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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第十五章 問題の存在
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"魔石の登録"


 食後の緑茶を堪能したイリスは周囲に警戒しつつも、魔石の加工を始めていった。

 手のひらに乗せた原石の欠片。とても小さなものではあるが、ランプにするにはこれでも十分だと改めて説明したイリスは、鉱石を結晶化するための魔法を発動していく。


「"物質結晶化クリスタライゼーション"」


 黄蘗色のマナに包まれていく魔石の原石。

 次第に光が収まっていくと、その姿を現していった。

 大きさは三センルの原石が小さくなり、一センルほどとなったようだ。


「このままでは少々目立ちますので、形を変えようと思います」


 そう言ってイリスは手のひらにある結晶を仲間達へと見せるも、彼女の言葉通り目立つ形をしていたようだ。

 少しだけ形は荒いが、結晶化されたものは綺麗な球体をしていたようだ。

 流石にこれを魔石加工の関係者が見れば、さぞ驚くだろうとイリスは言葉にした。


 それもそのはずだ。

 球体状の魔石など、この時代には存在しないのだから。

 八百年前ではそれが当たり前だったものが、今現在では悪目立ちしてしまう。

 寧ろ、どうやって作ったのかと、目の色を変えて詰問してくるだろう。

 このままでは流石に魔石として使う事ができないので、イリスは加工を施していく。


「"荒めのペアシェイプ・ブリリアントカットに加工"」


 純白のマナが結晶を覆い、その姿を変えていった。

 彼女の手のひらに乗るそれは、まるで雫のような形で透明度の高い宝石。

 荒めにカットされているので、この姿であれば現在の技術でも可能とする加工となっているとイリスは言葉にしていったのだが、改めて凄い力だと確信する仲間達だった。


「……す、凄いな、"願いの力"とは……。

 ……いや、その力の持つ可能性は聞いていたが、まさかこれほどとは……」

「そ、そうですね、ヴァン様。確かにこの力は凄まじい可能性を秘めていますね……」

「"真の言の葉ワーズ・オブ・トゥルース”でも加工することはできるのですが、それだと完璧な形に仕上がってしまうので、今回はあえて荒めの加工で結晶を作ってみたんです」


 これなら確かに目立たない魔石へと姿は変えたと思われるが、少々言葉を失ってしまう仲間達だった。

 イリスに限ってそんなことは絶対にありえないが、この力を悪用すればとんでもない事になることは確実だろう。そしてこの力の使い方を誤れば、非常に危険な事になりかねないとも思えてしまう。

 それについて仲間達が言葉にするのを躊躇ってしまう中、イリスはどんな魔石にしましょうかと言葉にしていき、唖然としてしまっている一同を固まらせていった。

 唯一その意味を知るロットは、その説明を始めていく。


「魔石は加工しただけじゃ使えないらしいんだ。ここに属性を入れることで魔石に変化が生じ、様々な特色が表れるって言われているんだよ」

「そうなんです。今回はランプの光源として魔石を使うので、それぞれの属性の色に染まった光を生み出すことができるんですよ」


 魔石加工の世界ではそれを"登録"と呼んでいるらしい。

 実際にこのままの状態では使えないのだと、イリスは言葉にした。

 結晶化と同時に光源を放つ魔石として作り変えてあるのだが、後はここに魔法属性たる四大属性のどれかを込めることで、今回の場合でいうところの光源の色彩が変わっていくことになる。火属性であれば赤い色が、風であれば緑といったように、その光も様々な変化を見せていく。

 更に細かく言えば、使い手次第でも属性の色が違うので、それこそ人の数だけ色を変えることができるのだとイリスは話し、仲間達を大いに驚かせていった。


「ブリジットさんは、優しい色として見える土属性を登録して街灯を作ったようですので、この魔石に魔力を込めるのはヴァンさんにお願いしようと思うのですが」

「それは構わないし、できなくはないと思うのだが、俺の場合、少々力強い色合いとなってしまう可能性があるぞ。そうなれば、濃い光源となってしまうと思えるが。

 それに俺は、マナの扱いが未だに苦手だからな。失敗しないか心配だな……」


 イリス達のパーティーで、土属性魔法を扱えるのはヴァンだけだ。

 バランスよく全属性が集まっているが、今回はランプの色彩として魔石に登録をしたいので、他のメンバーでは少々難しいとイリスは話す。


 イリスは白緑(びゃくろく)色の光源となり、シルヴィアとネヴィアは白縹(しろはなだ)色となると予想された。どちらも薄いとはいえ緑と青のために、ランプの色としては少々個性的過ぎると言えなくもない色合いとなってしまうだろう。

 できればヴァンにお願いしたいと思ってしまうイリスだった。


 残念ながらロットとファルは火属性なので炎のような色となってしまい、周囲を赤く染め上げてしまうと予想される事から、今回は難しいだろうと本人達が言葉にした。

 後はヴァンの土属性しかないと思っていたイリスの下へ、ふと思いついたファルは呟くように話していった。


「……思ったんだけどさ。イリスの"真の言の葉ワーズ・オブ・トゥルース"で登録するのは難しいのかな?

 それならとても綺麗な黄蘗色の光を放つランプになるんじゃないの?」

「それは……考えもしなかったことです……」


 そう言葉にしてイリスはそれについての知識を探っていく。

 その答えを出す前に仲間達は各々話し合っていった。


「なるほど。それは素晴らしい発想ですわね」

「うむ。それはいい考えだ。俺の色は少々濃い黄色だからな。ランプの色には少々向かないのではないだろうか」

「確かにイリスの黄蘗色なら、とても綺麗な色を出すかもしれませんね」

「優しく光るイリスちゃんの"想いのランプ"となりそうですね」

「それいいね。ランプの名前はそれにしようか?」

「そ、それは何だか私が恥ずかしいのですが……」

「そんなことありませんわよ。それ以上のお名前もないと思えてしまいますわ」

「そうだねぇ。それで、どう? できそう? それとも無理っぽい?」

「メルン様の知識によれば、一応は可能という事なのですが、その場合は少々問題も出てきてしまうようです」

「ふむ。何となく想像はできるが、話してもらえるか?」

「はい」


 現実的に可能ではある"真の言の葉ワーズ・オブ・トゥルース"による魔石登録だが、その場合、凄まじいマナを浴びた魔石が極端に力を帯びてしまうとメルンは研究に残していたらしい。

 それらは当然、様々なことに流用できる凄まじい魔石となってしまうため、メルンは魔石研究後にそれらを全て破壊していったと知識には記されていた。

 これが彼女の言葉にした、"危険なもの"のひとつとなる。

 当然、それだけではなく、この世界を揺るがしてしまうほどの途轍もない内容が含まれているのだが、どうやらその発想をすることのできないイリスには、その知識を引っ張り出すことはなかったようだ。

 そしてそれには例の帝国も絡んでいることではあったのだが、それについてはメルンの予想通り、イリスが知ることはなかった知識だった。


 しかし、"真の言の葉ワーズ・オブ・トゥルース"による魔石登録には少々危険が伴うと断言できるとイリスは話を続けていく。


「例えば、火を熾す魔石としてメルン様はこの力で登録をされたようなのですが、極々小さな魔石に込めたその力は、五メートラもの火柱を上げてしまったそうです。さじ加減である程度は軽減できるらしいのですが、それでも相当の威力を出してしまう途轍もない魔石へと変貌を遂げてしまうみたいですね」


 苦笑いしか出ないその研究結果ではあるが、実際魔石を何に使うかによっても変化が生じるという不思議な成果をメルンは手にしていたようだ。

 中でも危険なのは火と風らしく、更には光源のようなものにはより強く輝くような事はなかったようで、様々な検証と実験を繰り返して言った彼女は、光源であれば然程影響もなく魔石として使い続けられるという答えに辿り着いたという。

 しかし、それにもやはり少々問題があったようだ。


「本来、十日ほど明かりを灯し続ければ消えてしまう大きさの魔石で試した結果、一年もの長きに渡り、光を灯し続けたそうです。光源の大きさは変わらなくとも、その使用期間は非常に延びるという結果となったと、知識には記されているようですね」


 確かにそれであれば悪目立ちすることも少ないかもしれないのだが、長期的に魔石を換えずとも光り続けるという点で考えれば、やはり問題であることに違いはないとイリスは続けて話していった。

 その言葉に仲間達は考え込んでしまうも、真っ先に口を開いたシルヴィアの短絡的にも思えてしまう言葉に、イリスは苦笑いをしてしまったようだ。


「……まぁ、長持ち(・・・)するのはいいことですわよ。

 魔石を換えずとも光り続けるのであれば、交換する手間も省けて便利ですわ。

 その真価を誰かに話すわけでもないですし、ましてや光源が強くなることもないのであれば、特に悪い影響を齎すとも思えませんわ。

 使うのも私達のみなのですから、それほど深く考えずともよいのではないかしら」


 どうやら彼女のその言葉が決め手となったようで、"真の言の葉ワーズ・オブ・トゥルース"による魔石登録が、イリスを除く全員の一致によって可決されてしまった。

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