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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第十五章 問題の存在
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"借りてきた猫のように"

 坑道からこちらへとやって来たのは、猫人種の女性達。

 ひとりはロットと同じくらいの高さで、銀色が入った美しい白い髪を綺麗に編み込み、肩口から前に持ってきている細身の女性で、どこかおっとりとした印象を受ける大人の女性だった。彼女達の種族の特徴である耳と尾は真っ白でとても美しかった。

 胸部に腕部、足部を守った白銀の軽鎧を身に纏い、左腰には少々大きめの長剣を携えているようだ。


 もうひとりは可愛らしさを感じる女性で、ファルと同じくらいの体型だろうか。

 身長もファルより少しだけ高いように見えるその女性は、かなり淡い茶色の髪を肩口で切り揃え、耳と尾には白と黒、とても薄い茶色の三色が彼女の可愛らしさをより際立たせていた。割合は殆どが白のようで、茶と黒が彩りを添えているようにも見えた。

 隣に並ぶ大人の女性と同じような胸部、腕部、足部武具を装備しているが、その色は白銀に少しだけ黄色が含んでいるようで、ほんのりと輝くような鎧を纏っている。

 彼女の細腕にはいささか大きいと言えてしまう戦槌を背中に装備していた。

 獣人とはいえ、これほどの超重武器を扱えることに驚いてしまうイリス達だった。


 綺麗な女性に可愛らしい女性としかイリス達の瞳には映っていなかったが、どうやらファルにはとても恐ろしい姿に見えていることが伺えるような表情をしていた。

 そんな彼女に構うことなく、大人の女性はとても素敵な笑顔で挨拶を始めていった。


「初めまして、こんにちは。私はパスト「あー! すっごい魔石見つけたー!」」


 指をさしながら言葉にしたファルの示す方向へと視線を向けるお姉さん達。

 イリスとネヴィアもそれに釣られてしまうが、ロットとヴァンは苦笑いが出ていた。

 シルヴィアのみファルのそんな姿を、とても白い目で見つめているようだ。


 瞬間、姿が消えるほどの凄まじい速度で移動するファル。

 その速さは最早、シルヴィア達であっても追い切れないほどの速度となった。


 そのままその場から離れようとするファルだったが、あっさりとお姉さん達に捕まってしまう。

 冷静に目視できたのも彼女達以外ではイリスのみとなるが、女性達の行動の速さを考えると、視線を反らしたようにわざと見せて彼女を行動させた所を捕まえたようだ。

 どうやら二人は、ファルがそうすると分かっていたように思えたイリスだった。


 同時にイリスは二人が行動時に使った力が身体能力強化魔法(フィジカルブースト)ではなく、強化型身体能(フィジカル・)力強化魔法フルブーストかそれに近い技術であると考えていた。

 恐らく彼女達の学んでいる覇闘術にその秘密があると考えられるが、それを何と聞いていいのやらと悩んでしまうイリスは、どの程度まで彼女達が知っていて、どの程度の技術を持っているのかが窺い知れないと思っているようだ。


 しかし現段階で確実だと思えることは、マルツィアが言っていたように、二人は間違いなく非常に強い力を有していると肌で感じたイリスだった。

 それもプラチナランクどころか、シルヴィア達以上の強さだとも思える。

 恐らくはブーストの練度の差なのだろうとどことなく考えてはいたが、実際それを知るには彼女達と勝負してみないことには分からないかもしれないと感じていた。


 真っ青で震えるファルは、そんな状態になりながらも何とかして現状を打破しようと画策し続けるが、その全てを二人は軽くいなしていった。文字通り子供扱いである。

 ファルの取った行動を封じた二人は、笑顔で捕獲した子へと言葉をかけていく。


「あらあら。人がお話中に不意打ちだなんて、相変わらずのやんちゃさんみたいね」

「まだ逃げようと思ってる顔だねー。それが叶うくらい強くなったのかなファルはー」


 二人の言葉に、借りてきた猫のように大人しく、もとい、しょぼくれるファル。

 どうやら彼女達の方が、技術的には遙かにファルよりも高みにいる存在らしい。

 アルトから直接授かった真の覇闘術であればファルの方が遙かに強いだろうが、それでも精神(こころ)が折れている今の彼女には、二人を退ける力など持ち合わせていないようだ。


 綺麗なお姉さん達に両腕を組まれたファルは、ぐったりとした様子と滝のような涙を見せ、ずるずると足を引き摺られながらこちらへとやって来た。

 ようやく観念したねーと、淡い茶色の髪の女性はどこか楽しそうに言葉にした。

 ファルを捕獲したままイリス達へと話していく女性達だったが、その異様な光景を醸し出している真ん中のしょぼくれた仲間に視線が集まってしまっているようだ。


「改めまして。私はパストラ・フレータと申します。ファルがお世話になっています」

「アタシはメラニア・アレナスですー。ファルと仲良くしてくれてありがとねー」

「こちらこそ、ファルさんにはいつもお世話になっています。

 パーティーのリーダーを勤めさせていただいていますイリスと申します」


 視線をファルから二人へと直したイリスは笑顔で言葉にしていくと、シルヴィア達も逸れに続いて挨拶をしていった。その声は若干引きつっていたようだが。


 続けて彼女達はこの坑道へとやって来た理由を話すが、それはどうやらイリス達と同じだったようだ。

 こんな場所に危険種など出現されてしまえば、とんでもない事態になりかねない。

 あまり目立つ行動は取りたくはなかった二人だが、それでもこの場所に来ないという選択はなかったそうだ。

 女性達の放ったその言葉に、ファルはしょぼくれていた表情を驚きへと変えていく。


「ファルと一緒にいて下さる皆さんであれば、その理由も大凡お察しして下さっていると思いますが、私達もまた、そう目立つ行動を取ることはできないのです」

「まぁ、他の猫人種なら自由にパーティー組んだりとかしてるらしいけど、アタシらはファルも含めて特殊だからねー。強さが悪目立ちしちゃうと色々と面倒なんだよー」


 特にギルドとかねーと、メラニアは笑顔で答えた。

 実際に彼女達もゴールドランク冒険者で留めているが、今回の件で危険種を討伐をしていたら確実にプラチナランクへと上げられていただろうと予想しているようだ。

 もしそうなってしまえば冒険者は引退し、一般人として世界を歩いていただろうねと二人はとても楽しそうに話した。


 それを聞いたファルは、目を丸くして二人へと視線を行ったり来たりしながら、仕舞いにはぽろぽろと大粒の涙を零してしまう。

 そんな様子に首を傾げながらも、ファルへと言葉にする二人だった。


「あらあら。相変わらず泣き虫さんなのね、ファルは」

「どうしたのー? アタシ達、そんなにファルを怖がらせるようなこと言ったー?」


 彼女がぽろぽろと涙を流す理由は、イリス達にしか分からないことだ。

 だが、もし彼女達が先に危険種と遭遇していれば、間違いなく最悪の事態となっていただろう。そしてもしイリス達が数日リシルアに滞在していたら、もしここまでの旅で少しでもゆっくりと進んでいたら。

 そう考えれば考えるほど、最悪のことばかり脳裏をよぎってしまう。

 それを痛いほど感じていたファルは、瞳をぎゅっと閉じながら言葉にしていった。


「ひぐっ。よかったよぅ。パストラ姉とメラニア姉が無事で、ほんとによかったよぅ」


 本気で泣き出していくファルを開放し、まるで子供をあやすように優しく抱きしめながらパストラは頭を撫で、メラニアは背中をぽんぽんとしていると、ファルは二人に抱きつきながら声を抑えつつも涙を流していった。

 ファルがいくら二人を怖がっていようと、大切な姉達であることは変わらない。

 二人がファルよりも強いとはいえ、アルトの力を手にした彼女の比ではなくなっている。そんな二人がザグデュスと遭遇していたらと考えるだけで、心底震えが来る。

 その理由を理解できない二人は妹をあやしながら、視線を問題の存在へと向けた。

 転がってるザグデュスをちらりと見たメラニアは言葉にする。


「あれが、問題のザグデュスなのー?」

「はい。何とか私達だけで倒すことができましたので、これからギルドに報告へ向かおうと思っています」

「……もし良ければ、その詳細をここで(・・・)お話していただけませんか?」


 そう言葉にしたパストラは、妹の反応とイリス達の表情からそれを察したようだ。

 そしてそれは、ギルドに行ってからでは聞けないと彼女は判断したのだろう。


 尚も抱きつきながら涙を抑えられない彼女に視線を向けたイリスは二人へと向き直り、問題となるその話を始めていった。

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