登場人物紹介10
◇ケヴィン・トゥーマン
ニノンの街門を守護する元冒険者の高齢男性。
彼は守護任務に就く者達の中でリーダーを務めてはいるのだが、その他の守護者達も同い年ぐらいで構成されているので、責任者という扱いよりは、酒の席で半ば強引に押し付けられたようだ。
体良く扱われてはいるが、彼もまたニノン出身者なので、仲間内で毎日楽しく過ごしている。
◇オイゲン・ヘルト
ニノン所属冒険者ギルド素材受付業兼任、ギルドマスター。
とても大らかな雰囲気を纏う細身の男性で、彼に笑顔を向けられるとこちらまで笑顔になってしまうような、とても不思議な魅力を持つ。
元々ニノンの出身だが、ニノン南東にあるカリサで素材買取を専門に扱う仕事に就いていた。前任者が引退するという情報を聞いたカリサギルドマスターが、エークリオギルド統括本部に連絡を送り、晴れてギルドマスターの任に就くこととなった経緯がある。
現在でもギルドマスターとして活躍する彼は、この長閑なニノンでのんびりと仕事をしながら過ごしているそうだ。
◇フォルカー・アイヒェル
ニノンにある宿屋"銀の杯亭"の主人。
街の顔とも言える宿屋を経営するだけあって、街でもかなりの人格者ではあるのだが、流石の彼もウッツには毎度振り回されているようだ。
彼の両親とは、向かいの宿屋にいる女主人ケーナを含め、幼少の頃からの友人関係ではあるのだが、誰に似たのか両親の言うことを聞く気がないのか、それとも熱意が伝わらないのかは判断できないが、今回も随分と手を焼かされることとなる。
このままでは色々と問題が絶えないだろうと危惧している人物の一人で、ウッツを自分の宿屋で雇おうかと本気で検討しているそうだが、頑なに本人は逃げようとしているらしい。
◇エッカルト・アスマン
ニノンに唯一ある薬屋を経営する、この街唯一の薬師。
元々はアルリオン出身者ではあったが、ニノンの長閑な空気と、薬師のいないという現状を知り、幼少期から仲が良かった妻を連れて長年過ごした国を飛び出した。
性格はとても温厚で、人当たりも非常に良く面倒見もとてもいいが、興味のあることを見つけるとそればかりに集中してしまう子供のようなところがあると、妻であるヘルタは語る。それも彼の魅力のひとつだと、彼女は言葉にしている。
アルリオンに居を構える世界四台薬師のひとり、ハヴェル・メルカに師事し、知識を技術をしっかりと学び、一流の薬師となった人物。
そんな彼をもってしても、イリスの知識の深さに脱帽し、自分の年齢の半分にも満たない彼女に尊敬の眼差しを向けていた。
現在は病気も問題なく完治し、元気一杯に調合に、薬屋にと精を出す。
イリスが手に入れた、ヤロスラフ病治療薬に使った怪しげキノコである"褐色キイロタケモドキ"の毒々しい斑点の部分は、彼の保管用小瓶に今も大切に保管されている。
◇ヘルタ・アスマン(旧姓ランマース)
子供の頃からとても仲良くしていたエッカルトと、極々自然に結婚した。
アルリオンを離れたいと夫から告げられ、少々戸惑いはしたが、ニノンに着いた日にとても気に入り、今でも楽しくのんびりと二人で薬屋を経営しながら過ごす。
彼の力にもなれて、街の人達のためにもなる薬師を目指し、現在も勉強中。
そう遠くないうちに、またひとり優秀な薬師が生まれると予想しているイリスは、薬師仲間ができることを心から喜んでいる。
◇ハヴェル・メルカ
天才薬師の異名を持つアルリオン最高の薬師で、世界四大薬師と呼ばれる人物。
とてもユニークな人らしく、彼の下を卒業した薬師は彼のことを、とても面白い人という印象を今でも持っているようだ。
楽しみながら技術を学ばせる方針で、フィルベルグのレスティとは違い、毒に関しての知識はあまりないが、病気に関しては相当に知識が豊富らしい。
それでもやはり、"創薬の女神"と謳われたレスティ以上の才覚はなかったようだ。
現在でもアルリオンに店を構えつつ、弟子育成に尽力を注いでいる。
◇レスティ・リアム
フィルベルグ王国随一の薬師にして、世界四大薬師の中でも最高と言われる程の技術と知識を持ち、名のある薬師からは一度は逢いたいと思う世界最高の薬師。
彼女の優しい笑顔の奥に秘めた、儚げな悲しい色をする瞳に魅せられて"創薬の女神"と呼ばれるが、現在のフィルベルグにはそう呼ばれるような人物はもういない。
◇イルメラ・フェルザー
ノルンにある"銀の憩い亭"主人ミラベルの母、ミランダの二番目の弟子で、若かりし頃からミラベルと料理技術を互いに刺激しあって高めていた。
残念ながら彼女ほどの才覚は見出すことができなかったようで、毎日のように繰り広げられていた料理勝負は、ただの一度も勝つことはなかった。
それでもノルンからニノンへと戻る際に受けた彼女のと最後の勝負は、勝つことはできなかったが、これまで作ってきた何百、何千という料理の中でも飛び切り最高の出来となって満足できたようだ。
ニノンにある料理店で、今も美味しい料理を客に振舞っている。
◇ウッツ・グルーバー
直情型で向こう見ず、一言でいえば考えなしの"あほのこ"。
ニノンではかなりのやんちゃさんで、街の人からも知らない者はいないほど。
しかし、街の人は誰一人として彼を悪く言う者はおらず、中年や老人の多い静かな街が賑やかでいいと言葉にする者もとても多い。
まるで彼に元気を貰っているようだとニノンの住人は語るが、彼の家族からしてみればたまったものではないという印象の方が勝ってしまうらしい。
何か問題を起こす度に仁王立ちした両親に正座させられ、頭頂部にはふたつの塊を乗せているわんぱく少年だが、実はイリスよりも年上。
◇コリンナ・ノルドハイム
ウッツの祖母。風邪をこじらせ、心配した孫が走り回って、たくさんの人に迷惑をかけたことに申し訳なく思っているが、それでも孫のことを大切にしていることは変わらず、あまり強くウッツに言うことができないようだ。
診察をしたイリスに感謝の言葉を述べるも、彼女の心からの言葉に瞳を潤わせながら、女神アルウェナに感謝を捧げた。
現在は無事に風邪も治り、家族四人で楽しく暮らしている。
◇ヨルク・グルーバー
ウッツの父で、彼の作るスイカは相当美味しいらしい。
言うことを聞かない息子に対してのみ、激高するように感情を爆発させるが、本来はとても優しい人で、怒鳴り散らす姿はウッツだけに見せているようだ。
妻であるコローナとは幼馴染で、コリンナとも良く見知った間柄。
性格を良く知る彼と愛娘が結婚するということに、街の誰よりも喜んで貰えたのだが、まさか両親のどちらにも似ていない息子が街に迷惑をかけることになるとは、当時の彼らには思いも寄らなかったことだった。
◇コローナ・グルーバー
ウッツの母。子供の頃からとても気弱で穏やかなお嬢さんだったそうだが、ウッツのやんちゃっぷりに新たな一面が芽生えてしまった。
昔はとても物静かどころか、非常に大人しい子だったそうだが、現在ではその姿は見る影もなくなったようだ。
◇ケーテ・フェルステル
フォルカーの宿の向かいにある、もう一軒の宿屋を経営する女主人。
彼とは幼馴染で性格も良く知る間柄。ウッツが凄い形相で押しかけたことに取り乱し、涙目と震える声でおろおろとしながらも個人情報を守り切った女性。
その姿を眼前で目撃したように想像できるフォルカーは、その日の夜、彼女に好物をさりげなく届け、しょぼくれる彼女の酒に付き合ってあげたようだ。




