィード、エグランダ、カリサ、レオノル、アルバ、シグル、エーべ、セルナ。大小あれど、朝となる時間帯はどこも賑わいを見せる。

 今日の予定を話す冒険者、のんびりと朝食を取る親子、野菜を見ながら何を作ろうかと考える主婦、教会へ礼拝に来た者、それを迎える神父、鍛錬に励む兵士、開店準備をする店主、元気に走る子供達。

 その日もいつもと変わらない、極々平凡な一日のはじまりとなる筈だった。



 だがその日は、いつもとは明らかに違っていた。

 突如激しく揺れる地面に足を取られる人々。

 これまで体験したことがないのは勿論、聞いたことすらない激震に戦慄する。


 状況把握もできず、ただただ恐怖する人々。

 ある者はその場にへたり込みながら呆然とし、ある者は頭を抱えながら泣き叫ぶ。


 瞬間、稲妻のように、全身を駆け巡る悪寒。

 人々は一斉にある方角へと視線を向ける。


 そう行動したのは、本能が成せる技なのか。

 それとも魂に刻まれた負の記憶か。


 空に昇る漆黒の柱に、誰もがその意味を理解する。

 そのあまりにもおぞましい負のマナを感じ取り、誰もが予兆する。


 世界の破滅を。


 闇の柱は徐々に空を侵蝕しながら広がり続け、まるで全てを喰らい尽くすように世界を覆っていく。


 ゆっくりと、ゆっくりと。

 全てを飲み込もうと、人々へと向けて襲い掛かるように近付いてくる。


 泣き叫ぶ者も、戸惑い混乱する者も、等しく立ち昇る闇を瞬きせずに見つめる。

 大人も子供も老人も全て、等しく空を侵食する闇を震えながら見つめ続ける。


「…………"魔王"だ……」


 ある街にいる男性が震えながらぽつりと呟く。

 そう言葉にしたのは、本能が成せる技なのか。

 それとも魂に刻まれた忌まわしき記憶か。

 天を襲う破滅の柱に、誰もが手の届く先の未来を確信する。


 世界の破滅を――。

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