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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第十一章 前に進め
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"まずは合流を"


 驚き目を見開きながら、静かに言葉にするイリスとシルヴィア。


「……信じられませんわ。まだ存在していたなんて……」

「私もそう思いますが、それも恐らく同じものの可能性が高いです」

「うん? どういうことなの?」


 二人の様子に只ならぬものを感じるも、一体どういう事なのか見当も付かないファルだったが、ここで全てを話すと相当に時間がかかってしまう為、全ては仲間達と合流し、ツィードの宿で話しましょうと提案していくイリスは、ざっくりとではあるが説明をしていった。


「……なるほど。他にもそんな本が存在していたんだね。まぁ、それについては後でいいよ。でも、もう一つだけここで先に説明させてね」


 そう言葉にしたファルは、胸の高さまで上げた右手に力を込めていくと、赤く光り出していった。


「この力は三層で戦っている時に手にしたものなんだ。

 恐らくこれを手に出来たのも、儀式と関係しているものじゃないかとあたしは思っているけど、その詳しい説明はあたしには出来るだけの情報が無いんだよ。

 でもこれは、"覇闘術"を十全に使う為に必要な力みたいだね。

 その使い方も"()"と呼ばれる力を魔力に合わせて作り上げたものだと理解しているんだ。不思議だけど、あの黄色い光に包まれた瞬間にそれを頭で理解出来たんだよ。

 どちらかと言えば、今まで積み重ねて来た技術に、本当の覇闘術の使い方を知識として追加してくれたお陰で完成された力って言う方が正しいのかな。上手く説明出来ないけど」

「"覇"とは何ですの?」


 聞きなれない言葉に首を傾げるシルヴィアとイリス。

 この言葉はレティシアが託した知識にも含まれていない、全く未知の言葉に聞こえてしまうイリスだった。

 これについての説明をしていくファル。


 "覇"とは、所謂生命力に当たるものだと、彼女はこの格闘技を学ぶ一番最初に習っていると答えた。これはまず真っ先に学ぶ基礎的なものであり、これを完全に使いこなせる者こそが適格者だと言われる存在らしいと、彼女達の種族には伝わっているそうだ。

 しかし、そんな力と思われるものを現在に至るまで発現させた者すら居らず、伝承は伝承に過ぎないと言葉にする者が非常に多かったそうだ。真面目に学んでいたのもファルくらいで、幼馴染達は全く興味すら持たなかったらしい。

 実際に何百年とそんな力を使えた者が居たという話も聞かない為、学ばせる事も無駄ではないだろうかと語る大人達も少なくは無かったそうだ。唯一真面目に鍛錬を続けていたファルでさえも、そんな力を発現させる事は一切できなかったらしい。


 無駄と言われてしまう修練の時間を含む覇闘術にのみに力を入れていたお陰で、随分と"変わった子"扱いをされたよと言葉にしたファルに、話を聞いていた二人は思わず訪ねてしまうが、そう考えてしまうのも仕方ない事だった。


「せ、生命力を使う力って、危ないんじゃないでしょうか……」

「で、ですわね……。とても危険な力に思えるんですが……」

「あー、生命力って言っても、命に関わるようなものじゃないんだよ。

 何て言えばいいのかな、使うと疲れるって言うのかな。多用すると疲労感が出て来る力なんだよ、これは。だから使い続けても命が尽きる訳じゃないんだよ」


 笑いながら言葉にするファルの姿に安堵して、生命力という言葉に納得する二人。

 危険なものでないのであれば安心だと思えてしまうが、明らかにマナとは違うそれに好奇心を抱いてしまうイリス。これも知識欲のひとつなのだろうか。

 そんな事をファルへと話すと、逆に返されてしまった。


「寧ろあたしからすると、イリスの使っている黄色い力の方が興味深いよ。

 土属性の色にも見えなくはないけど、使っているのはどれも特殊なものだった。

 シルヴィアもあたしから出て来た光を知っているみたいだし、聞きたい気持ちは凄く強いんだけど、今はいいよ。まずはここから出たいし」


 そう言葉にするファルは、随分と疲れた顔をしていた。

 彼女だけではない。この場にいる者すべてが疲れ切っていた。


 ファルに苦笑いをしながら『そうですね』と答えるイリスは、言葉にしていった。


「"広範囲索敵サーチ・ア・ワイドエリア"の効果でも確認できる位置にいるようで、まだ野営中と思われます。

 上にいるお二人を連れて真っ直ぐ街道に向かい、まずは皆さんと合流しましょう」


 詳しい話は街に着いてからにしましょうと言葉にするイリスに頷いた二人は立ち上がり、一層へと向けて歩みを進めていく。


 二層へと通じる通路を魔法で砕き、埋めていくイリス。

 これで冒険者もこの先へ行く事は無いだろう。


 これから先は悪目立ちしてしまうので、イリスの魔法も使い難くなる。

 再び"警報(アラーム)"と"広範囲索敵サーチ・ア・ワイドエリア"、"保護結界プロテクション・カバー"を使い、予期せぬ魔物との遭遇の可能性に備える。続いて随分と汚れてしまった鎧と衣服、身体を魔法で綺麗にしていくと、目を丸くしてファルは凄い凄いと、まるで子供のように目を輝かせてはしゃいでいた。

 それを微笑ましそうに見つめるイリスと、そのお気持ち、とてもよく分かりますわと言葉にするシルヴィアだった。


 随分と大変な目に遭わされ続けた彼女達だったが、漸く入口へと戻って来る事ができ、感慨深そうに落っこちてしまった穴を見つめるファルを、二人は見つめていた。

 本当に偉い目に遭ったものだとその場を見ながら、入口へと向かっていく三人。


 徐々に光が見えて来る事に涙が込み上げて来そうになるも、あまりにも暗い場所にいたせいか、目を(すぼ)めてしまった。


 後方からする音に警戒しながら武器を構える二人の冒険者。

 出て来た者達の姿に驚きながら、武器を力なく下ろしていった。


「……貴女達、無事で何よりだけど――」


 女性冒険者が一瞬で硬直し、イリス達の後ろにいる存在を見つめる。


「ただいま。アメリーさん、デニスさん」

「「ファル!!」」


 驚きのあまり、アメリーはその場にへたり込み、デニスは驚愕の表情を崩す事無く固まり続けた。


  *  *   


 少しだけ二人の気持ちを落ち着かせて、これまでの経緯を説明していくファル。

 当然、虚偽の報告になるが、真実を話せばイリス達にも迷惑が掛かってしまう。

 そんな事は絶対に出来ない彼女がそれを言葉にする事はなく、二人に話していった。

 大凡の事情を把握した二人へ、イリスはこの先となる通路を砕いた事も説明する。

 通路を塞いだ方法を二人はイリス達に尋ねる事はなく、彼らがそう対応してくれるのも理解した上での行動となっていた。


 冒険者であれば、必要以上に個人的な事と思われるようなところまで尋ねないのが、暗黙の了解となっている。中には好奇心に負けて言葉にする者もいない訳ではないが、その殆どが同じチームの者にたしなめられる事となるだろう。


 そんな彼らに内心で感謝をしつつ、イリスは今後の話をしていった。

 まずはホルスト達を含むネヴィア達と合流する事、ここから街道まで向かう経路、今からだと日が傾くだろうから合流後に一泊をして休息を取り、朝にツィードを目指す事を伝えていくと、二人は素直に頷いていく。


 こういった場合、救助に来てくれた者に従うのが一般的だ。

 それがたとえ、明らかに年下だと思えるイリスだろうが、それは変わる事はない。

 彼らには出来ない事をイリス達は成し遂げている。シルヴィアの様子から察すると、イリスがリーダーである事は間違いないだろう。

 であれば、要救助者の三人が口を出すべきではないと、彼らは思っていた。


 シルヴィアはこれまでの経験則から、イリスが立派なリーダーである事を理解しているし、ファルにいたっては、あれだけの地底魔物(クリーチャー)を倒すほどの強者であり、凄まじい効果を持つ魔法を使えるのだから、下手に口を出す事は慎むべきだと理解していた。

 イリスには実感がないが、ここまでの冒険で彼女は十分過ぎるほどのリーダーシップを発揮している事は確実である。足りない経験を先輩達で埋める事で更に安定している彼女達のチームは、既に熟練冒険者並の連携が取れるようになっていた。


 今後の取るべき行動を伝えると、二人はファルに言葉にしていく。


「本当に無事で何よりだわ。貴女達にもきつく当たってしまって、ごめんなさいね」

「構いませんわ。寧ろ私の方こそ挑発してしまい、申し訳ありませんでした」

「もういいのよ。そんなことよりも、ファルが無事でいてくれただけで十分だわ」

「だな。……正直、もう駄目だと思ってた。本当によく無事で帰って来た」

「うん。ありがと。心配かけてごめんね」


 軽い自己紹介を済ませた一同は、洞穴を出て真っ直ぐ進み、街道へと向かう。

 途中魔物が際どい位置にいたが、運よく気付かれる事なくここまで来れたようだ。


 街道まで出ると、その周囲に仲間達の姿は見られなかった。

 "広範囲索敵サーチ・ア・ワイドエリア"の効果で居場所が分かるイリスは、それとなく言葉にしていった。


「恐らく、街方面に少し進んだ辺りで、野営しているのではないでしょうか」

「なるほど。確か少し進んだ辺りに、野営出来る場所があったな」

「街から離れるとはあまり思えませんし、そっちに行ってみましょう。もし居なければ一度そこで野営して、朝になったら街を目指す、というのはどうですか?」

「そうね。それがいいと私も思うわ」

「そうだな、俺も構わないぞ」

「私もですわ」

「あたしもそれでいいよ」


 全員の賛同を得たイリスは周囲を警戒しつつ、街道をツィード方面へと進んでいった。


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