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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第八章 その大切なはじまりを
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明日の為の"第一歩"

 

 評議会が終わるとイリスはタニヤと共に、仲間達が待っている飲食街へと足を運んだ。今日あったこと、決まったことに仲間達は喜び、遅めの昼食を取っていった。

 シルヴィア達もイリスが戻ってくるのを待っていたようで、みんなで昼食を楽しく頂いた。


 遅くなる可能性を考慮して、今回はヨンナに子供達の昼食を作って貰うようにしていたので、今頃子供達は元気に走り回っている事だろう。イリス達がいない時は薬を作らないようにと伝えてあるので、そういった点でも安心していたイリスだった。

 

 シルヴィア達を孤児院に向かわせなかったのは、会議を終えたイリスの話を聞く為である。評議会で決められた内容次第では、新たに解決策を探るつもりではあったのだが、どうやらそれも杞憂に終わり、安堵のため息を漏らす仲間達だった。

 正直な所、内心は不安だったようで、その場にいられない歯痒さがあったらしい。


 土地に関しては自由にしていいと言われたイリスは、まずはお金を払ってからにしますと評議員達に伝えるも、そこまできっちりしなくていいとリクハルドに苦笑いをされてしまった。

 何よりもハーブを育てるのには時間がかかるので、評議会が終わったら直ぐに取り掛かっていいと言われたイリスだった。


 農具に関してはすぐに渡せるものなので、職人区へ先にお邪魔して受け取ったイリス達。こちらも代金に関しての請求は、金額が用意してからでいいと言われた。


 その後イリス達は孤児院へと向かっていく。

 近付くにつれ、子供達の元気な声が聞こえて来て、思わずイリス達は微笑んでしまった。


 冒険者ギルドでの話し合いをしてから三日経つが、イリス達は孤児院で過ごすのが日課となっている。流石に寝泊りは出来ないので、宿屋を使ってはいるのだが。


 イリス達は近々アルリオンを目指す事も、しっかりと子供達に説明をしていた。

 別れが来た時の為、子供達が辛くならないようにと、なるべく関わらない方がいいかもしれないと思ったイリス達だったが、それも中々に難しいようだった。


 特にイリス達女性陣には、子供達が可愛くて可愛くて仕方がないようだ。

 前もってしっかりと、近い内にお別れする事になると子供達に伝えるも、その時点で年少組には泣きながら抱き付かれてしまうイリス達だった。


 そしてあの評議会で決められた事を、イリスはタニヤと共に年少組を交えて話をしていった。


 年少組、特に最年少であるエミリーと、ロジェやトマには難しかったらしく、よく分からないといった表情をしていたが、それでもちゃんと聞こうとしてくれて嬉しくなるイリスとタニヤであった。


 ほんの少しでも、お母さんの為にお手伝いをして欲しいなとイリスがお願いをすると、年少組の子達は元気に手を上げながらそれに応えてくれて、思わず涙が出そうになるタニヤだった。


 正直な所、まだまだやるべき事はある。

 もう暫くはエルマにいることになるだろう。


 タニヤと六区の土地を確認し、孤児院の場所や増築の案を考えながら畑を作る事にしたイリスは、早速行動していき、タニヤはそのままギルドへと仕事に向かっていった。


 始めはイリス達だけで草を(むし)っていたが、直ぐに子供達がわらわらとやって来て、いつの間にか子供達も雑草を運んだり石を運んだりと、一生懸命お手伝いをしてくれた。


 生えっぱなしの雑草を抜き、邪魔になるものをどけていくと、地中から直径八十センルもある岩が、畑になる予定の場所から出て驚いたイリス達だったが、ヴァンがそれを片付けてくれた。

 両手で持ち上げ、荷車へと乗せた時の衝撃はかなりのもので、思わず子供達と一緒に、おぉーっと声を上げるイリス達女性陣だった。


 この場所で育てるのはハーブなので、(うね)を作る必要はない。

 エルマでは動物が放し飼いになっていないので、柵もまた同様に不要となる。


 とても簡易的なものではあるが、後はハーブを植えるだけとなった。

 整地された土地を見ながら、子供達は歓喜の声を上げていく。

 それなりに時間を要すると思っていた畑は、子供達がお手伝いしてくれた事もあり、たった一日で終わらせる事が出来たようだ。


 明日にでもハーブを採りに行き、ここに植えるだけで畑は大凡完成するだろう。

 後は生命力の強いリラル草とレルの花が、自然に種を落とすのを待つ。


 畑にハーブを初めて植えた時は暫く時間がかかるが、二ヶ月もすれば種を落とし、直ぐにでも芽が出るだろう。

 後は薬に適した大きさまで成長したリラル草を採取するだけとなる。

 基本的に水もいらなければ、栄養のある土もいらない。どこでも育つし、他に草が生えていなければどんどん増えていく。

 四十センルほどに成長すれば、同時に種を地面に落とすようになる不思議な草なので、基本的には後する事と言えば特に無く、採集まではのんびりと成長を待てばいい。


 そしてリラル草やレルの花は例え乾燥しても、十分に効果が得られるハーブだ。

 それ故、適正の大きさで採取してしまえば成長は止まるので、後は自由に使う事が出来る万能薬草となっている。

 ここが子供達でも作る事が出来るだろうと思った理由のひとつであり、イリスが教えられる事でもあった。


 その場合、乾燥したハーブを砕く為に薬研(やげん)も必要となってくるが、これについても評議会に報告してあるので、まずはお金を用意してからという事になるだろう。


 尤も、瞬間的に回復する魔法薬と違い、自然回復薬は目に見えぬほどのゆっくりとした速度で回復するため、冒険者にはあまり好まれない薬ではあるのだが、それでも寝る前にひと瓶飲むだけで、朝にはしっかりと効果が感じられる凄い薬だ。

 これを子供達が安定して供給出来るようになれば、例え冒険者が買わなかったとしても生計を立てる事は十分に可能となるだろう。


 保管庫をしっかりと造らないと、採取したハーブを置く場所がないという問題も抱えてはいるが、それもいずれ解消する事になるだろう。

 流石にそれを確認する前にイリス達は旅立つ事となるだろうが、その前にはエルマにしっかりと託す事が出来るはずだ。


 そんな事を思っていると、タニヤが孤児院に戻って来たようだ。

 どうやら仕事を早めに切り上げて、子供たちと食事に来たらしい。


 今度は皆で食事のお手伝いをして、皆で一緒に夕食を頂いた。

 その日もとても賑やかな食卓となり、終始笑い声が絶える事は無かった。


 食事を終えると子供達は直ぐに寝る準備に入る。

 着替えてベッドまでいくと、意識を失うようにことんと眠りに就いてしまった。

 余程楽しかったのだろう。子供達はとても幸せそうに眠っていた。

 やはり孤児院には必ず誰か大人がいなければ行けないのだと、改めて思っていたイリス達だった。


 何とも可愛らしい姿に大人達は暫くの間その様子を見つめ、しっかりと毛布をかけてあげて、イリス達はタニヤに挨拶をしたあと宿屋へと戻っていった。



 翌日イリス達は、大きめの籠を持ち、ハーブ採集の為に森へと向かっていく。

 なるべく戦闘は避けるように魔法を使いながら、街に近い場所でリラル草とレルの花の根を痛めないように丁寧に採集し、孤児院へと持ち帰ると畑に植えていった。

 年長組にも教えながらの作業となるが、基本的にこれは最初にするだけなので、後は土にハーブが馴染めば楽に採取が手に入るだろうとテア達に伝えた。


 以降は子供達のお世話をしながら、薬作りや文字の読み書きの勉強をしつつ、遊んでいくイリス達だった。

 最初は遊ぶことに戸惑いを隠せなかった年長組だったが、遊ぶことや休むこともとても大切なんだよとイリスが答えると、年長組もイリスや下の子達と遊ぶようになってくれた。


 そこには何時も気を張っていた子供たちは無く、年齢相応に遊ぶ姿を見せてくれて、イリス達は安心する事が出来た。

 年長組の中でも特に頑張り過ぎていたテアも、これだけ楽しそうに笑いながら遊んでくれるのならもう大丈夫だろうと思えたイリス達だった。



 そしてそれから七日目の昼。

 孤児院で食事を取った後、タニヤがイリスに例の件についての話を始めていった。


「フィルベルグからの荷物が届いているから、ギルドに来て貰えるかしら?」

「はい。もちろんです」


 笑顔でタニヤに答えるイリスは、そのままギルドへ仲間達と共に向かっていく。


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